第5話 サポーターになりたいわけじゃない!

「兄さんごめんなさい。それじゃ行ってきます...」

「ではそう言うことなので」


 一条ハジメと名乗ったそいつは一礼した後、妹のミウと一緒に行ってしまった。


 それと入れ替わりにヒカリか来て、ミウと一条そして、俺を交互に見ながら不思議そうな顔をして俺の前へ来た。


「ミウちゃんの隣にいた男の子だれ?アキラくん?」


すぐになにか起きたと察するヒカリ。ただならぬ俺の雰囲気を察してそれ以上はなにも言わない。


「ど、どうしよう...ミウに彼氏が出来てしまった...」

「え!?今のミウちゃんの彼氏なの!?なんで!?いつから付き合ってるの??アキラくん知らなかったの!?」

「う、うるさい!俺だって知らなかったよ!!まさかミウに...好きな人が...いたなんて.........うぅ...」


 大粒の涙を流し俺は動けないでいた。


「アキラくんとりあえず学校に行こう?」

「うぅう...」


 足に力が入らないがなんとか歩き出す。


(まさか、どうして、そんな素振りなかったのに、彼氏?嘘だろ、あんなやつが?この俺を差し置いて...そんなバカな、顔だってまぁ爽やか系で、そこそこかっこいいけど、だからって、俺以外の奴と...あいつ、一条ハジメ...俺の大好きで大好きで大好きな妹に手出しやがって!!)


 いつの間にか悲しみから怒りへと変わっていった。


 ミウがまだ幼稚園児の頃「私、お兄ちゃんと結婚するんだ~」って笑顔で言っている姿を思い出して、さらに一条ハジメに怒りが溜まる。ミウの隣にふさわしいのは俺だ!


「絶対に許さん!俺の大事な妹に手出しやがって!!別れさせる!」


 するとヒカリがこっちを向いて


「そんな事したらミウちゃんが悲しむんじゃないかな?」

「えっ!?」

(な、なんでだ!?)

「だって好きな人同士で付き合ってるんだから、お兄ちゃんだからってミウちゃんの恋愛に関して口出しするのはおかしいと思うよ?それに彼氏の子だって悪そうな人に見えなかったよ?普通に恋愛して普通に付き合ってるんだから邪魔したら悪いよ」


ヒカリの言うことはごもっともだった。俺は自分の気持ちばかり優先してミウの気持ちを全く考えていなかった。お兄ちゃんとしてあるまじき行為だ


「それにアキラくんのせいで別れたってなったらミウちゃんアキラくんの事一生嫌いになると思う」


ガーーーーーーン


「そう言われるとそうだな...それだけは絶対に嫌だ」

「でしょ?だからアキラくんがミウちゃんに嫌われないようにするには、良いお兄ちゃんでいることだと思うよ。ちゃんとミウちゃんの事を想って相談にのってあげたり、彼氏の愚痴とかを聞いてあげてミウちゃんのサポートすることがお兄ちゃんとしての一番の仕事だと私は思うけどな~」



さすが恋愛マスターヒカリだ。全ての言葉に説得力がある。これも長年恋愛してきた経験から来る言葉なのだろう。俺は真摯にその全ての言葉を受け止め納得した。




(そうだ。俺はミウのためにがんばらなくては、これからはミウのために色々してあげよう...)


ん?待てよ?


「えっと、恋愛マスター1つ聞いていいかな?」

「なに?」

「昨日の作戦は俺とミウが付き合うための作戦だよね?」

「うん、そうだよ?」

「俺はミウのサポーターになりたいわけじゃない。付き合いたいんだ」

「ん~」


 あごに手を置いて歩きながら考えるヒカリ


「作戦は続行でいいと思うよ。たとえ彼氏がいたとしても、ミウちゃんにアキラくんの事を考えさせるのは大きなメリットになる。だからこのまま噂を流してていいと思うよ」

「そ、そうか...」


 本当に意味があるのか疑問だがヒカリが言うんだから間違いないだろう


「それに今の彼氏とすぐに別れる可能性だってあるしね。それに...」

「それに?」

「もう昨日の夜、クラスの仲良い友達にはアキラくんと付き合ったって言っちゃったから...今頃学校中で噂になってる...かも...」


「えっ!!!?」



既に学校一の美男美女が付き合ったという噂が全校生徒、さらには先生達までに広がっていたことは今の俺はまだ知らなかった。






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