第31話 「兄さんがそれでいいなら」

翌日


 土曜日で学校は休日となるが白金アキラのトレーニングの日課は怠る事はない。


 日課のランニングと基礎トレーニングを終えて帰宅するアキラ。


 時刻は6:30


 じわじわと夏が近づいて来て、日差しの強さを肌でビンビン感じながら吹き出す汗をタオルで拭き取り、アイスコーヒーでも飲もうかと思いリビングへと赴く。


 「おかえりなさい兄さん」

 「うぉ!!!!…あ…おはようミウ(可愛い)」

 

 まさかミウがもう起きていてあいさつしてくるなんて思いもしなかったので心臓が飛び出そうになった。

 ビックリしすぎてふと昨日の事を思い出すが不思議ともう恥ずかしさやらミウの顔を見て話すことに緊張する事はなかった…(可愛すぎて少しは緊張するけど)


 「はい…どうぞ」

 「あ、ありがとう!」


 冷たいアイスコーヒーが用意されていて、よく見るとミウももう自分の飲み物を用意してあった。

  「じゃあいただくよ…ゴクゴクゴク」


 汗をかいて火照った身体に冷たい飲み物を飲んだ事によって身体の中から一気に冷やされていくのがわかる。半分くらい飲み干してしまいあまりのおいしさとミウが作ってくれたうれしさでふと我に返り、一気飲みするのはやめた。


 「おいし〜」

 「ふふ…ありがとう」

 

 そう言ってミウもコップに口を着け飲む。その所作、動作の一つ一つが美しく思え俺はミウをうっとりと見つめた…


 (俺は昨日ミウにキスされたんだよな…こんな可愛くて美しくて大好きなミウに…)


 だけどあまり現実感がない…そりゃそうだ眼を瞑っていたからだ。真っ暗闇の中唇に「ナニカ」が触れたという実感だけでそれが本当にミウの唇なのか疑わしい所もある。ヒカリもそうだ!だからこんなに実感がないのか?普通キスした後って二人照れながら笑い合ってうふふ、あはは、なんてイチャラブな雰囲気になるのになんなんだこの悲しい感じは…だいたいあいさつでキスする世の中になったらミウやヒカリにキスされた人たちは嬉しさのあまり気絶して、都市部に出かけた暁には気絶者が多すぎて都市機能停止するんじゃないか?(あいさつでキスしすぎ)


 (もうやめてほしいな…やっぱり…)


 メールで一応は俺の気持ちを伝えたけどちゃんと伝わっているか不安になったが朝の”あいさつ”をしてこない辺りちゃんとわかってくれているはずだ…

(だけど俺にはいいんだよ?他の人には嫌だけど俺にはいいんだよ???)


 俺が本気を出してJKの間に「兄妹とあいさつキッスが流行」という謳い文句を各雑誌の上層部に掛け合って表紙に載せてみようかな…なんてアホな事をミウの作ってくれたおいしいアイスコーヒーをちびちび飲みながら考えていたら


 「あ、あの兄さん…」

 「ん?どうした?」

 「昨日のメールの事なんだけど…もうしないでって…」

 「ん?あぁそうだな。出来れば(他の人と)してほしくないかなぁ」

 「…ッ! そ、そ、そうですか…」


 顔を伏せて何やら落ち込むミウ。簡単に流行に流されてしまった事を後悔しているのか? 

 しょうがない…ここは兄貴としてビシッと言う所だな。


 「(他の人とあいさつ感覚で)簡単にするもんじゃないと兄は思うぞ。ミウのためにももう少し自分で考えてからするように…わ、わかった?」


 「????」


 何やら考え込むミウ…そして少し間があったが


 「…!わかった…ごめんなさい兄さん」

 「わ、わかってくれたか!?兄ちゃん嬉しいぞ!」

 

 伝わった!!!これでミウの貞操観念を修正できたはずだ!やっぱり今の兄貴らしい言葉がミウの心を付き動かせたのか!?やっぱり言う時は言わないとなこういう人生に関わる大事なことは…あ〜言って良かった〜〜なんだか安心して身体が落ち着い「てきて色々な事が気になり始めた…


 「ところで…ミウがこんな早く起きるなんて珍しいじゃん。どうしたの?」

 「い、いえ…なんだか昨日あまり眠れなくて…」

 (それでこんな綺麗なのか…さすが俺のミウ)

 「そ、そうかなんだか心配だな。今からでも少し横になったら?」

 「もう眠れないと思って起きてきたの…せっかくだから兄さんの飲み物も作っておこうって思って」

 「お…おっふっ」


 な、な、なんて可愛い妹なんだぁあああああああああ!!!!!こんなに素晴らしい妹がいるか!?普通いるか!??いないよ!!起きてきてあ、兄さんの飲み物も作っておこうなんて考える子いないよ!!

 涙が溢れる勢いで感動してしまうアキラ。この溢れんばかりの歓喜の気持ちでついつい思っていた事を言ってしまう


 「じ、じゃあ…今日兄ちゃんとどっか遊び行かない?」

 「…!?」


 顔を伏せ少し落ち込んでいたミウがバッとこちらを見て、そのどこまでも吸い込まれそうなキラキラした瞳がこちらを見つめた。


 「い、いいの?兄さんと…そんな…」

 「お、お、おう!行こう!」

 自分で言って自分で動揺してしまった。ついミウと一緒にどこか行きたいなぁ〜なんて考えていたらもう口に、言葉にしてしまっていた…

 嬉し恥ずかしながらアキラがアワアワしているとミウが申し訳無さそうに言い出した。


 「で、でもヒカリさんに悪いから…」

 「ん?なんで悪いん…ハッ!」


 俺とヒカリは付き合っている事になっている。ミウはそこにまで気を使っている!?!?どこまで気使うのミウ!?そんなんじゃ気疲れして死んじゃうよ!ダメ!絶対させない!これ以上気を使わせない!!!!そんな兄貴になろう。うん。


 「大丈夫大丈夫。ヒカリにはミウと出かけるって伝えるから」

 「でもやっぱりヒカリさんに悪いから…私はいいよ…兄さんとヒカリさんが二人で遊び行ってる所私見たこと無いし…どうせなら私じゃなくてヒカリさんと行ってあげなよ…」

 (たしかにミウの相談をする時意外二人で会うことなどない。ましてや休日二人で遊びにいくなんて)

 「ミウはヒカリに悪いから遠慮してるのか?」

 「う、うん…」

 「…よしわかった!」

 

 俺は意を決したように大声を出して決意表明する。


 「今日はヒカリも誘って三人で遊びに行こう!集合時間は下の玄関に9時!」

 「さ、三人で…私邪魔なんじゃ…」

 「邪魔なはずない!元々ミウと遊び行こうと思ってたんだ。ミウがヒカリに遠慮したから仕方なくヒカリも呼ぶ事にした。以上」

 「えー…」

 「なんだ?不満か?」

 

 三人で遊び行くと言った時ミウが一瞬だけどジトッとした眼を俺に向けたがすぐいつもの女神フェイスに戻りそして少し微笑みながら


 「兄さんがそれでいいなら」


 「!!!わかった!それじゃヒカリにもすぐに連絡する」


 こうして急いでヒカリに電話し、寝ていた所を叩き起こして3人のデートが始まる…?






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