第34話 「アドベンチャー」
入場ゲートを潜って進んだ俺達はその光景に思わず息を呑んだ…
まず目に入ったのは建物内にも関わらずそびえ立つ近未来を思わせるビル群。幾何学的に計算された見たこともない姿形のビル群がメインロードの脇にいくつもそびえ立ち、一つ一つネオン色で色鮮やかに彩られている。さすが近未来型遊園地施設と呼ばれるだけの事はある…そう思って辺りを見渡すと更にその上に目が行った。
「み、見て空!!!空っていうかこれって…」
「宇宙だなこりゃ…」
「素敵…」
アキラ達は上を見上げたまま立ち止まってしまう。
3人の瞳に映っているのは宇宙空間そのもの。星や惑星や虹色に輝く雲海などが映し出され、まるで宇宙空間に放り出されたと錯覚してしまう程リアリティーがあり、動いている星々がさらに本物と脳が錯覚させる。
「日本一をナメてたわ…」
「すごすぎてもう満足しそうです…」
「と、とりあえず先へ進んでみよう!スマホで何かおもしろそうなアトラクションないか調べてみるよ」
スマホでMAPを表示する。するとジャンル別に色々探せることがわかった。
「なんか色々あるみたいだけどどれがいい?」
「どんなのがあるの?」
「えーっと「アドベンチャー」「ファンタスティック」それと…」
「それと何ですか?」
「…」
そこに書いてある文字が今までの2つと全く異なっていて、読み上げるかどうか悩んでしまった…
「ちょっと早く何か教えなさいよ!」
「わ、わかったわかった!だから引っ張るなって!」
ヒカリに腕を引っ張らて思わず2人にスマホが向いてしまう…そして2人は「アドベンチャー」「ファンタスティック」の後にある最後のジャンルに視線が向かい
「「イチャ…ラブ…?」」
ふむ気まずい。なんでこんなジャンルが急にあるんだよ!とツッコミたくなるが男は俺しか居ないから2人は行きたがらないだろう。俺はミウと2人っきりで行ってみたいけどヒカリが居る手前ここは他の二つだけ行くことにする。
それに…昨日2人から『あいさつ』とわかっているが、キス…されたので恥ずかしいって気持ちも少しはあった。
「な、なんだか変なジャンルだなハハハッ…カップルしかいなそうだし、そこは行かない事にして他の所行ってみようぜ」
「あ…うん…先に「アドベンチャー」行ってみたい!ね?ミウちゃん!」
「そ、そうですね。まずはそちらに行ってみましょう」
(先に?まずは?…行かないって事でいいんだよな)
「それじゃ…「アドベンチャー」はこの先まっすぐみたいだな」
ワクワクを隠せないヒカリが楽しそうにピョンピョン跳ねて
「こう冒険とか宝探しとか色々するのかしら!すっごく面白そう!」
「私そういうのあまり得意な方じゃないので不安です…」
「大丈夫大丈夫!アキラくんも私もいるんだから安心しなさいって!」
「そうだぞミウ。兄ちゃんが何かあったら助けるから思いっきり楽しもうな」
「は、はい///」
「ジィー…」
何かしら、この2人から漂う少し甘い雰囲気は…
ヒカリは「恋愛マスター」と言われているだけあって、コト恋愛ごとにおいては敏感であり、事実会ってしばらく2人の会話のやり取りを聞いただけで白金アキラが白金ミウに対して『普通』に接している事実…違和感に気づいた。
そしてそれに伴い2人のわだかまりがなくなり、白金アキラの事情を知っている天超ヒカリにとってそれはとてつもない異常事態であり、危機だった。
(な、なんなのよも〜もっと私を意識したり、手に触れた時に焦ったりしなさいよ!これじゃすっごいす〜〜っごい勇気振り絞ってキスした意味ないじゃなぃ〜。会った時も普通だったし…アキラ君ったらさっきからミウちゃんの方しか見ないし、ミウちゃんだって私の方あんまり見てくれないし…なんだか私、除け者みたいじゃない…)
事実そうである。
(こ、こうなったらミウちゃんより目立って、アキラ君に私の事しか見れないようにするんだから!!!もっともっとアピールしなきゃアキラ君は私に振り向かない!!)
ヒカリはアキラの右腕をギュッと抱きしめ強く引き寄せる
「ほら早く行こ!ギュッー」
「ちょ!ヒカリ引っ張るなって!それにう、腕!当たってるって!」
やわらかい感触が右腕を包み、それが全身に伝わりアキラは振りほどこうとするも、思いの外強い力でガッチリ掴まれていて抜け出せない…
「とりあえず焦って走るな!転ぶだろ〜」
「え〜転ばないし!早く行きたくてウズウズしてるんだから!」
「とりあえずミウもいる事だし落ち着けって…」
「ハーイ」
走るのはやめたものの俺の右腕をガッチリ固定し話さないヒカリ…
どうしたんだ急にヒカリは…ミウは?
