第17話 K先生と

先生もいつもと違う感じがした。

前よりちょっと近いような、暖かいような。


「まだ少し時間かかるから、ゆっくりしてていいよ」


そう言い残すと体育館に戻っていってしまった。

ゆっくりすると言われてもやることなんてないし…。

そんなことを考えてたらうとうとと…


「〇〇、そろそろ帰るよ」

私の横の椅子に置いてあるジャンパーを

取ろうとする先生。


私も気がつき手渡さなきゃと伸ばした手が

微かにぶつかった瞬間目が合った。


ううん。目が合ったというより

見つめ合ったの方が正しいかな。


気のせいじゃない。

先生も慌てた様子で目を逸らした。



本当はこのまま先生に抱きしめて欲しかった。

すべてをリセットできる気がした。

でもそんなこと言えるわけない。



「先生、高校で…」

学校の先生に犯された。なんて話せるわけなかった。

私にも非があったのかもしれない。

そんな風にホイホイついてくような女なんだって思われる。



「高校?」

「楽しい?」

そんなこと言えるわけないじゃん。 

嫌われちゃう。

「うん。高校は勉強難しいなって」

本当のことは話せなかった。



「わからないことあったら聞きにおいで」

「まだ高1くらいならわかると思うよ」

在校中はあんまり笑わなかった先生が笑っていた。



「うん。じゃあ毎日来ちゃうかも。」



「毎日は難しいなぁ」



「そんなことしたら先生に嫌われちゃう(笑)




「そんなことはないよ。」

「帰ろう」


そんなことはない!?

そんなこと言われたことないし

さらっと言うこと!?

嬉しすぎて舞い上がってしまった。



帰り道

狭い道路で歩行者側に私がなるように促してくれる先生。


高校の話、先生のクラスの話。

あっという間に駅についてしまった。


「ありがとうございました。

また遊びに来てもいいですか?」



「うん。いつでもいいよ。」

  


「じゃあ、帰ります」

先生に手を振ると微笑み返してくれた。


「気をつけて帰りなよ」


「はいっ」


早足で階段を駆け上って振り向くと

K先生は私に手を振った。














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る