第59話 クレイジーメテオサイクル
宇宙は広いなー、おっきいなー。
俺は特に何もない、虚無った感じの宇宙空間でグダグダと過ごしていた。
よく分からん世界から抜けて、マジで宇宙に行けた時は色々あったんだけどな。
宇宙に流れてた氷のプールに向かって、ざぶーん! と飛び込んでみたり。
デカい岩に体当たりして、ビリヤードしてみたりしたんだよなー。
『あれも楽しかったねー! 体もおっきくなったし、燃料にもなったよー!』
そうだなー、リエルはおっきいなー。
いつのまにか氷の岩塊を体に吸着させてたリエルは、さらに大きくなっていた。
宇宙で比較対象がないから微妙だが、サイズ感が増している気がする。
きらめく黒い塵を後ろに噴射しながら加速する、流星みたいな姿になってる。
音は聞こえないが、異音を発する翼も使ってバシバシ速度を上げてる感じだ!
これは早いぞ! 光速の数パーセントとか出てるんじゃないかな!?
『任せてー! 光よりも早く、あの小さな青い星に向かって飛んでくよー!!』
リエルさんはご満悦だ!
体も十分に馴染んだようだ。全身を震わせたり、変なガスを出して遊んでる。
ぐんぐん速度を上げて、ひたすら心を弾ませてるようだ。
よかったなあ。リエルがすごく楽しそうで何よりだよ。
俺は俺で、中にいる黒い連中と小粋なトークをしたりして暇を潰していた。
案外、話の分かる連中だったよ。
世界を破滅させてみようぜー! って声かけたら喜んで協力してくれたもんな。
『皆殺シダー!』って雰囲気で、リエルが早くなるお手伝いもしてくれてる。
非常食がわりに、リエルがたまにつまみ食いしてるみたいだが、些細な事だ。
基本リエル任せでボーっとしてたら、勝手に地球に近づいたから楽だったしな。
何日たったんだろう?
そのうちウノちゃんに渡した魂から連絡がくるだろうし、気にしなくていいか。
できれば、いい感じの日に突撃したいもんだ。
聖なる夜に舞い降りる感じの、幻想的な雰囲気を地球の皆様にお届けしたい。
ともあれ早めに到着できそうだし、まさに俺の計画通りと言った所だろう。
姿もラスボスっぽくなったし、地球の脅威となる演出はバッチリだ。
後は、ウノちゃんに野望を阻んでもらえれば完璧だな!
『えっ……? 阻んでもらいたかったのー?』
ん? どういう意味だ、リエル?
何で不思議そうに聞いてくるんだ?
俺の意思はハッキリと伝わっているハズだよな……?
『わかってたけど……ウノに本気で止めてもらいたかったのー?』
そりゃそうだ。だって、ラスボスだぜー?
負けるのが仕事じゃないか。
俺様最強って感じで上手いこと絶望させてから、気持ちよく倒されるべきだな。
勝ち目が無かったり、止められないラスボスなんてダメだろー。
それだとクソゲーになるじゃないか。変な事を聞いてくるリエルさんだなー?
『えー? 今も私を止める気は全然ないよねー? なに考えてるのー?』
リエルはアホだなー。
俺はウノちゃんに希望を託したんだよ。
俺は今後もリエルを止める気は一切ないし、止まる気もないぞ?
リエルは速くなりたいんだろ? それが目的だから俺は止めなくてもいいよな。
『うんうん……うん? つまり、どういうことなのー?』
つまり、俺は全速力で地球に帰ることができる。
そして、リエルは速くなって喜ぶことができる。
さらに、ウノちゃんは救世主になって、みんなに称賛される勇者さまになれる。
その上、俺の姿を見た人間の絶望感も確実に味わえるって、お得な寸法もある!
完璧な計画だろう?
『えーっと? 全員楽しくなりそうだね……? でも、ウノがどうやって……?』
俺たちの知識を手に入れたウノちゃんなら、きっと何とかしてくれるハズだ!
地球の総力を結集したら何とか出来るだろう。
現在の科学力だと止めるのは不可能に近いと思うが、人間をナメたらいけない。
多分、頭の良いヤツが凄い事をするんだよ。魔術結社とかあったし余裕だろ。
人類全員が魔術師になったり、不思議科学を発展させる展開になってるかもな。
『それは楽しそうだねー! みんながビュンビュン飛び回るんだよねー!』
ああ、すごく楽しくなりそうだ。
予想通りなら、ギリギリ限界まで押しあったりする超常バトルになるかもな!?
そうなってこそ、悪役冥利に尽きるってもんだろう。
気持ちよく戦えるように、俺たちもがんばって体を加速させていかなければな!
