11

外は雨と雷で大荒れだ。

時折強く眩しい光が目に飛び込んでくる。

髪も服もずいぶん濡れてしまった。

けれど建物の中にいるという安心感が、私の緊張を幾ばくか溶かしていく。


私は辺りを見渡した。

外の灯籠の明かりが柔らかく室内を照らしている。薄暗いものの、先程までの暗闇を思えば何倍もましだ。


入口は開け放たれているものの、ここなら寒さもしのげるだろう。

しばらくここで様子を見よう。

もう動くのは得策ではない。


私はポケットから携帯を取り出した。

電源ボタンを押すと一際明るい光が放たれる。

残念ながらここでも圏外と表示されていた。

時間はとっくに日付を越えている。


「…はぁ。」

「大丈夫か?」


ひときわ大きなため息をつくのと、背後から声が聞こえたのは同時だった。

ふわりと肌触りのよい布を肩に掛けられて、私は驚きのあまり声が出せず、ただ反射的に振り返った。


綺麗な漆黒の長い髪。

決して化粧が濃いわけでもないのに目鼻立ちがくっきりとした美人顔。睫が長く、薄暗闇でもわかる宝石のようなキラキラとした瞳が印象的な美人が、心配そうな顔でこちらを見ている。

服装は何と言ったらいいのだろう。

着物ののようなワンピースのような、はたまた装束のような、昔歴史の本で見たものに似ている気がする。

そして、顔全体に赤っぽい大きな痣のようなものがあった。


あまりの衝撃に私は言葉も発せず、ただ彼女を凝視した。動けなかったと言う方が正しいかもしれない。


綺麗で凛とした空気感が彼女から発せられていることに肌でビンビンと感じ、身が引き締まる。

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