第26話 錬金

 レオナルドダヴィンチなのに錬金って……それいいんでしょうか。

 神託石を見て最初に思ったことはそれだった。


 レオナルドダヴィンチと言えばルネサンス期に活躍をして天才で、芸術、科学、医学、どの分野にも優れていた多才な人間。

 モナリザと最後の晩餐くらいしか知らないけど、ほかにも色々な功績があったはずだ。


 そんな中、錬金とは……。


 錬金と言えばたしかにこの頃にはもう発想としてはあったようで、事実上否定されたのはフランス革命の頃だとどっかの教科書に載っていたから、まあたしかに時代的には間違っていないが。

 科学的な人間が錬金というのはなんだか抵抗感を覚える。


 まあ、それよりも能力の方だろう。


「バルデスさん。すみませんが大きな岩を持ってきていただけますか」

「? まあ、いいが」


 こういう時はあっさり動いてくれるバルデスさん。

 よほどこき使われない限りは、器量の大きい人なのかもしれない。


「ちょっと、岩なんて何に使うのよ」

「まあ、見ててください」


 ほどなくしてバルデスさんは自分と同じ大きさ程の岩を持ってきた。

 本当に大きな岩を持ってきた。


 自分で持って重さを考えてみる。

 錬金と言えば質量は重要なファクターになりうるからな。


 重さとしては多分僕2人分くらいだろう。60キロくらいか。


「すみません、一応下がっていてください」


 錬金がうまくいったとして、どういう変化をするのか分からない。

 化学反応でも起こって爆発が起きるのか、はたまた熱が発生して周りが高温になるか。

 色々なパターンが考えられるところである。


 みんなには今から錬金をしますとは言ったが、見たことがある人間はおらず、そもそも錬金術自体が存在するのかも怪しいらしい。

 もしかしたら僕が錬金術師の第一人者かもしれないな。


「じゃあ、いきますよ」


 やり方が分からないのでとりあえずスキルが発生しそうな感じに頑張ってみる。


 両手を岩の方に向けて、それからお腹に力を込めて叫ぶ。


「【錬金】!」


 すると岩がボンっと音を立てて煙に包まれる。

 どうやらスキルの発動には成功をしたみたいだ。


 どうなっているのか、周りの人たちが固唾をのんで見守る。

 アリサもちょっと心配そうだ。


「さて」


 煙が徐々に晴れてきて、包まれていたものが正体を現す。


「これは……」


 そこにあったのは俺が想像していたものの100分の1スケール程度の金色の剣。


「成功……したのか……?」


 手に取ってみる。サイズとしては全長が5センチくらいだろうか。滅茶苦茶ちっちゃい。

 手裏剣サイズだ。

 重さも明らかに最初あった岩よりも軽くなっている。


 60キロくらいあったはずなのに、今目の前にあるものは1キロもなさそうだ。


「ど、どうなったの……?」


 遠くからではその剣があることが認識できないのか、遠くから姫様が聞いてくる。

 ちなみに誰よりも距離を取っていて、空洞の端の方からちらちらと覗いてきていて見事に腰が引けている。

 そういったところはなんだかかわいかった。


「うーん、どうでしょう。成功とは言えないかもしれない、ですかね」


 出来た金の剣(ミニ)をアリサに見せてあげる。

「うわーきれーい! きゃふきゃふ!」と盛り上がっていたので錬金には成功しなかったかもしれないけどトータルで見たらプラスかな。

 やっぱ一番かわいいわ。


「姫様も、もう大丈夫ですよ」

「ほ、ほんとに?」

「本当ですって」

「う、嘘ついたら殺すから!」


 そしてバルデスさんの呼びかけによって姫様もこちらにやってくる。

 どれだけバルデスさんは信用無いんだよ。


 まあ、そんなことより、と自分のステータスを確認する。


 見ると魔力が61も減っていて残りは4しかなかった。

 もしかしたら、錬金する物体の重さに応じて魔力が減っていくのかもしれない。

 他の条件も考えられるが。


 あとついでにレベルが上がっていることにも気が付いた。


「あの、姫様」

「どうかしたの?」

「錬金をしたらレベルが上がったんですが」

「ああ」


 姫様に質問をしてみると、何か知っている風に答えてくれた。


「スキルを使うと経験値がもらえるのよ。まあ、考えれば当たり前ね。鍛冶師がわざわざレベルを上げるために魔物を狩りに行くわけないでしょ? 彼らも剣を打ったりするとレベルが上がるのよ」

「たしかに……」


 もしレベルを上げるためにも魔物を狩る必要があるのだとしたら、もう少しダンジョンが盛り上がっていてもいいはずだ。

 手ごろにレベルが上げられるという意味ではここはある意味近道かもしれないから。


 ということは、地道に錬金をしていけばそれだけでも成長することが出来るということだ。


「ただまあ……」


 手のひらにあるちっちゃな金の剣を見て、これはまだ実際に使えるレベルではないなと思う。

 さすがに変換効率が悪すぎるな。


 いやまあ、金以外に錬金してしまえばもっと使いどころもあるか……。


「とにかく、まだ試行錯誤が必要だな」


 ただ、有用なスキルであることには間違いはない。

 あとは使い方次第だ。


 まだまだ快適なダンジョンライフは遠い。




【加護 坂本龍馬】 レベル 27→27


【スキル】――【型破り】レベル 2

       【運搬】 レベル 2



【加護 レオナルドダヴィンチ】 レベル1 →2


【スキル】――【錬金】レベル1



【フィル】

【能力値】

 ・体力 102 →104

 ・力  100 →101

 ・防御 51 →52

 ・魔力 65 →69

 ・敏捷 108 →110

 ・運  85 →86

 ・賢さ 114 →118


【魔法】


 今日のメモ――どうやら加護の種類に応じてステータスの伸び方は違うみたいだ。

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