第36話 『箱の中身』





 2人はアキラの後ろに続くように『目的地』へと向かった。



 そこはとある石像がある場所だった。



 「兄さん本当にここなの?」

 「たぶん…なんだか歩いてたら自信なくなってきちゃった」

 「もう!あんなに意味深に語ったんだからちゃんと説明してもらうわよ?」

 「わかった。じゃあまずなんでここに向かったか説明するよ」


 アキラは2人に向き合い閃いた考えを語った。


 

 「まず最初に配られたこの絵…どう思った?」

 「そんなのアキラ君とミウちゃんと同じよ…洞窟に宝があるって示してる絵でしょ?」

 「そう…俺も最初はそう思った。だけどただ単に洞窟の中に財宝があるって事が言いたいなら最初から洞窟の絵と財宝を書けば良いだけと思わないか?」

 「まぁたしかにそうだけどさ…それじゃつまらないじゃない」

 「その通り」


 2人とも顔が???になっている。

 

 「えっとじゃあ兄さんはその絵に他の意味があるんじゃないかって思ったの?」

 「Oh…YES!ミウ!その通り!」

 「ちょっと私と反応違いすぎじゃない?」


 眼の光が消えていくヒカリ…

 

 「ゴホンッ…まぁつまりだ!この絵は洞窟に財宝がある以外にも意味があると思ったわけだ。そして大事なのはこの蛇と象の絵」

 「それが何か関係あるの?」

 「大アリのアリ」

 「けど蛇と象の石像なんてなかったよね…どうして「ここ」なの?」

 「そうよ!この絵を見て「ここ」にたどり着く意味がわからないわ」


 それはなふっふーんと伸びに伸びた鼻を高らかと上げながらアキラは言った。


 「この絵はシャレだったんだ!」

 「「シャレ??」」

 「そ、ダジャレ」

 「意味分かんないし!」

 「まぁまぁ説明してやるから待て待て」


 そう言ってアキラは絵の書いてある古びた紙を取り出し二人に見せた。


 「蛇と像が財宝を取った誰かに向けて手を伸ばして止めようとしてる仕草が書かれているよな?」

 「えぇ…」

 「うん…」

 「それで絵をよく見ると象しか手を伸ばせないわけだ」

 「そうですよね…だって蛇には手も足も…!」

 「そういう事だミウ」


 ミウがわかったようにハッとした顔をした。


 「ちょっとちょっと!私だけまだわからないんだけど!」

 「いいか?蛇は手も足も「ない」んだ…つまり手も足も出ない蛇と象がいるわけだ」

 

 「…だから「ここ」なの?」

 

 もう一度3人は石像の方を見る


 「そう。手も足も埋まってて顔しか出てないこの『手も足もでないモアイ像』こそ、盗まれた財宝の持ち主…だと俺は思ったんだ」

 「この絵が伝えたかった本当の意味って…」

 「洞窟に財宝がある事じゃなくて本当の持ち主が誰なのかを示した絵…?」


 「そう。そして最後の宝箱にあったこの「選択せよ」の意味…持ち主がわかれば、後はわかるだろ?そう…」




 「「「持ち主に返すかどうか」」」


 3人共同時に意見が揃う

 

 「…なんか全て繋がったわね」

 「兄さんすごい///」

 「もっともっと褒めてもいいんだよ?」


 ニヘラと笑うアキラの腕を少しつねるヒカリ


 「イテテテテ!」

 「鼻の下伸ばさない…(ジトー)」

 「うっ…はい」


 ゴホンっと大きな咳払いをし気合を入れ直すアキラ。


 「つまり!このティアラを持ち主に「返す」か「返さない」か選べるって事。このままティアラを持ち帰るもよし!この持ち主であるモアイ像にティアラを返してどうなるか試すもよしだ!…どうする?」


 アキラの問いかけに2人の意見はもう決まっていた


 「もちろん返すに決まってるでしょ!」 

 「私もちゃんと返したいです!このティアラは元々あの人の物だったんだから」

 「2人ならそう言ってくれると思ったよ!それじゃさっそく…」


 ミウがアキラにティアラを手渡す


 『手も足もでないモアイ像』の頭の上を確認する。するとそこには良く見なければわからない程の不自然な凹みがあり、ティアラの形にそって凹んでいた。


 「ここに置けって事だよね」

 「あぁ…それじゃ置くぞ…」

 「はい…」


 そろぉ〜りティアラを凹みに置くアキラ。その凹みに沿ってティアラが置かれた瞬間「カチッ」と音がしてモアイ像の眼が光り始めた…


 「おお?光ったぞ?」

 「え?え?え?」

 「なんか怖いです」


 カタカタと震え始めたモアイ像の眼から出た光が徐々に一つに集約し始め、二つの光が交わった先に立体映像が映し出された。


 そこに映し出されたのは綺麗な白いドレスを纏った金髪の女性…その映像に見とれていたら急にその女性が話し始めた。


 『私のティアラを取り返して下さり、本当にありがとうございます」

  

