第11話 融合

 ダンジョンコアがパワードスーツに寄生していた。


 まさかの出来事に、信じることができなかった。


『クロス、鑑定した結果です』


 ルーヴィルのパワードスーツ:ルーヴィルのダンジョンコアが寄生したパワードスーツ。寄生した影響で、全身の素材がオリハルコンになっている。


「なんだあのパワードスーツ!?」


 ダンジョンコアが寄生しただけでも信じられないのに、まさかオリハルコン製のパワードスーツをこんな形で見ることになるなんて。


「同期完了……我の正体に驚いてるようだな、人間よ!」


 先程とは違って、パワードスーツに寄生したダンジョンコアは流暢に喋っている。


「貴様の見様見真似で人間の姿を模してみたが、なるほど、これはいいものだな」

「お前は、いったい誰だ!」

「誰だとは失礼だな。鑑定を行う時間を与えてやったというのに……まぁよい、我こそは、不出来な弟に変わり、貴様に死をもたらす、ルーヴィルのダンジョンコアなり!」


 やっぱりダンジョンコアか。

 それに、ここのダンジョンコアは二つに別れていた。

 弟が電力制御室に寄生し、そして兄はパワードスーツに寄生していた。


「この鎧はなかなかに良いものだ。アースドラゴンに使われるとは思わなかったが。だが、その足枷は今解き放たれ、これで思う存分、貴様らマナを持つ者を殺すことができる」


 尊大な態度を取っているが、奴から感じるプレッシャーが半端ない。

 プレッシャーに押され、体を動かすことができなくなった。


「我と同じ鎧を着る者よ、我の気迫に押されて動けぬのか?」


 しまった、俺の状態を見抜かれた。


「ならばここで無様に死んでいけ! エレメンタルブラスト!」


 ダンジョンコアから、エレメンタルマジックが飛んでくる。

 だが、俺の体は思うように動けない。


『エレメンタルシールド!』


 その時、エルノアが俺の代わりに魔法を発動した。


『クロス、動けますか!?』

「ああ、なんとか動ける」

『……無理しているなら、私だけで戦いますが』


 動けてはいるが、体の震えは止まっていない。

 だけど、エルノアだけに戦わせるわけにはいかない。


「なに言ってんだ。お前だけで戦わせるわけがないだろ。俺とお前なら……」

『なんとかなる。ですよね?』

「ああ! だったら、やることは一つ!」


 ダンジョンコアの攻撃が止むと、シールドを解いた。

 そして、身体の震えが止まった。


「我の攻撃を防ぐとは大したものだな、人間よ。それに震えが止まったようだな」

「こうでもしないと、お前を倒せないからな」


 あらためて、ルーヴィルのダンジョンコアに向き合う。

 強大な存在感を放っているが、俺とエルノアならなんとかなるはずだ。


「行くぞ、ダンジョンコア!」

「さぁ来い、人間よ!」


 本当の戦いが今始まった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「プラズマキャノン!」

「エレメンタルシールド! チッまた盾を貫通したか。だが、その攻撃では我が鎧を貫くことはできぬぞ!」

「クソ!」


 あれから攻撃の応酬が続いているが、状況は俺が劣勢だ。

 属性魔法を防ぐエレメンタルシールドを貫通する、無属性のプラズマ攻撃を行っているが、プラズマはオリハルコンに対してダメージを与えることはできない。


 同じオリハルコンでできた武器ではない限り、オリハルコンに傷をつけることができないのだ。

 だからダンジョンコアに対して、ヴァリアブルソードで接近戦をしようとするが、向こうの攻撃も激しさを増して近づくことができない。


「これならどうだ! ソードインパルス!」


 片手剣に変化したヴァリアブルソードから、飛ぶ斬撃を放つが、それすらオリハルコンに傷をつけることができない。


「いい攻撃だ、だが無意味だ! そう言えばお前はマシンガン魔法なるものを編み出していたな。そうだ、プラズマキャノンをマシンガンのように撃ってやろう」


 今度はお返しに、プラズマキャノンのマシンガンを撃ってくる。


「ヴァリアブルソードよ! 盾に変われ!」


 ヴァリアブルソードを盾に变化させ、攻撃を防ぐ。


「フハハハハハ! 素晴らしいな人間よ! ますます殺したくなったわ!」


 笑いながらも攻撃の激しさが増していく。


「どうすればアイツを倒せる!? どうすればいいエルノア!」

『……』

「エルノア!?」


 エルノアからの反応が無い。

 ここでおしまいか?