『うーん、なるほどー? 私が早くなる手伝いをしてくれるなら……それでいいのかな。けどー、ちゃんとそんな風になるのかなー?』
ウノちゃんなら、いろいろと上手い事まとめて、俺たちを止めてくれるって。
異世界でも上手くやってたみたいだし、アイツには責任感があるからな!
予想外の方法で止めてくれるかもしれないぞ。ワクワクしてくるなー。
どんな手段で阻んでくるんだろうなー?
『そーなんだ……ところで、何でウノに残した人格を私っぽくしてたのー?』
えー、だってアイツ、俺に説教してくるし正直ウザかったんだよ。
ウノちゃんを手伝ってやりたい気はするが、もう俺は付き合いきれねぇ。
体に魂が戻った時に、やかましくされた記憶とか残ってて欲しくないんだよな。
だがリエルな分身なら、ウノちゃんを相手にしても何とかしてくれるだろう。
なんたって、リエル様だからな!
リエルは俺にここまで付き合ってくれた、最良のパートナー様なんだ!
『当然だよー! 私は俺だからねー! 一心同体で何だってできるよー!』
そうだよなー。
リエルさんは信頼に値する存在だよ。
俺をここまで仕上げてくれたからな。素晴らしい成長を見せたもんだ。
だから、ウノちゃんにも完璧に再現したリエルを置いてきた。
知識を詰めたから、リエルっぽく振る舞う俺みたいになりそうだが大丈夫だろ。
『ウノと私が……? それはー、うーん。うん、大丈夫なのー、かなー……?』
あのリエルには、ウノちゃんを見守って良心的に味方するよう頼んだし安心だ!
もしかしたら、あれが真リエルとかになって、俺たちの行く手を阻むかもな。
ウノちゃんとリエルのコラボレーションがどうなるか、期待が膨らむぞー!
『えっと、うん! そうだね。期待しようね!?』
リエルさんも期待してくれているようだ。ビックリしているぞ。
きっと、無敵のふたりが立ち向かってくる光景を幻視してくれてるんだろう。
俺もその光景を信じている。人の持つ可能性を信じている!
俺は他人を信じてるんだ! 良いリアクションを返してくれるのを期待してる!
愛とか勇気の力で人類が面白い事をしてくれる時は、すぐそこにあるハズだ!
『あっ、ハイ! それならすぐに行こうね! 一気に飛んでいくよー!』
俺たちの戦いはこれからだ! さぁ行くぞリエル!
誰かが止めてくれるまで、誰にも止めることはできない!
もちろん俺も止める方法は知らない! ウノちゃんとリエル3号がんばれー!
そんな感じで飛んでたら、火星っぽい惑星の周回軌道を通り過ぎた気がする。
うーん、本当にもうすぐだなー。
ちょっと早すぎたかな? ハイテンションで来すぎたのかもしれない。
まさか、まだ地球では対抗策ができてないって事はないよな?
もうちょっと、ゆっくり飛んでいったほうがいいのかなー?
……ところでリエルさんは、減速の方法とか知らない? 知らないよなー。
今さら横にも移動できねーよなー。そんな事したら萎えるよなー。
じゃあ予定通り、このまま真っすぐ加速していってみるとするかー!
『あはははー! もう知ーらない! ぜーんぶ壊れちゃえー!』
リエルさんも気合い十分だ! ヤケクソみたいに加速させてるぞ!
これって人類は平気なのかな、期待外れだと嫌だなー?
悩んでたらロケット花火みたいなのが近づいて来て、パァンと弾け飛んでいた。
ゴミに当たりたくねぇなー、と思って吹っ飛ばした後に大爆発したから驚いた。
あれは何だったんだろう……? 宇宙人の残した花火とか、そんなんか……?
リエルさーん、大丈夫ー?
『問題ないよー。翼で遠くに吹き飛ばしちゃったからねー』
だよなー。何も問題はないよな。でも、なんだったんだろーなー、アレ。
……あれー? 地球の方から、ウノちゃんに渡してた魂が飛んできたぞー。
もう報告してくれるのかな。早くね? 早めにネタバレされちゃうと困るなー。
いや、まてよ。もしかして、地球にバリアを張るって対策なのだろうか……?
すごい結界とか展開されてしまうのか!? ヤバいなー! 大変だぞー!
宇宙に追放されると困るなー!
どうする俺! ピンチかもしれない! ウノちゃんの策略が冴えわたるッ!
『なにがあっても、私にお任せだよー! 絶対に負けないよー!!』
おー、頼りにしてるぞデカいリエルー。なんか知らんが張り切ってるなー。
まぁこれが人類との、果てしない戦いの始まりになるのかもしれないしな?
さてと。遊んでないで、何が起こってたのか合体して把握してみるとするか。
さぁ俺の中に戻ってこーい。我が魂の一部よー。
向こうで何が起こっていたのか教えておくれー。
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