第6話 永世王者
次の日から生活が一変する。これまで女殺し条件を封印していた。だから、すごい美形の評価で済んでいた。それでもかなりの人気だった。
それが実力も超一流クラス、魔術士協会から表彰と入会。もう評価はうなぎのぼり。ここで契約精霊たちが言う
「あの子たちジークと恋人になりたがってる」
「けどジークは高等学園出るまではと考えてる」
「目立つのが早すぎたけど仕方ないわ」
「そうね、女殺し解除しましょ」
「え?どうして?」
「変に期待もたすのは酷よ」
「これくらいの自分に見合わない女は興味ない。くらいの感じで逆に女避けにするのよ。わかった?」
「わかった。抑えてた表情、しぐさ、声も自の状態に戻すよ。」
人気は天井知らずになった。
5回生になった。9校祭が終わった翌日。この5年間校内大会、9校祭ともに全て4人で独占した、それで4人が9校祭永世王者にされた。
これは、このままでは4人の天下があと25年続くのかという実行委員会からの危惧で、他の選手に活躍の場、優勝できる場がないままになります。と主張。
これに賛同したのがバチサレム高等学園学園長。バチサレム高等学園も同じ悩みを抱えていた。バチサレム高等学園が良いならと他校も賛成した。
そして今、4人は学園長室に向かっている。学園長室に着くと各学科の首席教授もいた。
「よく来てくれた。まずはかけたまえ」ソファに座る。
「こうやってそばにいるとシャルっていい香りのする女の子だな」
ジークはそんなことを考えていた。
「君たちの戦闘系科目の実技と座学、試験、それだけ免除する試験は全部満点とする。」
はぁと思ったがちょっと待て。
「それ全体の6割近いですよね?」
バチサレム高等学園は大学に近い。学部と呼ばずに学科と呼ぶが。そのなかで花形がジークたちの中央学科。起原が強いランカーを育てるため作られた学園の直系。それゆえの戦闘系授業時間。なので、本当に6割近く空く。
「その空いた時間はどうしろと?」
「分かっとるのに先を急くな」
「はい、失礼いたしました。では。こちらの首席教授の方々と話してよいと」
「うむ、まずは手短にの」
ジークは良い女を体現している女性を探し
「治癒学科首席教授ですよね、ジーク」
「あなたの事を知らない学校関係者はいないわ」
「それはどうも」
「治癒学科希望ね、ちょっと意外だったわ。」
「明日の午後治癒学科の私の部屋に、やって行けるか試験を受けてもらいます。」
他のメンツは、シャルが政治経済学科の政治学。思わずおでこを触った。おこられた。
コンスタンは軍人候補生専門の戦略学学科、 テックは魔道具学科。もともと1希望だったのに出願でミスったらしい。やはり、こいつが1番では?
翌日、午後から本来なら体術の時間だったが、4人はそれぞれの指定された場所。皆、各学科首席教授の部屋であった。ジークも多少緊張している。
試験自体は難易度が高くても問題ない。問題は態度だと心に言い聞かせる。したがって、今日は封印モードだ。
首席教授の部屋に着き、ノックの後
「中央学科のジークナイト・マジェストです」
と申告する。中から
「入りなさい」
との言葉を受け中に入る。
室内は図書館かと思うほどの本の量。しかしきれいに整理されてる。そして、美人を体現した首席教授がいた。
「そちらにかけなさい」ソファに座る。そこに、結構な量のプリントが。これが試験問題であった。
「時間は午後の授業が終わるまで、始め」
2枚目を解いてるころに教授が目の前の椅子に座った。ジークの回答を見るために椅子の前側少し盛り上がっているタイプ。ジークと逆三角形がダイレクトに繋がった
それからのジークは、抑えつつも、うれしさのあまりペースが上がった。すごい、5回生で中央学科でこれだけできるなんて。
半分以上は卒業試験の内容。残りは20回生以上の内容。残り1割を切った時残り時間はあと一時限分以上ある。完璧。合格ね。
こうなったら是が日にでも魔法治癒士、治癒士、魔法薬剤調剤士の治癒3種の免許を取らせたい。中央学科初の一次試験突破者。十分行ける。
ちなみにジークはランカーになるので、本格的な治癒の勉強がしたかっただけ。とは言えない状況に追い込まれる。
試験と視線が終わった。ガーターの奥の透けて見える白。眼福だったぁ。さて試験結果は後日と思っていたジーク。それも採点もせずに
「合格」と判定され
「明日の空き時限から来なさい。学年は実際と合わせるから、こっちでも基準点以下なら中央学科も退学ですからね」
そこは笑顔で乗り切る男。この時は結構ショックでいつも以上の超極上笑顔、きついこと言われているのに
「頑張ります」
そしてとどめを刺したのが
「教授みたいにきれいな人に教わりたいから」
