第35話 『目的地』
2人が服の袖を左右ちょこっと掴みながら歩く。
本物の草木かと思って触ってみると本物そっくりな偽物でどこまで本格的な遊園地?なんだよと思いつつ探索しているとふと目に止まるものがあった。
「なんだろうこれ!?」
「岩かと思いましたけど…彫刻?」
「大昔に作られたねこ…?の石像みたいだな…」
草木に囲まれた獣道を歩いていると岩かと思ったら何やら形作られている石があった。
「すっごい凝ってるね…ちゃんと見たら猫に見えなくもないかも!」
「何か意味があるのでしょうか…」
「んーわからないけどとりあえず何かのヒントになるかもしれないから覚えておこう」
「わかった!とりあえず散策して洞窟を目指すのが先決よね??」
「あぁ。やっぱり絵を見る限り財宝は洞窟の中に隠されている様に思えるしな」
猫の石像を見つけてからしばらく歩くとまた大きな岩があった。
「今度はなんでしょうか…?」
「これは…」
後ろからだとわからなかったので回り込んで確認してみるとそれは「ハシビロコウ」という鳥だった。
「ハシビロコウじゃない!?動物園でめっちゃ人気のやつ!」
「たしかにそうだ!動かない鳥で可愛いんだよなぁ〜」
「でもどうしてそんな石像が…」
「う〜ん考えてもわからないわね…」
「一旦この石像の話しは置いておこう。なんとなく雰囲気作りに置いているのかもしれないしね…」
「そうですね…」
「わかったわ」
その後も歩き続けると「牛」「鶏の卵」「民族仮面」「謎のポーズをした男」「衣服を纏わぬ裸体の女」「身体が埋まったモアイ」など色々古びた石像が現れて…ついに…
「「「あったーー!!!」」」
突如ツルが生い茂る崖の先に洞窟らしき空洞を発見したのだ。
「けど中すごく暗くない?大丈夫かしら…」
「兄さん…」
ギュッとミウが腕を握ってくる…
や、やめて!また記憶が吹っ飛んじゃうからこれ以上俺に刺激を与えないで!!!
そうとは知らず入り口周りを探索するヒカリ…
「あ!見てみて!こんなのあったよ!ジャッジャーン」
ドヤッ!っと顔をしたヒカリの手には松明の形をしたライトがあり、スイッチを入れると炎の部分が明るく光り、洞窟を照らすには充分すぎる明かりが灯った。
「これで安心ね…ってミウちゃん!抜け駆けずるい!!!」
「あっ!!い、いえこれは…その…」
パッと腕を離すミウ。ミウの手の温もりがなくなり寂しく感じるアキラ。
刺激がないならないで兄ちゃん悲しいぞ!もうミウの手の感触がないとお兄ちゃん動けない!!ミウ!!!
そんな事を心じゃ思っているのに実際言葉に出そうとするとなんとも情けない声だけがでた。
「あ…ぁ…」
「ちゃんと約束は守るよーにミウちゃん!」
「はい…」
少ししょんぼりするミウ。その可愛く俯く姿…一生守らせていただきます!!!!!!!!!と心の中で謎の宣誓をするアキラだが右腕にまたしてもやわらかいものがムニュンと触れる。
「ヘッヘー!抜け駆けしたバツとして少しだけ解禁させてもらうね!」
「ず、ずるいですヒカリさん!」
「抜け駆けしたミウちゃんが悪いんだよー!これは正当な報酬だよー」
「うぅ…」
何も言えず、ヒカリがアキラと腕を組む姿を見つめるミウ
(どどどどうしてこんな事になるんだ…ヒカリも一体どうしたんだ???なんでなんでこんなにむ、胸を押し付けてくるんだよ嫌だろヒカリも!ミウもさっきからやけにボディータッチ多いし…心臓が持たないよ全く…)
「冗談だよミウちゃん!ははは」
笑いながらアキラの腕を離すヒカリ。松明を俺へと渡してさっきまでと同じ様に服の袖を掴む…
「じゃアキラ君!先頭はよろしくね」
「お、おう!それじゃ暗いから2人とも足元に気をつけながら先へ進もう」
「はい…ギュッ」
ミウも定位置に着いたようで松明の明かりを頼りに先へ進む。
それから5つに分岐した分かれ道やコウモリが襲ってきたり(演出)、ガイコツ(偽物)がいくつもあったり要所要所でリアリティー溢れる演出が満載な洞窟で、その都度ミウとヒカリがキャーっと叫び俺に抱きついてくる…意識が飛びそうになりながらここで俺が倒れたら誰が2人を守るんだとふんばりなんとか目的地であろう少し古びているが豪華な扉の前へと差し掛かった…
「たぶんここが目的地だろう…」
「ハァハァ…もう終わり?怖いのない?」
「探検はもう嫌です…」
「大丈夫だ。この扉を開けたら財宝が…」
扉を開けようと手を伸ばそうとしたら
「ちょっと待って…」
「え?どうしたんだヒカリ?」
ここまで来てどうしたと言うのだ?
