第12話 兄さんには絶対に頼らない
「一条ハジメくんのどこが好きなの?」
唐突に、ヒカリがストレートど真ん中の質問をミウにした。
俺が言い間違えた事によって重くなった空気は、さらに重さを増してしまった。
「え?」
ミウは驚いて眼を見開いた。
更に追い打ちをかけるように
「いつから好きだったの?」
「え…えっと…」
ミウも動揺のせいか落ち着きがない。
(ミウのあんな姿、小さい頃ぶりに見るな…かわいい)
ミウに動揺が見て取れたヒカリは更に質問する。
「もしかして本当は好きじゃないのに、付き合ってるんじゃない?」
「………」
今日の一番聞きたかった事だ。確信に迫る事をよく平気で聞けるもんだ。さすが恋愛マスターとなれば修羅場の数が違って肝が座っているのか…と関心する俺。
ドク男とヒカリの考えは同じでミウの態度は好きな人に対する態度じゃなく、無理やり、嫌々、渋々、付き合っているんじゃないのか?という見解なのだ。
一番近くにいて、毎日顔を合わせているこの俺が一番ミウの異変に気づかなかったのは痛いところなのだが…(お兄ちゃん失格とか言わないでね!頼むから!)
おっと取り乱したな。
それじゃ冷静にいこう。
何も言わないミウ。その沈黙はどっちだ?
ヒカリの無神経な発言に対する否定の沈黙なのか、まさに図星でなんて言っていいかわからない暫定の沈黙なのか。
「どうしてそんな事思うの?」
少し沈黙した後、ヒカリに対して少し強い口調で言う。
ヒカリは真っ直ぐミウの目を見て
「私ね?どうしてもミウちゃんがあの一条ハジメくんの事を好きだとは思えないの。今日アキラくんとドク男くんと4人で一緒にごはん食べたんだよね?その時の様子を聞いたんだけど、やっぱりミウちゃんの態度は好きな人に対する態度じゃないと思う。」
「そ、そんなことない」
ヒカリに言いくるめられそうになり、少し身を縮めるミウ
「そうかな?アキラくんや私と一緒に居る時のミウちゃんと全然違う…本当の事を教えてほしいの」
「………………」
押し黙るミウ。
完全に一条ハジメと無理やり付き合わされてる。とわかるほど言葉もでず、その悔しいという気持ちが顔に出ている。
俺もそうとわかれば黙っちゃいられない。
ミウの前で緊張してうまく話せないけど…なんとか勇気を振り絞って俺の想いを伝える。
「な、なぁミウ?俺は、その…無理やり付き合わされてるなら…こ、断るべきだと思うぞ?ミ、ミウが嫌な思いをしてまで…付き合うことはない…と思う。な、なんで付き合っているのか、できたら、教えてほしい。な!なんだったら俺が解決してやる!…だって兄ちゃんだろ?俺に頼って欲しいんだ。…昔みたいにさ」
昔みたいにと言った瞬間ミウがビクッと身体を震わせた。
(な、なんだ?どうしたんだ…俺なにか変な事言ったっけ?完全にホレちゃうくらい決まったと思ったのに)
ヒカリも心配そうにミウを見ている。
「…兄さんには絶対に頼らない」
「え…?」
少し涙目になっているミウが俺の方をはっきりと見た。
久しぶりに眼を合わせる兄妹。
俺が恥ずかしいからと言う理由でなかなかミウの眼を合わせられないでいたので実際にこうやって目があった。と言えるイベントは半年くらいぶりなのだ。
だが、喜べない…この状況に…大好きなミウと眼があったのに…
「ど、どうしてだ?…お、俺何かミウに嫌われること、したか?」
「そういう事じゃない!!!!」
ダンッ!と机を手で叩いて大声で叫ぶミウ
声がでない…ここまでミウが感情を表に出したのは見たことがないからだ。
ヒカリもびっくりしすぎてミウを見つめている。
それほどミウはあまり感情を表に出さない。そんなミウがこれほど大声を出すなんて…一体なにがあったんだ…ミウ。
「私の問題は私が解決する。兄さんもヒカリさんも心配してくれてありがとう。でも大丈夫だから…」
そう言った後、うつ向いて
「2人はようやく付き合えたんだから、私の事なんてかまう時間ないでしょ?だから心配しないで…」
「…」
「…」
ただ呆然と見てるしか出来なかった。
「ヒカリさんカレーおいしかった。本当にありがとう。 …それじゃおやすみなさい」
その後ミウは食べたお皿を片付け、自分の部屋へと行ってしまった…
ミウがリビングを後にしてから少しして…
「ごめんなさい。私が急に余計な事を聞いちゃったから」
「い、いやいいんだ…それよりも…あんなミウ初めて見た」
「わ、私も。ミウちゃんがあんな大声出すなんて…」
もう一度思い返してみたが、とても現実の出来事とは思えない。
「心配しないでって言ってたけど本当に大丈夫なのか?」
「わからない。だけどミウちゃんは私達に関わってほしくないみたいね…………特にアキラくんには…」
「…」
(…兄さんには絶対に頼らない)
どうしてそんな事言うんだよ…
ミウ…
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