08

雨足はどんどん強くなるばかりで、傘を必要とした。

山に来ることなんて想定外すぎて、折り畳み傘もカッパも、防寒着すら持っていない。


どうしよう。

どこか雨宿りできる場所を。

私は暗闇を見渡すが、まわりに建物はなかった。


もしかして少し山に入れば雨宿りできそうな立派な木があるかもしれないと思い、私は携帯の明かりを山の方へ向けながら少し進む。あまり役には立たない光りだけれど、ないよりはましだ。

がむしゃらに歩き回ると何か山道らしき開けた場所があり、看板も立っているようだった。

わずかな光でうっすらとした文字を読むと、はっきりとはわからないが【登山道】と書かれているように思う。


その登山道の奥を覗き込むと、鬱蒼と木々が揺れていた。雨が葉へ落ちる音がとても綺麗な音に聞こえる。これが自然の音なのかと心が震えるようだ。


だが、山へ入るのは勇気がいった。

暗闇は怖すぎるのだ。

それでも雨足は強くなってきていた。

遠くで雷の音も聞こえてくる。


とにかく、木陰で雨をしのごう。

手前の大きな木の下に入ると、幾分か雨は和らいで少しほっとした。葉から落ちる雫くらいならどうってことはない。このままここでやり過ごせばなんとかなるかもしれない。

そう考えた瞬間、地響きのような音と一際大きな空が裂けるような音がして、私は思わず目を閉じた。


雷がさっきよりも近くなっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る