「もしかしたら罠があるかもしれない…だから2人は少し下がってて…」
「ならなおさら俺が開けるべきだろ!2人が下がっててくれ」
「いいの…私ここまで何一つ役に立ててないから最後くらい…命を賭けさせて欲しいの!」
「ヒカリさん…」
「ヒカリ…」
ここまでリアリティー溢れる演出を超えて辿り着いたため、もう3人は本物の探検に出かけた気分になっており、いつの間にか皆の意識は命をかけて探検している本物の冒険家と化していた。
「そこまで言うならヒカリ…頼む!」
「まかせて!」
恐る恐る扉を開ける。すると中にホコリを被った古びた宝箱が一つだけあった。
「あ、あった!本当にあったわ!」
「やったなミウ!ヒカリ!ゴールだ!」
「やりました!」
手を取り合い喜びを分かち合う3人。
さっそくその古びた宝箱に近づき目の前に立つ。
「ゴクリ…ヒカリ開けていいぞ…」
「え?アキラ君が開けてよ…私達をここまで連れてきてくれたんだし」
「そうですよ。最後は兄さんの手で終わらせちゃってください。」
「わかった…じゃあ開けるぞ?」
鍵も掛かっていないその宝箱をそ~っと開けるアキラ。その中には…
「これは…ティアラか?」
「綺麗…」
「他には何か入ってないのかしら?」
「どうやらこれだけみたいだな…ん?」
ティアラの下に古びた紙が1枚小さく折りたたまれて入っていた。
「こんなものをみつけたぞ?とりあえずティアラはミウが持っててくれ」
ティアラを受け取るミウ。徐々に笑顔になっていき
「ありがとうございます。兄さんニコッ」
ズキュン!!!
あれ!?!?俺今打たれた???心臓打たれた!?!?不意に出るミウの悩殺エンジェルスマイルやばいんですけど!超かわいいんですけどおおお!?この笑顔向けられて耐えられる人類俺しかいないんじゃない!?(耐えれてない)他の男はこれ見ただけで瞬殺よ?イチコロよ?やめて!俺以外にそんな笑顔絶対向けないで!!ミウ!!!!
「ハァ…ハァ…」
「どうしたの兄さん?」
「あ、いや大丈夫だミウなんでもない」
「ずるーーい!私も持ちたかったなーティアラ!!!どうしてミウちゃんに渡したの?普通彼女である私に渡すべきなんじゃないかな…かな…?」
「ヒカリちょっとマジで眼が怖いからやめて。たまたまミウが隣にいたから渡しただけだよ…」
「アキラ君ほんとかな…?かな…?」
「近くに居たからなんだね…」
「え?あ!違うよミウ!俺はねミウに似合うかなぁーなんてさ」
「へーそうなんだ。私よりミウちゃんの方が似合うから渡したって事ね」
「あ、いや…そのー特に深い意味は…」
「嘘だ!!!!!!!!」
「「!!!???」」
シーンと静まり返る洞窟内…そして下を向いていたヒカリが満面の笑みを浮かべながらこちらを向き
「…なーんてね笑冗談だよ!一回やってみたかったんだ〜ヤンデレ系彼女ってやつ笑」
「あ…あぁそうなんだ」
「びっくりしました」
ヒカリはごめんごめんと謝りながら
「とりあえずなんて書いてあるか見ようよ!これが隠された財宝ならおめでとう !」
「そうだな。じゃあ見てみよう」
手紙を皆の前で開ける
そこには『選択せよ』の文字だけ書かれてあった。
「なんだか予想と違いますね」
「あっれーミッションコンプリート!とかそういうのが書いてあると思ったのに!」
予想が外れて悔しがるヒカリとミウ
「選択せよって何の事言ってるんだろう。何か選ぶような選択肢あったっけ?」
「えーせっかく財宝ゲットしたっていうのにまた何かあるのかな…」
「わからないけどもう一度宝箱調べてみます?」
まだ宝箱の中に何かあり、そのどちらかを選んで持っていく…というのなら話は簡単だ。宝箱をくまなく探すがティアラと手紙以外他になにもなかった。
「しょうがない…この紙は一旦置いておいてそろそろ外に出るか」
「そうしましょう」
「わかったわー消化不良だけどお宝は手に入ったしこれで終わりなのかしらね」
「そうかもしれないな…」
外に出ようと扉を戻る3人。また色々な罠が待ち受けているのかと思ったが宝箱を開けてクリア扱いされたのか帰る道中、床に帰り道に繋がるであろう光の線が光っていて無事何事もなく出口まで出られた。
「結局この紙の意味もわからず仕舞いで終わりかー雰囲気とか洞窟の中はめちゃくちゃすごいし面白かったけど…なんだかなー」
「そうねーエンディングは見た人の考え次第って濁して終わる映画みたいなモヤモヤした気持ちだわ…」
「絵に書いてあった蛇も象も居ませんでしたし…ただ洞窟の中に宝があるって意味の絵だったのでしょうか?」
「うーんそうだなぁ…」
もう一度最初に貰った絵を見るアキラ。蛇と象が悲しそうな顔をして宝を奪ったであろう誰かに手を伸ばすような仕草で泣き崩れている…
「ふっ…象は手を伸ばせるけど蛇は…!!!?」
脳内に稲妻の如く電流が走る!!!思わず立ち止まって考えを整理するアキラ
「兄さん?」
「急に止まってどうしちゃったのさアキラ君」
「…もしかして選択せよって…この絵の本当の意味って」
ただならぬアキラの雰囲気に2人はお互い顔を向け合って???という様な顔をする。
「もしかして何かわかったの!?!?」
「あぁ…もし俺の考えが当たっていたとしたら、まだこのアトラクションはクリアじゃないはずだ…」
「クリアじゃない??どういう事ですか?このティアラが財宝じゃ…」
両手の手のひらで大事そうにティアラを持つミウ。
「選択せよ…か。なんとなくこの物語が理解できてきたような気がする」
「ど、どういう事アキラ君???物語なんてあるの?」
「あぁこのティアラは財宝じゃない」
「そ、そうなのですか!?でもじゃあ本当のお宝はどこに?」
ミウもヒカリも考えがまとまらずわけわからん状態に陥っている。
「とりあえずここへ行こう。そうすれば…今度こそ本当に終わりだと思う…」
アキラはMAPを開いたスマホを2人に見せて『目的地』を指をさす。
「えっ…ここって…」
「???」
こうして2人はアキラの後ろに続くように『目的地』へと向かった
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