第32話 「デスティニアランド」



 時刻9時 白金アキラ家玄関前


「お、おはよう!」


「おはよ」

「おはようございますヒカリさん」


 私が家を出たらアキラ君家の前にもう二人は立ってて私を待ってくれていた。

 急いでかけよりアキラ君とミウちゃんは今日も素敵だななんて思いながらあいさつし駅へと移動する三人。


 どこへ行くかも聞かずに2人の後ろを歩くヒカリ…


 (正直気まずい…)


 だって昨日あんな事しちゃったのにアキラ君ったら普通だし!?ミウちゃんに申し訳ないなって思ったけど我慢できなくて偽物の恋人なのにその…その…キスしちゃってもうごめんねって感じでいたのに!!


 そして昨日のアキラ君からのメール!!


 『今回の事は気にしないから。だからもうしないで』


 …どういう事!!!????気にしないからって何?もうしないでって何??

 私アキラ君に嫌われたと思った…自分勝手な事をして…自分の気持を勝手にアキラ君にぶつけちゃって嫌な思いさせたんだ…って思って泣きながら枕を濡らして眠れない夜を過ごしていたというのに朝早く電話してきて


 「あ、ヒカリ?おはよう起きてたんだ」 

 「…(寝不足で思考停止中)」

 「急だけど今日これから一緒に出かけよう」

 「…え(少し覚醒)」

 「あーそうそう。ミウも一緒に行くから三人で出かけよう」

 「…は?(半覚醒)

 「集合時間は俺ん家の前に9時で!それじゃよろしくな〜」

 「えっ!?!?(覚醒)」


 勝手に電話を切られ、ふと我に返る・・・時刻は7時30分。


 「あと90分しかないじゃない!!!」

 

 バサッとベッドから降りて鏡で自分の顔を確認する…


 酷いクマにぐちゃぐちゃの髪の毛…とてもじゃないけど人前に出られる状況じゃない…


 「ぎゃーーーどうしよどうしよどうしよ!急いでお風呂入らなきゃ!」


 急に決まった事だが初めてアキラ君とのお出かけ。ミウちゃんもいるけど逆に腹を割って話せるチャンスかもしれない…こんなチャンスを私は絶対に逃さない!


 モテる技術全てを使いお風呂で顔を温め血行を良くし、寝不足によるクマをなくし、髪の毛もくるくるキュートでツルツルに仕上げ万全な体制を整えた…


 「後は…服ね!」


 今日はどこに行くのか…結構歩くならショートパンツとTシャツに少し可愛い運動靴で動きやすい格好にするんだけどな…だけど初めてアキラ君と私服デートするんだから気合入れなきゃ!


 しばらくして準備できたヒカリは鏡を見る。


 髪型は少しウェーブを効かせたふるゆわスタイルで自然体な仕上がり。化粧も唇に少しラメの入った薄ピンクの口紅でワンポイント入れただけで後はナチュラルメイクで仕上げる。首元にはあまり目立たない様に赤いルビーのついたアクセサリーを着け、白を基調としたワンピースでバランスを取る。靴は少し高いヒールの付いた赤い靴にした。あまり悪目立ちしない落ち着いた赤色をしており、そこにお気に入りのピンクの鞄で締める。


 全体的な色調バランスを見てヒカリは頷きながら


 「完璧ね!」


 時刻を見ると9時ピッタリ

急いで集合場所へと向かうヒカリ


そんな思いを経て今私はここに立ってるの…なんだかものすごい疲れたけどアキラ君を見ると不思議とあ〜がんばって良かったと思う。

 (アキラくんとミウちゃんは…)


 アキラ君はジーンズと白Tシャツに黒の薄いジャケットを羽織り、首元と手首にシルバーのアクセサリー…それに素人眼にも高そうな時計と思わせるが決して嫌らしくないむしろアキラくんを引き立たせるようなかっこいい時計を着けていてもう何を着ても何をしても全て似合ってしまうその反則的なスタイルと反則フェイスがある限りこの世にアキラくんに似合わない服など無いと思わせてしまう…無地でシンプルこそアキラ君を一番引き立たせる最高の服装だ…あぁ…アキラ君かっこよすぎ大好き。


 ミウちゃんは…ノーメイクなのに長いまつ毛と大きな眼。美白な美肌が化粧をまったく必要としない事がひと目見てわかる。かわいらしいプルンとした唇は視線を釘付けにするが更に視線を落とすと…長い脚が更に目立つ。男子なら鼻血が出る程綺麗な脚を出したショートパンツに白い無地のTシャツ…★のマークが入ったグレーの靴を履き最後にスカイブルー色の可愛らしいバッグでミウちゃんの魅力が余すこと無く全て発揮されている服装だった。