なにを?声もいつも以上に透き通る美声。
「私が守ってあげる。少し厳しい時もあるけど、全ては私に任せなさい。治癒学部は必ず卒業させる」
教授の声を聴きビビるジークであった。
この後のジークたちの生活は激変する。時限間の移動は身体強化必須。建物の屋上を移動する姿は風物詩に。
授業ではバチサレム高等学園名物(中央学科のみ)サイクル論文というものがある。論文によって個人でやることもあれば、3人以上の人数で議論し論文を作成しろというものもある。また内容も魔道具の未来についてとか、政治的権利についてとか。16学年の時の論文はひどかった。「今世界にある危機と、それを防ぐ方法を論文にまとめよ。グループ討議とする」こうなるといつものメンバーになる。ジーク、シャル、コンスタン
アズテックの4人。なぜかと言われると4人は浮いてる。特に男3人。他のグループに混ぜてと言ってもOKされたことはない。
誰かに聞いたが俺たちといると劣等感に苛まれるそうだ。その点シャルは明るさからかちょいちょい他のグループに呼ばれることがある。
この時も「今回シャルは私たちの~」と言ってさらわれていった。政治に強いシャルがいないのはこの議題厳しいな。ついに提出期限が迫り半ば思い付きの案を二人に説明し、修正点を加えて最後にこう付けた。最低でもバチサレム国家予算15年分以上の投資が必要である。
この論文が僕たちを長い時間苦しめることになろうとは、その時の僕たちは思いもしなかった。
論文の事を片付けて治癒学科の課外授業に参加する。むしろ、課外授業の方が大事な感じがすることが多い。周囲も「課外授業変わったよね」「前は実践実践だったけど、すごく説明が増えた。」「そうよね、時間的にゆとりあるから教授も質問しっかり答えてくれる。」「時間ないからこの教科書の何ページ中心に読む。だもんな。」「でも、特に課外授業だけど教授楽しそう。」「でもいいじゃん、こっちもやる気でるし」などと諸生徒にも課外授業は好評だった
この課外授業はもちろんジークのために組まれてる。授業に参加できない時間のあるジークのために、その単位を履修したという小テスト用の問題、それの対策が主であった。
最もジークは学科については無敵なため実技にほぼ全力を費やしいていた。
内心で、首席教授ありがとうございます。でも、ごめんなさいの日々だった。
こういう教授のもと、ジークはありえないことに。治癒3種とも呼ばれる魔術治癒法、治癒術法、魔術調剤薬剤師の受験資格を得た。
試験は3回まで受けられる。3回で駄目だと再度受験資格を得ても2度と受験はできない。
ジークは177才で資格を得た。同級生の中では最後。しかし仕方ないこと。実習時間が足りなかった。本来なら卒業まで頑張っても無理だった。
それを権力を使って授業時間の内容を変更してまで時間を可能な限り確保した。しかも、生徒には時系列的にわかりやすいとの評判付きで。だから皆内容の改善と思っていた。
おかげで、ジーク本人自身は不正なく受験資格を得た。教授に相談したら「男なら迷わず行きなさい!」との励ましに1か月後の試験を目指す。
100歳半ばの少女のような気持ちで落ち着かない。今日は試験の発表日。試験会場になった首都中央治癒院で発表される。
「帰ってこない」そう思った瞬間ノックの音、そして美しい声でジークです。ジークが入ってくる。真っ直ぐ目を見て
「合格しました」
ほっと胸をなでおろす。そしてジークが衝撃の告白をする。
「合格手続きの後、中央治癒院の副院長に呼ばれて、二次研修を中央治癒院でやってみる気はないか、と」
ぎゅっとジークを抱きしめて
「自信をもって、あそこにスカウトされることはめったにないことよ。うちの卒業生でもね」
今後について選択肢ができてしまったジークは仲間に相談する。
「治癒3種の1次試験に合格した。それで、中央治癒院から実習をうちでと誘われた。早くランカーになりたい。でも、治癒3種も魅力的なんだ。
どうするのがベストと思う?」
シャルは
「いい話よ。将来はランカーでも正規の治癒士はどこでも重宝される。ましてや、あそこの出身者となれば余計に。」
コンスタンはこう言う
「せっかくの話だランカーになるのが30年くらい遅れても、鉄の5からスタートだ。焦る必要はないだろう。」
この言葉が決定的になって、卒業後は研修師として最低30年最大80年首都中央治癒院で研修することを決意し、その方向で進路が決まった。
結局、最後まで身体強化フル、中央学科と他のそれぞれの学科を行き来していた・・・最終日まで。燃え尽きて真っ白。
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