10
息が切れるほど一気に山道を駆けのぼると、見えていた明かりは街灯ではなく神社の灯籠の明かりだった。参道に沿って本殿まで等間隔に灯っている。
こんな山奥に神社があって、灯籠に明かりまで灯っていることは奇妙に思えた。だってこんな時間、登山者だっていないのに、明かりが灯っているなんて変だ。
けれどふと思う。
誰かがいるから明かりが灯っているのではないだろうか。そう、例えば神社を管理している人とか。山の管理者とか。
本殿も淡い光が煌々と灯っていた。
「す、すみませーん。」
奥の方へ向かって呼びかけてみる。
雨の音で聞こえないのだろうか、呼びかけには誰も反応しない。
「すみま…ひゃあああっ!」
もう一度呼びかけようとするのと同時に激しい光と轟くような音が頭上から聞こえ、私は転がり込むように本殿の中へ入った。
雷がちょうど上を通っているようだ。
「ああっ、土足で上がっちゃった。やばい、やばい!」
慌てて靴を脱いで、雷と雷の合間を縫って靴を外に出す。ついでに賽銭箱に小銭をありったけ入れて、鈴紐をブンブンと振った。
ガランガランと小気味良い音が響く。
「すみませんが雨宿りさせてください!」
柏手を打ち、矢継ぎ早にお願いをする。
そして慌てて本殿の中へ身を隠した。
直後に雷がまた大きな音を立てる。
「ひ~!マジ怖い。神社があってよかったよぅ。」
ドキドキした胸を抑えながら、私はその場にへたれこんだ。
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