 「な、なんかしゃべったぞ?それにすごいなこの映像技術…映画の中でしか見たこと無い」

 「本当ね…」

 「すごい…それに綺麗な女性…」


 そんな各々感想を口にしていたらホログラムであろう女性が口を開いた。


 『この様な形でお礼を申し上げる形になってしまい申し訳ございません。ですがこれを見ているという事は私はもうこの世にいません。それでも尚、私が描いた絵の意味を考え、ティアラを取り返してくれた事、心より感謝を申し上げます。」


 ペコリとお辞儀をする女性


 『私は「ディスティニア国」女王のフェリスと申します。盗賊に女王の証であるティアラを取られ、必死に探したのですが、もう私達の手の届かない場所へと行ってしまったみたいなのです。ですからこうしていつか…いつか私のティアラを取り戻してくれる方達に向けて感謝の意を唱えたいと思います。 女王の証であるティアラを奪われてらというもの、婚約相手である他国の王子から別れを告げられ、意気消沈していた私は流行病に倒れてしまい残る寿命は後少しとなってしまいました。いつ死んでもおかしくない私はやはり家宝であるティアラの行方が気になり死んでも死にきれません。ですので私が死んだ後でもあなた方の様に絵の謎を解き、私に返してくれる方がいるという希望を込めてこの装置を残そうと思ったのです。…本当に…本当に私の大事なティアラをありがとう。これでようやく天国へと旅立てるような気持ちです…本当にありがとうございます。」


 ポタポタと涙を流しながら深々とお辞儀をする女王フェリス。顔を上げて涙で濡れた頬を拭い笑顔でこちらに話しかける


 「私の元へ返してくれた感謝の意を込め御礼の品をご用意しました。どうぞ…受け取ってください」


 そう言うとモアイ像の口が開き中に豪華で小さな箱が置かれていた。


 「受け取れって事かな…?」

 


 恐る恐る近寄りお礼の品を受け取ったアキラ


 手のひらくらいの箱はシルバーと装飾品でキラキラと輝いて豪華だった。


 『これで私の思い残すことは何もございません…これで…ようやく…安心して眠りにつくことが出来ます…」


 笑みを浮かべながら涙を流すフェリス…


 ザザッ…ザザッ…と映像にノイズが走る。もうじき映像が途切れる…



 『あ………が…とう……」


 最後にそう言ってモアイ像から出た光が消えた。最後に笑ったフェリスの顔がとても嬉しそうでなんだかこっちも嬉しくなってきた。


 「これで良かった…よね」


 そう言ってアキラは2人の方を振り向くと2人とも


 「うぅ…」

 「グスン…」

 「なんで泣いてるの2人とも…」


 ハンカチで目頭を抑えながら涙を流す2人


 「泣くに決まってるでしょ!!フェリスぅぅう!!良かったね!良かったね!!うぅ…」


 「フェリスさん…辛い境遇で…それなのに…最後に笑って…グスン…グスン…」


 「…」


 (こういう時どうすれば良いかわからない…これが恋愛経験の差なのか…??モテる男ならこういう時なんて声をかければ良いんだ…だれかモテる人教えてくれ…)


 そんな事を思っていたらふと最後に見たフェリスの笑顔を思い出した。


 「最後…笑ってたな…ちゃんと返せて良かった…」

 「そうね…そうよね!喜んでくれたんだから私達も喜ばなきゃよね」

 「はいグス…返せて良かった…」




 

 最後に浮かべたフェリスの笑顔が脳裏から離れないまま俺たちは集合場所へと戻っていった…



 集合場所へ戻ると最初に説明してくれたいかにも探検家という格好をした人が腕を組みながら待っていた。


 「戻ったか!!!ガッハッハ!!!君たちが最後の一組だ!!ところで財宝は見つかったか!?」


 「は、はい!ちゃんと見つけることができました」


 「そうかそうか!!財宝は見つけた奴の物だからな!怪我なく終われて良かった良かった!!」


 ガッハッハと豪快に笑う探検家。アキラの背中をバシバシ叩く


 「い、痛い痛い…」


 ふぅと笑い終わった探検家が真面目な顔をした


 「さて!このアトラクション始まって以来初めて真のゴールをした君たちにご褒美だ!受け取れ!」


 「「「えっ?」」」


 今聞き捨てならない事を言ったような!?


