アイム・ノット・ヴィラン

三神しん

EPISODE:1「CASE OF HELL」

CASE:00 BACK BONE.

きっかけはなんだったか。

多分、最初は蟻みたいな小さい虫をプチプチと潰すのが楽しかったんだと思う。

一匹、一匹。

手足を捥いで、頭を潰していく。

命を奪うってこと。小難しく考えたことがなかったけど、とにかく楽しいからやっていた。

親にそれを見られた後、俺の目を見てこう言うんだ。


「こら!可哀想なことしないの。虫であっても命で遊んじゃだめよ」


その時の俺は「え、こんな楽しいことしちゃ駄目なの?」って気分になった。

楽しいおもちゃで遊ぶことを叱られて、いい気になるやつなんていない。

俺はしばらくふて腐れた。

なんだよ。俺はただ遊んでいただけなのに。何がいけないっていうんだ。

手足を捥いだり、首をひねり潰したり・・・その後にもがく姿がたまらなく楽しいだけだっていうのに。

なんで俺の遊びの邪魔をするんだよ。

でも、怒られるのも嫌だし。


だから隠れて遊ぶことにした。


親が帰ってくるちょっと前まで。

プチプチって潰すの。

すごく楽しくて。

でも、ある時、何匹殺してもつまらなくなった。

もうちょっと大きいのを殺してみたい。

そう思ったんだ。

じゃあ、何にしようか。

最初はミミズみたいなサイズだった。それでも飽きはやってきて、その次は掌ぐらいの大きなカエル。

カエルも何匹か殺していくと飽きてくる。

もうちょっと大きいのがいい。

なんにしよう?

その時たまたま目についたのが、お隣さん家の犬だった。


ーーーあれにしよう。


人懐っこくて俺にも懐いていて・・・あの犬がジタバタもがくんだと思うとワクワクしてきた。

だから実行したんだ。

人懐っこく俺の胸に飛び込んできたあの犬。その犬の首を俺は・・・・。

でも、残念ながら、犬の命を奪うのは失敗に終わった。

暴れる犬の力は思った以上に凄くて、むしろ俺の方が大怪我を負っちゃった。

手足を噛まれて、血だらけ。

お父さんとお母さんが助けてくれたからなんとかなったけど、もし来なかったら俺はもうこの世にはいなかったかもしれない。

お隣さんは「ごめんなさい。ごめんなさい」って何度も頭を下げてた。

犬は処分されるんだって。

要は殺されるってことだ。俺がやりたかったのに残念だ。

その時俺は学んだ。


ああ、そうか。素手じゃ殺せないのもいるんだ。


何か。武器が必要だ。

何か武器さえあれば今度こそ。確実に・・・殺せる。


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