第6話 ドク男現る

 学校


 クラスの教室へ入る。


 俺とヒカリは同じクラスなので必然的に一緒に登校したのだから、一緒に教室へ入る。


 ざわっ・・・ざわっ・・・


 クラスの皆がこちらを見てコソコソ話している。


(なんだ??もしかして!もうクラス全員が知ってるくらい噂が広まったのか?)


 するとそこに


「おはよーじゃん!アキラもようやくヒカリと付き合ってくれて嬉しいじゃん!」

 

 腕を組んでうんうんと頷いてるこいつは「月島 アカネ」


 スポーツ推薦でこの学校へ入学した彼女は、背が高く髪はショートカットで運動大好きオーラを放っており、明るくさっぱりした性格で男女から好かれる性格の持ち主。容姿はどちらかと言えば綺麗系だ。(ミウには当然負けるが)


 水泳部に所属していて、女子からも人気が高く、よく下駄箱に女子からラブレター入れられたとヒカリと話していたのを聞いたことがある。


 ヒカリと俺とは中学時代からクラスが同じでヒカリの親友とも呼べる程、2人とも仲がいい。


「ようやくってどういうことだ?」


 俺はアカネの発言がひっかかったので素直に聞いてみた。


「アカネ…言わないでね?」


 ヒカリがなんでかアカネを睨んだ。


「えぇ?付き合ったんだしいいじゃん!ヒカリはね〜ずっーとアキラの事が好きだったじゃん!だからあたしは嬉しいわけじゃん」

「ちょっとアカネ!言わない約束でしょ!」

「いいじゃんいいじゃん!ま!本当おめでとう〜ヒカリ」


 眩しいくらいの笑顔をヒカリに向けて笑うアカネ


「う…うん」


 そう言って2人は自分の席に行ってしまった。


 そして背後から急に



「すごいでござるなぁ〜アキラ殿!」

「うおっ!びっくりしたなドク男。いつも背後から急に話しかけるなって言ってるだろ」

「良いではござらんか〜しかし!ついに学校のアイドルと付き合うことになったとは。いやはや、拙者もアキラ殿の友達として鼻が高いでござる」


 そういうこいつはドク男。俺が一生独身であろう事から名付けたあだ名が広まって、今では本名で呼ぶ人は一人もいない。先生ですらドク男と呼んでいる。(ひどい先生だ…名付けた俺も俺だが…)


 レンズがグルグルしていているメガネを掛けていて、髪の毛も長く一度も良く顔をみたことがないが、気が合うので高校から良く話をしている仲だ。あと一応説明しておくと、話し方を聞いてれば分かる通り重度のオタクだ。



「なんでお前が鼻が高くなるんだよ…それにしてもお前まで知ってるとはな」

「何言ってるでござるか。もう学校中この話でもちきりでござるぞ」

「そうなの!?」


(おいおい、噂ってそこまで広まるもんなの??まさかそこまで広まってるとは…)



「当たり前でござる。学校一のイケメンとアイドルが付き合ったのでござるぞ?アキラ殿も何人もの女の子を振って、泣かせていたではないではござらんか。拙者ホモかと思って身の危険を感じていたのでござるが…なんにせよ良かったでござる」

「ホモなわけねえだろ!俺はミウの事が…ッ!」


 ミウの事が大好きだ!!!ってつい叫んでしまう所だった。あぶないあぶない。大声を出したせいでヒカリもアカネも何人かの人がこちらを見ている。


「ミウ?妹さんの事でござるか?アキラ殿の妹さんも綺麗でござるなぁ〜学校でも相当人気高いでござるよ?」

「ゴホンッ!いや、なんでもない。そ、そうかぁミウもやっぱり人気高いのか」


(そりゃそうだ。俺の大好きな妹だからな)


「学校でヒカリ殿の次くらいに人気でござる。いや?アカネ殿も結構人気が…おっとこれは調査が必要でござるな…」


 ブツブツと言いながらドク男は席へ行ってしまい、ちょうどその時ホームルームのチャイムがなった。




 授業中



 そういえばと、ヒカリとアカネが話していた事を思い出す。


(朝の会話でアカネ、ヒカリが俺の事を前から好きだったとか言ってたな…。いやいやそんなわけない。昔から一緒にいるけどそんな素振り一度もないはずだ。)


昔のヒカリの行動や言動を思い出しても、そんな事を感じさせるものは何一つ思い当たらない。


(アカネの奴どうしてそんなことを…ん!?待てよ!?)


 ある考えがよぎり俺は戦慄した。


(まさか…この作戦の信憑性をあげるために、あえて皆に昔から好きだったと言ったのか!?さすが恋愛マスターだ。こんな発想、常人にはできない。どれだけ恋愛経験をつんだらそんな発想に至るんだろう…さすがだ)


 ヒカリの手腕に感心して、席からヒカリをみる。俺と目が合うと顔を赤らめ下を向いた。


(そこまでこの作戦を成功に導くために、しかも演技もしてくれて…なんて奴だ!俺、ミウと付き合うためにがんばる!)


 と、意気込んだは良いが朝の出来事を思い出し、ミウの彼氏、一条ハジメの顔が脳裏に浮かんだ。


(ミウと付き合った男一条ハジメ…)


 あいつの勝ち誇って笑った顔が忘れられない。俺のミウを…あいつが…


(ふふふ…どんな奴か徹底的に調べてやる。俺に出来ないことはないんだぜ?)




「ふふふ」






 授業中不気味に笑ってしまい、皆の気持ち悪いモノを見る目が集まって、照れるアキラであった。





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