第20話 証拠

「じゃあここで聞いてもらうか」


先生は車を止めると

後部座席の鞄からお弁当箱くらい?の黒いものを出してきた。


雑音がただ聞こえてるだけ。

さらに音量を上げる先生。


血の気がひいた…


あの日の会話


先生は私に参考書をくれた会話が

遠くで聞こえていた。


その先は聞きたくない

「やめて…」

「聞きたくない…」


止めてくれない先生

何か言い合ってるような声と雑音


耳を塞いでも涙がまた勝手に出てくる

「やめて…本当に」

「なんでこんなこと…」


悲しくて悔しかった。



「国立行けたら親孝行だよ。」

「勉強がんばらないとな」


何がいいたいのかよくわからなかった。

こんなもの聞かせてるのに。


泣いてる私を慰めるわけでもなく

また車を走らせる先生。



「〇〇駅まで送るよ」



「あと、りょうこにプレゼントがあるから、

あとで渡すね」



プレゼント?

この人絶対どうかしてる

結婚してるのに、生徒にプレゼントなんて

普通じゃない。



「いらないです。」



「そうなんだ。」

「じゃあさっきのあれはどうなってもいいんだ」

急に怖い口調になるN先生



「…」

どうしたらいいかわからなかった。



駅に着くとポケベルを渡された。

「これ。連絡したらすぐ返事してね」



ポケベルを持つことをなかなか許してくれなくて、密かに憧れだった。

けどこんな形で欲しくなかった。



すぐ返事なんてできるわけない。

もうどうでもよくなった私

「私バイト始めたので、すぐ返事はできないです。」



「そうなんだ。」

「まあいいや」

「ちゃんと言うこと聞けたら、あの音源は消してあげるよ」


頭をポンポンってしてくるN先生。


これって脅されてるんだ。

私の立場が弱いんだ。 

急に気がついて怖くなった。


「わかりました…」


私の絶望が始まった





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