 (マジでなんなのこの兄妹…私がいたら邪魔にしかならないんじゃないかしら…)


 さすが恋愛マスターである。何も考えず服装を決めた二人にとってヒカリのこの服装分析は何の意味も効力もなさない。ただヒカリが傷つくだけで終わった…

 

 ガクッと肩を落としながら歩くヒカリにアキラが


 「そういえばヒカリにはどこ行くか言ってなかったな…」

 「そうよ。急に出かけるって言い出した時は正気を疑ったわよ…(寝不足で何も考えられなかった)」

 「ハハッごめんごめん」


 笑いながら謝るアキラ。その顔を見たら昨日の事は本当に気にしてないのかな…なんて考えたが気まずいよりはそっちのほうがいいかも…とヒカリは思った。

 

 もっと気まずくなると思っていたヒカリはそんな素振りもなく普通に話してくれるアキラを見て安心すると同時に少しだけチクリと心が痛くなった…私だけ気まずい雰囲気だしてちゃダメよね!アキラ君が気にしてないなら私も…


 「そ、それで今日はどこいくの!?ミウちゃんはもう知ってるのよね…」

 「はい。私も初めて行く所だから少しワクワクしてます」

 「初めて行く所…?」

 「そうだ…今日は皆で日本最大の遊園地「デスティニアランド」へ行こうと思う!」

 「おー!!私も行ったことない!!」


 やった!やった!!あの「デスティニアランド」に行けるなんて!


「デスティニアランド」ー 絶叫マシン数世界一を誇り乗り物だけでなく、日本の近代技術全て詰まったと言っても過言ではない体験型お化け屋敷などが楽しめる近未来型遊園地施設。


 だけどあそこって予約5年待ちって噂で聞いたことがあったような…来た人全員が楽しめるようにって入場規制をかけてるってテレビで見たような…そんな所に急に行けるものなのかと疑問に思う


 「行ったことないけど…急に行けるものなの??」

 「実は…前にスマホでチケット懸賞に応募したら当たったんだよ」

 「えっ!?すごいじゃんアキラ君!!」

 (顔もスタイルも運も良いなんて!!神よ…与えすぎでは!?)

 「私も今日初めて聞かされて…」

 「す、すまん皆にビックリさせようと思ってさ…ハハッ」


 (実は俺の店の常連さんの一人が「デスティニアランド」創設者の一人で仲良くなった際、いつでも来ていいよと入場制限・人数制限無効パスを貰っていた…なんて言えない)


 「じゃあ本当に行けるの!?しかも三人で!」

 「お、おう!だから楽しもうなー皆」

 「わかった!楽しみだねーミウちゃん!」

 「う、うん!」


 こうして駅に付いた俺達は電車で一時間かけて近未来型遊園地施設「デスティニアランド」へ辿り着いた。


 


 「着いたわ!!!」

 「おー!」

 「綺麗…」


 駅を降りて目の前にその光景は広がっていた。


 ドーム型となっているその建物は野球ドームとは比べ物にならない程大きく、そして3Dプロジェクターを使っているのか本物の様に色々な建物へと姿が変化していき、その建物が崩れたと思ったらまた新しい建物に映るという素晴らしい技術で外観すらも人々に楽しませていた。


 「これ…すごい」

 「ミウはこういうの初めて見るのか?」

 「うん。すごい綺麗」

 「そうだなぁ〜近くで見ると圧巻だな」

 「本当すごいわね」


 建物の中に入る前に圧倒されてしまう3人。ほげぇ〜と見とれていると続々と人が中へと入って行くのが見える


 「あ、私達も行きましょうよ!乗り物に乗れなくなっちゃう!」

 「大丈夫だって落ち着いて」

 「え…でも…」

 「実はなーーー」


 この施設は行列する程一日の入場者を入れない事。完全予約制でスマホで行きたい所のマップを押すとすぐ予約出来ていつでも行けるよう管理されている事を伝えた。入場チケットも俺のスマホに入ってるバーコードを見せれば入場できることも伝えておく。

 

 「最近の遊園地ってそんなすごいの?」

 「初めて知りました…私てっきり熱い中外で待つのかと…」

 「なんだかすごすぎてすごいのかわからなくなっちゃうわね」

 「そうですね…」

 「とにかく!百聞は一見に如かず…ミウ・ヒカリ!行ってみよう!」

 「「おぉー!」」


 こうして近未来型遊園地施設「デスティニアランド」での長い一日が始まった。


  

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