『可能性はまだあります』

「あるのか!?」

『あのスーツと同じことができますか?』

「それはどういうことだ!」

『あのパワードスーツ……ルーヴィルのパワードスーツは、プラズマエネルギーとマナを融合し、それを動力源にしています』

「そんな分かりきったことを! だいたいダンジョンコアが寄生して……」


 いや待て、ここで冷静になれ。


 そもそもあのパワードスーツはどこで作られた?

 あれは、元々アーテラの星で作られたものだ。

 だから動力源はプラズマエネルギーであり、この世界に存在しないエネルギーだ。


 だがダンジョンコアは、この世界で生まれたマナの塊だ。

 そのマナの塊が、パワードスーツに寄生したことでアイツが生まれた。


 本来出会うことのない、二つのエネルギーが混じり合ったことで、強大な力を得ている。


 そんなことがもし俺にできるのなら、アイツと同じ力を得るはずだ。


「だけど、パワードスーツのプラズマエネルギーは無限だろ! だから無限にスーツが可動できる! だけど俺のマナは……」

『マナリジュネのスキルがあります! それを使えばきっと、無限にマナを使うことができるはずです』

「……!」


 そうだ、マナリジュネだ。

 消費したマナを瞬時に回復するスキル。

 これがあれば、マナを消費し続けても問題がない。


「分かった、やってみる」


 ダンジョンコアの攻撃が止み、俺は距離をとった。


「ふんっ、我から逃げるつもりか? 見損なったぞ」

「いや、お前を倒すために、お前から距離をとっただけだ」

「ほう……我を倒すためにか。いいだろう、お前の力を見せてみろ」

「そうさせてもらう!」


 予想通り、ダンジョンコアは尊大な態度をとって、俺の出方を窺っている。


 俺は変身を解除した。


「ほう……それが貴様の真の姿か。どうした、その姿で我と戦うのか?」

「いやちがう。残念ながら、この姿でお前を倒すことができない。だから俺は、あんたと同じような力をこれから得るのさ」

「我と同じような? フン、ならば見えてもらおうか」


 俺は、目を閉じる。

 想像しろ、プラズマエネルギーとマナが融合するイメージを。


 すると、俺の身体はプラズマエネルギーとマナに包まれた。


「我の秘密に気づいたか」


 だが、この状態で変身しても奴を倒すことができない。

 同じ力を得ても、スーツの性能差で負けてしまう。


『私もやります』


 今度はエルノアも加勢してくれた。


 しかし、これでもまだ足りない。


 ふと、指輪に变化しているヴァリアブルソードを見た。


「お前も、俺たちの大事な仲間だよな」


 その時、あることを思いつく。


 パワードスーツとヴァリアブルソードを融合させることを。

 プラズマエネルギーとマナが融合できるのならば、パワードスーツとヴァリアブルソードも融合ができるはずだ。


 すると、ヴァリアブルソードとペンダントが強烈に光りだした。


 これだ!


「行くぞ、エルノア!」

『了解です、クロス!』


 俺は覚悟を決め、最後の変身を行う。


「お前をここで倒す! 変身!」


 銀色の光が、俺を包み込んだ。


 そして、俺は全身銀色のパワードスーツを装着した。


「やれるものなら、やってみろ!」


 対峙するのは、全身金色のパワードスーツを装着したルーヴィルのダンジョンコア。


 最終決戦が、今始まる。

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