第16話 ゴブリンライダー

 ダンジョンに潜ってはや20日。

 もうすぐ1か月になりそうだ。


 当然、ダンジョンの入り口は閉ざされたまま、まだ開く気配を見せない。

 もちろん今開かれたら困るが、そろそろアリサ・ロスが激しくなってきた頃だ。


 家帰ったらアリサにいっぱい頬ずりをしよう。


 とまあそんなくだらないことは置いといて。


 ようやく拠点が拠点らしくなってきた。


 寝床がある家、魔物からとれた肉を調理する料理場キッチン、魔物の解体を行う解体場、そして主に魔石を中心に荷物を貯めておく倉庫。


 どれも石でできているのが外観を損なっているが、大小それぞれ用途に合った大きさになっている建築物が4つ。

 解体場と倉庫を作るのに10日もかかってしまったが、これでひとまず必要最低限の建物は揃った。


 どの建物にも一つ火を灯せる場所を設置しているので、ダンジョンの中でも明るさはばっちり。


「ふう、これであとはこの空洞の安全確保だな」


 ダンジョン唯一の安全地帯。それがこの空洞になる予定だ。


「まずは入り口を絞らないと」


 この空洞からは東西南北、均等に4本の分かれ道が繋がっている。

 既に自分の家から見て東と西の分かれ道は探検をして他の空洞に繋がっていることを確認したが、他の2本がどうなっているのかはこれから調査する必要もある。


 ただ、これら4本の道から魔物が拠点に侵入してい来ることがしばしばあるので、ここをドアのようなもので開閉をできるもので塞がなければならない。


 ちなみにダンジョン内はある程度の明るさを保てば魔物の発生を抑えられることが判明している。

 どおりで家の中に魔物が湧いたりしないわけだ。


 ということで、この4本の入り口をふさいで中の明るさを保てさえすれば、ここの空洞は魔物の心配をする必要が無いということ。

 ただ、完全に安心というわけにもいかないけど。万が一ということはある。


「それでも、あと少しで安眠できるようになると思うと楽だけな」


 いまだにこの空洞内にゴブリンが入ってきて、僕の睡眠を邪魔するとかいうとんでもないことをしていく輩がいるんだよなあ。

 絶対にこの世からゴブリンを根絶やしにすると、10日前には誓った。


 ともあれ、ここの拠点が完成すればアリサをここに呼べるようになる。


 貯めた魔石もあるし、一気に生活が楽になるんじゃないだろうか。


 とりあえずは、アリサが不自由しないようにもっと生活感を地上のものに近づけていかないとな。




 その日、いつもと同じようにゴブリン狩りをしていると、見慣れないものに出会った。


「なんだあれ……? フォアウルフの上にゴブリンが乗ってる……?」


 ダンジョンで初めて見たフォアウルフは、ゴブリンの下にいた。

 

 魔物の上に魔物が乗っているという初めての光景に困惑する。


 なんだろう、ゴブリンライダーみたいなやつかな? その割には上に乗っているゴブリンはいつもと同じようなやつだけど。


 と、そこで上に乗っているゴブリンが俺の存在に気が付いた。


「ウガウガ」

「ワウワウ」


 そして、奴らにしか分からないようなコミュニケーションを交わしたのち、フォアウルフも僕のことを視界に真ん中に捉える。


 それからこちらに向かって突っ込んでくる。


 速さは当然、フォアウルフの足の速さということでゴブリンより速い。

 ただ、僕にとっては楽々とかわせるようなスピードだったけど。


「よっと」


 何の感慨もなく、僕は上にいるゴブリンに一撃をかます。


 するとゴブリンは壁まで吹き飛んで、体を岩壁に打ち付けて気絶する。


 それから、残っているフォアウルフをあっさり倒して試合終了。


「別に、上に乗っているからと言って大したこともないんだな……」


 もしかしたら普通の個体よりも強いのかもしれなかったが、僕もすでにだいぶ強くなってしまっているせいかその差には気が付かなかった。

 あと、村では少し苦戦しながら倒していたフォアウルフをあっさり倒せたことは、成長の証のような気がして嬉しかった。


「ようやくフォアウルフに会えたことだし、今日からふかふかの床で寝れるぞ」


 ようやく石ベッドからの卒業。

 ありがたすぎる。


 ゴブリンとフォアウルフの2つの死体ををずるずると引きずって、拠点に戻った。




 ようやく手に入れたフォアウルフの毛皮に満足をして、続いてゴブリンの解体をしていた時。


「お、なんだこれ」


 魔石の色が他のものと違うことに気が付いた。


 普通の魔石は青紫の、アメジストより少し青みがかっているような色だったが、このゴブリンから出てきたものは違った。


 オレンジ色、黄色、そしてほのかに草の色が混じっているような、明るい色で他のものとは対照的だった。


 手に取ってみると、ほんのりと温かみを感じる。


 先ほどとれたばかりのフォアウルフの魔石と2つ並べてみると、両者の違いがはっきりと分かる。


「種類が違うのか? それとも、魔力の量とか……?」


 例えば魔力には色々な種類があって、この魔力なら他の魔法が使えるとか。

 通常の魔石は火と水の魔法しか使えないが、この魔石なら自然の魔法や風の魔法が使えるみたいな。


 それとも、他の魔石よりも魔力の保有量が違うとか。

 たしか、強い魔物ほど魔力の量が多いとダンドが言っていたような気がする。


 どちらにしても、この魔石が他のものより貴重なことだけは分かる。


 丁寧に保管して、何か分かったらその時に使えるようにしておこう。


 もしかしたらダンジョン攻略の手掛かりになるかもしれないからね。


 最後にステータスの確認。


【加護 坂本龍馬】 レベル 16→20


【スキル】――【型破り】レベル 1 

       【運搬】 レベル 1 →2


【フィル】

【能力値】

 ・体力 61 →70

 ・力  68 →78

 ・防御 27 →31

 ・魔力 22 →26

 ・敏捷 59 →68

 ・運  47 →56

 ・賢さ 47 →60


【魔法】


 今日のメモ――もうこの能力値って5階のモンスターくらいなら倒せるんじゃないかと思い始めてきた今日この頃。

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