第14話 開き直ったな

*お読みいただきありがとうございます。本日はもう1話この後投稿致しますので、よろしければそちらもお願い致します。



「ありがとうエイスケ・・・か、必ず!お金は返すから」


「はは、別に気にしなくても良いけど、気長に待ってるよ」


何とかメルトの商品を買い終えることができた頃には、既に時計の針は二時に差しかかろうとしていた。

一先ず無くてはならないものを購入し、超お急ぎ便を指定したため、早ければ今日の午後には届くという。

その分、かなりのお金が上乗せされたが、大事なものなので、そこに金を惜しむことはしない・・・けれど。


「まだまだ買えていないものもあるだろうし、商品が届いたら、次はお店でじっくりと考えると良いよ。もしかしたら午後には届くかもしれないし、そうしたら外には出歩き放題だ」


まだまだ女性にとっては欠かせないアイテムがたくさんあることだろう。

ショッピングサイトで、俺が見ても良いものなのだろうかと思った女性の生活必需品などもメルトにお願いされて買ったけれど、きっとまだまだ男の俺の前では買えないものとかもあるかもしれない。


・・・もしかしたら、結構なお金が飛んでいくのかもしれない。

内心結構な冷や汗をかいている。

ここに来て、ペットならまだ知らず、家にもう一人住むということがどれだけの出費に繋がるかをだんだんと理解し始めた。


俺は大学に入学してから二年間、コツコツと貯金はしている。

幸いにも、収入の良いバイトを先輩に紹介してもらったおかげで週に3、4回バイトに入れば、扶養から外れないギリギリの金額まで結構簡単に行けてしまう。


栞関連でしかお金を多く使うことはなかったし、最近はその栞ともどこか行ったりすることも無くなっていたため、今例えメルトのためにお金をまあまあ使っても困ったりすることは特にない。


でも、期間はどれくらいになるかわからないが、一文無しのメルトと生活する上でこれまで以上に生活費にお金がかかるだろう。


アルバイトと仕送りで生活している俺にとって、今後の生活に影響が出てくることは避けられない。

少なくともただでさえあまり顔を出せていないサークルのみならず、友人の飲みの誘いを今後は控えていかないと行けないかも・・・。


メルトを保護した時、あれほど後先考えずに行動してしまったことを反省したのに。


「あの、エイスケ?」


「・・・ん?ああ、ごめんメルト。どうしたの?」


いつの間にやら自分の世界に入ってしまっていた。

未ださっきの位置から変わらず、俺の隣で少し心配した様子でメルトはこちらを見ていた。


「あの、本当に、お金はすぐに返すわ」


もしかして、顔に出てしまっていたのだろうか。慌てて俺は笑顔を作る。


「だ、大丈夫だって。貯金はまあまああるし、生活に問題はないよ」


「いえ、ダメよ!今まで二年間もお世話してもらった挙句、人間に戻ってもまだ居候させてもらおうとしているんだもの!魔女のプライドとして、許せないわ」


今更猫として大体の恥を晒し、あまつさえ裸で俺に抱きついたことさえあったというのに、今更この子は何を言っているのだろう。

しかも、もうとっくに開き直ったのか、魔女という聞き馴染みはあっても得体の知れない単語を出される。


「だけどメルト。君は日本に何もないのだろう?・・・まさかとは思うが、体を売ったりとかは・・・」


「し、しないわよ!」


自身の体をぎゅっと抱きしめるようなポーズをして赤面するメルト。

とてもウブな反応を見せられ、逆にこちらが困ってしまった。


「私は魔女よ!さっき払ってくれた金額くらい、外に出歩けるようになったらすぐに返せるわよ!なんなら今後私の分の生活費もたーんとあなたにあげるんだから!」


鼻をふんすとしてどやっとポーズを取る金髪魔女さんを、俺は疑わしげに見つめた。


「・・・あの、犯罪とか、そういうのはやめてね」


「だから!私を一体なんだと思っているのよ!安心して。ちゃぁんと日本の法には触れないから」


プンスカと高い声で怒鳴った後、人差し指をこちらに向けてにっこりと微笑む彼女は・・・なんだか子供のように無邪気で、たら絵どころのない妖艶さを醸し出していた。


とても含みのある言葉に一抹の不安を覚えるものの、メルトの昨日と今日の行動や人間性を見るに・・・まあ、大丈夫だろうと考えることにした。

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