 「なんだ?君たちが本当のゴールに辿り着いた初めての探検家だと言ったんだ」


 「そうなの!?すごいじゃんアキラ君!私達1番だよ?」

 「すごい!さすが兄さん」

 「お?その様子からしたらあんちゃんが謎を解いたみたいだな!よくやった!探検家の素質があるぞ?本気で俺と2人で未知の世界を探検しないか?」


 最後言ってる意味良くわからなかったけど!?こんな暑苦しいおっさんと一緒にいたら1時間も持たない…


 「謎を解けたのはまぐれです…あと最後のは丁重に遠慮させていただきますね」

 「ちぇっ!まぁ冗談はさておきほれ3人とも受け取れ!」


 受け取ったのは帽子とムチが描かれたゴールドのカードだった。


 「記念品だ!シリアルナンバー書いてあるからちゃんと何番目にゴールしたかわかる」


 「本当だ私2って書いてある!」

 「私は3です…」

 「ってことは…俺は1か」


 「クリアおめでとう!それじゃ他のアトラクションも楽しんでくれよ!」


 ガッハッハと笑いながら次の人達の相手をしに行った探検家…



 「なんか怖かったけど楽しかったです…」

 「そうね!途中本気で探検家だって思っちゃったもの!今思えば恥ずかしいわね」

 「あー私もです笑本気で怖くて怖くて早く家に帰りたいって思っちゃいました」

 「本当楽しい!次行きましょ次!」


 そう言ってミウと俺の手をひっぱりながら進もうとしたらどこからともなく



 グゥ~~~~~



 「…//////」

 「ヒカリ?」

 「そこは空気読んで食事にしようって言ってくれないかしら?」


 恥ずかしそうに俯きながら腹を鳴らした犯人は言った。


 「じ、じゃあ時間も時間だしそろそろ昼飯にするか!次どこいくかはそこで考えよう!」

 そして昼食を取るためにおいしそうなお店を調べ、「近未来系イタリアン」という名前の建物が超かっこいいイタリアンのお店に入り昼食を食べた。見た目は近未来を意識した皿と盛り付け、味の方は抜かり無く力を入れておりどれも高い値段ではないのにおいしかった。


 シルバーで作られた皿の周りに小さい皿に見立てたカラフルなモナカをグルッと一周貼り付けてそこにソースと具材を盛り付けてあって食べる際、それを「パスタに投げつけて食べてください」と顔の2倍くらいでかいサングラスかけたウェイトレスに言われた時は水拭きだすかと思った。


 話し合った結果次は「ファンタスティック」エリアへ向かう事となった。少し疲れたので乗り物系の多いこのエリアで少し休みながら幻想的な景色を見ようと皆の意見が一致した。


 そして俺が忘れていたことをミウが言ってくれた。


 「そういえば兄さん。箱の中身はなんだったの?」

 「あ…」

 「一人で勝手に見たんじゃないでしょうね?」

 「すっかり仕舞って忘れてた…」

 「アキラ君しっかりしてるんだか抜けてるんだか時々わからなくなるわ(クスクス)」

 「そうですね(クスクス)」


 ゴソゴソとバッグからフェリスから貰った箱を取り出す


 「それじゃ開けてみるぞ?」

 「結構豪華な箱だから本当に価値のあるものだったり?」

 「アクセサリーとか限定グッズとかそういうものですかね…?」


 パカッと箱を開けてみる


 するとまずは手紙が中に入っていた。それを取り出し読み上げるアキラ


 「ふむ。なになに?えー」


 『私は付ける事叶いませんでしたが想い人へどうぞ…女王フェリス』


 「だってさなんだろうね?」


 ようやく箱の中身を見る3人。


 「「「…」」」


 中にはティアラの形をした指輪が一つだけ入っていた…



 



 「…」 

 「…」



 「なにこれ」





 (なにこれなにこれなにこれなにこれ!?!?!?これ本当にアトラクションの報酬なの?結構高そうだよ!?!?え?何これ!?!?!?なんでこんな貰って困るような物よこすの?なんなの?嫌がらせなの!?なんかいらないんだけど!?ちょっとミウ!!何その眼は?…なんでじっとこっち見るわけ??好きなの?兄ちゃんの事好きなの?まさか両思い・・・っておいいい!!ヒカリなんだその死んだ魚の眼は!?ヒカリの眼にヒカリがないんだけど…ってそんな事考えてる場合じゃないって………なんでジッとこっち見るの?なんで瞬きしないの?なんでそんな目の光がスッって消えてるの!?あ…2人の眼が合った…なんでそんな睨み合ってるの2人で?なんなの?なんなの?……あれ?こっち向いた…なんで怒った顔してこっち見るの!?2人とも何?今の一瞬で何があったの?教えて!言葉にしなきゃわからないって!睨まれても伝わらないって!!!!)

 





 ダラダラと汗が出てきたアキラはプルプル小刻みに震える手で…箱をそっと閉じた







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