チラリとミウの方を見ると、無表情でこちらを見ながら歩いてくる。
「兄さん」
「な、なんだいミ、ウ!?!?」
隣まで来たミウは俺の左腕にガッチリ腕を絡ませ密着してきた。
「う、あ、え?ミ、ミウ?」
「ハグレると危ないからちゃんと掴まる」
左腕に右腕とは違う、少し控えめな感触であるがミウのやわらかいものが当たっている…兄ちゃん鼻血出そうです。このまま出血多量で天国じゃなく宇宙の果にダイブしちゃいそうです(脳死)
焦った様にヒカリが
「こ、これは恋人限定だよミウちゃん?」
間髪入れずにミウも対抗する
「右腕は恋人、左腕は兄妹限定です。ね?兄さん?」
風呂上がりの様に頬を赤くし涙目で俺を上目遣いで見るミウ
あ〜〜〜ダメだ。可愛すぎて、幸せすぎて脳がブラックホールに飲み込まれていく…何も考えられないぃ〜
両手に初めての感触を味わいながら白金アキラは何とか振り絞って声を出す。
「ソ、ソダネー」
「う…そ、そうね!アキラ君がそういう言うんじゃ…じゃあ今日はアキラ君を半分こって事で良いわね?」
「わかりました…ヒカリさんは右。私は左を」
「じゃ決定ね!!」
ヒカリはまさかのミウの行動にビックリしたが、右半分という破格の条件で白金アキラとスキンシップが取れる現状に非常に満足していた。
(フフフ!これで違和感なくアキラ君と腕を繋げるわ!うれし〜うれし〜うれしぃ〜な…ハッ!!!こ、これってミウちゃんもアキラ君と腕を繋げるからもしかして私…自分で自分の首しめちゃった!?!?)
アワアワアワと今更ながら自分の取った行動が恋愛においては最悪手だったと痛感する…だがそんな事を考えたのは一瞬で、もうヒカリの顔はアキラと初めての腕組デートが出来る喜びで一杯で頭お花畑状態に至る。
そんなヒカリの様子を伺っていたミウは
(よ、よ、よ、良かったぁ〜兄さんを連れて行かれないで…危うく兄さんとヒカリさんだけでどっか行かれちゃう所だった…必死でどうにか引き止めたけど…)
今の現状を眼にしてミウは心臓の鼓動を隠しきれない。
(私どうしてこんな恥ずかしくて…大胆なことを…///)
ミウも恥ずかしくて心臓が飛び出そうなくらいドキドキしているが「兄さんの腕を掴みながらデートしている」という事実で頬がゆるみながら歩いている。
そんな2人の思いもしらず白金アキラは意識朦朧としながら「アドベンチャー」エリアまで歩いていた。
☆
「アドベンチャー」エリア
「ようこそ諸君!君たちは隠された財宝を探すために集められた探検家…一人で財宝を探すも良し!チームを組んで財宝を探し当て山分けするも良し!!ではこれから君たちに『手がかり』を渡す!!その手がかりを解き明かした者だけが財宝を手に入れることができる!!では受け取れ…」
長い白ひげが特徴の如何にも「探検家」という格好をしたスタッフがここにいる総勢30人程に古びた紙を手渡す。
「入り口はココだ!そして財宝を手に入れた者!リタイアする者もこちらへ来てもらう!もし場所がわからなければスマホでMAPを見てくれ!緊急事態になったらすぐに緊急ダイヤルに連絡するように!それでは諸君の健闘を祈る!」
俺たちがやってきたのはアドベンチャーエリアの「ワンディー・ジョーンズ」
謎解きをして財宝をゲットする体験型アトラクションだ。敷地がかなり広く辺りが木や草で生い茂っていてとても室内とは思えない光景だ。
エリアが変わると景色が変わる仕様で、このエリアに入ってからは雲一つない良い天気となっていた。
そして俺は、なぜだか気づいたらここにいた。
「ねぇねぇアキラ君、なにが書いてあるの?」
「よし、そうだな見てみるか」
受け取った紙を見てみる
「おー本当に謎解きっぽい感じだなぁ」
「私にはさっぱりわかりません…」
「わ、私も…」
そこに描かれていたのは「一匹の蛇と象が財宝を洞窟に逃げ込む何者かに取られ悲しんでいる絵」が描かれていた。
「蛇と象の財宝って事?」
「盗んだ奴が最後死ぬ前にこの財宝を隠したんだ…それを今から俺たちはこの絵をヒントに探さなきゃ行けないってわけか」
「かな〜り洞窟が怪しいわね…ねぇねぇどうする?もう始まってるみたいよ?」
周りを見渡すともう何人かは行動していて残り数人となっていた。
「俺達も動き出すとするか!2人共!財宝をゲットするぞぉ!!」
「おー!」
「おぉー!!!!」
バッチリ気合を入れて進む3人。転んだりしたら危ないので腕ではなく服を少し掴んでもらう事にした。腕が良いと抵抗したヒカリだったがさすがに歩きづらいと何とか納得してこういう形となった。ホッとしたような顔をしたミウ…気のせいか?
なにはともあれこうして俺達の財宝を手に入れる冒険が始まった…
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