新たな一歩の行進曲(2)
観劇当日。流風は無事に夏休みの宿題を終えることができた。
「るーはーくーん!もう行くよ~」
「はーい」
星歌が車を出してくれた。彼女の運転で劇場まで向かう。車中では今の学校楽しい?などという他愛もない話をしていた。口では楽しいと答えていた彼だが本心は違った。
(話しかけてもらってもうまく話せないから結局ひとりぼっち…なんて口が滑っても言えないな…。心配はかけられないからね)
話を変えようとしたのか、流風は今回観劇するものについて聞いた。
「ところで、この劇出る人たちってみんなすごい人なの?芸能人とか詳しくなくて…」
「えー、調べてないのー?」
「調べなかった…」
「しょうがないな~」
口ではそんな風に言っているが、待ってましたというような顔で出演するキャストについて話してくれた。
「ステレコ所属タレントがほとんど出てるってこの前話したの覚えてる?」
「覚えてるよ」
「ステレコっていうのはタレントがあまりいない小さい事務所なんだ。一人一人が有名なだけあって、小さいながらも大きな仕事ができるんだ」
「有名な人ばかりなんだ」
「そうだよ~。『Histoire』と『幻想世界』っていうユニットがあって…あと数人はユニットに属さないで個人で活動かな」
「へー…」
「お?少し興味出てきたかな??」
「そりゃね。今日見る人たちのことだから」
流風はスマホでStella Recordのホームページを開いている。トップページには二人が観るタイトルビジュアルがでかでかと載っている。スクロールするとお王子様のような格好をした二人組が現れた。
「あ、この人たち姉さんの好きな人たちだよね。えっと…確か海鈴さんと輝月さん…だっけ?」
運転中の星歌はそれを見ることは出来ないが、何となくわかったのか答えた。
「そうそう。この二人がHistoireだよ」
「王子様見たいでカッコいい……」
「でしょー!同性とは思えないの」
「異性の僕も惚れそう…」
「お?ファンになっちゃう??」
「かもね~…二人組がHistoireということはこっちの六人組が幻想世界?」
下にスクロールすると、スチームパンクを身に纏った六人組が現れた。
「正解!幻想世界の音楽は物語を読んでいるような錯覚になるんだよ。心が動かされるような…」
「気になる…」
「聴く?流そうか?」
「え、あるの?!」
「もちろん」
「聴きたい…けど、今はステレコの話聞きたい気もする…」
「なら帰りに流そっか」
流風はさらにスクロールをする。出てきたのはビジュアルではなく、数名のタレントの名前だった。「茨原紡」「咲間凛桜」…と書いてある。そこにある人の名前は載っていない
「あれ?」
「名前の部分タッチするとその人の姿見られるよ」
「そうじゃなくて…」
「ん?どうしたの??」
横目で流風のことを見ると、少し不思議そうな顔をしていた。
「舞がいない…?」
「舞…ああ、お友達の?確かまだ正式に所属してなかったような…今回の舞台の一般オーディションで決まったって聞いたよ」
「そう、なんだ…」
明らかに落ち込んでいた。
「こ、この舞台終わったら正式に所属になるんじゃないかな?!」
「そうなのかな…ならいいな~。テレビとかで活躍する舞が見たい」
「きっとそうなるよ!…さ、着いたよ。会場の『ステラリウム劇場』…の駐車場に」
星歌は言った。話をしていたらあっという間に着いた。二人は車から降り、劇場入り口まで歩く。着いた時間が丁度よかったのか、開場していた。チケットを係の人に見せ座席に向かう。座席は舞台全体が見渡せるいい席だった。席につき、開演を待つ。
10分、5分とだんだん開演の時間が迫ってきた。
そして、ヴーという音が鳴る。
その瞬間、舞台の幕が上がった。
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