27-4:ひとときの日常 その4

○の月、✕の日 晴れ


 今日から新しく家族が増えた。

 名前はウルフ。

 とても大きな犬だ。


 クレアを山から連れてきてくれて

 危険なところも助けてくれた。


 とても利口な犬だ。


 最初は大きくて鋭い顔つきに不安を感じたが、

 とても人懐っこい犬だ。


 兄弟のいない娘のよいパートナーに

 なってくれるかもしれない。



□の月、△の日 晴れ


 娘はとてもウルフに懐いている。


 どこに行くにも一緒だ。


 ウルフの方も娘によく懐いているようだ。


 娘のことをよく見てくれている。


 それにしてもウルフは本当に賢い。


 まるでこちらの言葉が解るような素振りを見せる。


 犬ってこんなものなのかしら?



✕の月、○の日 晴れ


 娘ももう学校に入学だ。


 でもウルフと離れたくないと言って

 駄々をこねている。


 学校に相談してみると勉学に支障をきたさない、

 おとなしい犬なら連れていってもいいとのことだ。


 学校の勧めもあり、

 明日はウルフも学校に一緒に登校する。


 でもこんなに大きな犬を連れていっても

 大丈夫なのだろうか?


 とにかく明日はウルフの背中に乗っての登校は

 やめるよう言っておかないと。



✕の月、□の日 曇り


 最近、娘のことで悩んでいる。


 それはウルフを溺愛し過ぎていることだ。


 私も犬を飼うのはウルフが初めてなので

 よく知っている訳ではないないが、

 あれは過剰であると思う。


 どこに行くにも、何をするにも一緒だ。

 もう14になるのに。


 大抵は微笑ましく見ていられたが、

 最近はたまに娘の目が微笑ましく思えないことになっている。


 マリアという貴族の娘さんの友達が

 出来たそうなので

 その影響で少しは緩和して欲しいところだ。



△の月、△の日 曇り


 今日は一つ悩みが増えた。


 もう学生期間も半ばを越えた年頃の娘のことだ。


 朝、起こしに部屋に入ると娘が服を着ずに

 ウルフを抱いて眠っていた。


 あまりの衝撃にしばらく茫然とした。


 娘は目を覚ますと当たり前のように

 朝の挨拶をした。


 話を聞くとだいぶ前から

 繰り返し行われていたらしい。


 全く気付かなかった。


 聞くのは恐かったが確認したところ、

 『コト』には至っていないようだ。


 相手は犬なのだ。

 そんなこと当然ないと思いたいのだが……。


 しかしこのままでは間違いが起こらないとも

 限らない。


 なにせこの娘だ。


 念のため、そういう感情がないかを確認したが、

 本人は否定した。


 しかし反応が若干怪しい。


 早くなんとかしないと。



○の月、○の日 雨


 まただ。


 クレアがまた裸になってウルフと寝ていた。


 それに最近はウルフに対する感情を、

 全く隠す素振りも見えない。


 本当に過ちが起きるかもしれない。


 それなのにあの子は……。


 何度も注意をしているのに、

 繰り返し何度も、何度も、何度も何度もなんどもなんどもなんどもなんどもーー


以上、ソフィアの日記より抜粋。



 暇だったのでソフィアの部屋に入り

 つい読んでしまった。


「……うん! 見なかったことにしよう!」


 もうすぐクレアとあの人が帰ってくる。


 これからはソフィアにちょっとだけ

 優しく接して上げようと心に誓った。

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