07

急に心細くなってきて私は両腕で体を抱えた。

いやいや、負けてたまるか。

身震いしながらも私は意思を強く持つ。


あんな男、別れてやる。

ううん、もう別れたも同然だ。


高志とのやり取りを思い出しながら、私は心の中で憤った。

これから先、高志と上手くやっていく自信がない。今までどうやって過ごしてきたのかさえ忘れかけている。

別れようとは言っていないけど、山に置き去りにされたのだから、こんなのもう別れたようなものだろう。


謝ったって、絶対に許してやらない。

彼女をひとり山に置き去りにするとか、本当にありえないんだから。


考えれば考えるほど悔しくなって、胸が痛いくらいに締めつけられる。高志が悪いのか、はたまた自分にも悪いところがあったのか、今の私には判断がつかないほどまったくもって冷静な気持ちにはなれなかった。

と同時に、雫が頬を伝ってしっとりと濡らしていく。それは次から次へ頬へ流れ落ち、ああ私は泣いているのかなとぼんやりと思った。悔しくて泣けるなんて、本当にもう胸が詰まりそうだ。


「ん?」


私は空を見上げた。

涙ももちろん出ていたけれど、次から次へ頬へ流れていたのは天からの雨だった。


「嘘っ?!」


ポツリ、ポツリと降りだし始め地面を濡らしていく。コンクリートが濡れる降り始めの雨の匂いがした。


山の天気は変わりやすいとはよく言ったものだ。

さっきまであんなに綺麗に星が見えていた。

雲ひとつない快晴の夜空だった。

それなのに、今ではうっすらとした雲がどんどん星空を覆い隠していく。

天気のスピードに気持ちがついていけず、私はオロオロと焦り始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る