第4話 入試はやっぱりお約束

さて、いよいよ都市です。やはり450万人の住む街キシリム。大きい。

建物の平均の高さは15階くらいか。でも、地球とは違って鉄筋ではなく強力な魔物由来の接着剤を使用しているとか。ちなみに、建物の外壁のほとんどが石造り。あの接着剤、そのうち作ろうと考えたジークだった。

ルーチェが手配してくれた宿に向かう。高等学園の試験中も泊まる宿。ルーチェが道案内する。そして着きました超高級ホテル。

えっ、「ここ?」「はい、料金も相場を外していませんしこの付近では一番の宿です」それはそうでしょう、明らかに超高級の匂いが・・・

あきらめたジークは宿というよりホテルに入る。ジークが入った瞬間ざわざわしていたロビーが「しん」と静まる。

まだ伸びるであろうが均整の取れた肉体、ただ歩くという行為だけで優美な所作、そして明らかに名工の作と分かる軽量の防具。

その防具さえ一体化させるほどの上下の服。そこに、絶世の美形。「男性にでも絶世の美形っていたのか」とつぶやくロビーの客。

何か変なロビーを気にしつつフロントに向かう。フロント嬢の前に立つも声をかけてくれない。ジークは意を決し「あの、すみません」と言葉が出るのは元日本人の潜在的何かか。とにかく声をかけ待つジーク。声を掛けられハッと我に返るフロント嬢。テキパキ仕事を始める。

「ご予約はございますか?」「はい、ジークナイト・マジェストで予約していると聞いています。」台帳端末を確認したフロント嬢はキラキラした笑顔で

「はい、ご予約を確認いたしました。恐れ入りますが本人確認できるカードの提示を。あと魔力を通していただけますか?」「分かりました」

素直にカードを出し、魔力を通すジーク。確認をしたフロント嬢から部屋の鍵を渡され、お部屋は19階の1903号室になります。

この時ジークは19階と聞いてテンションが上がっていた。そのため様々な偽装が甘くなってしまった。4人の契約精霊すら注意するどころかもう、恋する乙女状態。こんなジークに悩殺3連コンボを決められたフロント嬢が腰砕けになり足元に水たまりを作ったのはジークのせいである。


ホテルの部屋。一人部屋でよかろうに準備されていたのはセミスイート。この部屋になったのはその景観。昼間は都会の活力。夕方は徐々に夜へ移ろいゆく街の表情の移り変わり、夜はずばり夜景。これだけの美しい光のコラボレーションは光の精霊であるルーチェすらめったに見たことがないという。

そして朝、街とかを光で塗りつぶしつつやがて光に包まれる。

なるほど、光の精霊のルーチェに頼んだからこの部屋指定になったのか。

ルーチェの選んだ部屋の居心地はよく、受験勉強も頑張ってみたのだが、問題を見る度検索されて答えが出てしまう。しかも、オフにはできない。満点確定、勉強の意味なし。

あきらめたジークは、当日迷子にならないように試験会場の下見に出かけた。フロントで試験会場の建物名告げて教えてもらうとホテルの向かいだった。ルーチェ凄すぎないかと思うジークだった。

結局あきらめの境地のジークは、近くのファッションストリートとかを別のフロント嬢に聞き、ここで悩殺の3連コンボ、被害者が増える。

この世界に生まれ変わって初めての歓楽街、ジークはまた浮かれている。4人の契約精霊はストッパーの役割を果たしていない。

ジークはストリートに入った時から圧倒的な存在感を放っていた。別にやろうとしたわけでなく、あくまで浮かれてであった。

その存在の美しさに男女とも絶句し、女性は完全にメロメロ状態。自分の彼女とかがメロメロにされた男たちはメラメラ燃えている

周囲からその一挙手一投足を観察されているが、浮かれているので気にしない。しかし、周囲の反応は違った。男性はなよなよした動きをする、こいつは弱いと感じた。

女性はその動き自体が芸術。人とはそこまで美しく動けるのか。それを見てしまうと自分の彼が野蛮人に見える。彼(ジーク)を見てしまうとどうしても比べてしまう

1人のまだ少年という存在でそのストリートは修羅場が続発する。ジークはいろいろ店を見て回り服などを買いため、周囲の女性を魅惑(無自覚)して回り知らない間に両手両足分を超える敵を作っており、ストリートを出る前の空き店舗のところで囲まれた。

「何か御用でしょうか?」「お前のせいで俺の女が俺の事野蛮だと言って、動作とか直さないと会わない。どういうことだ!?」何のことでしょう?

「お前が美形すぎて、あなたなんか3流ねって言われて、あげくの果てに、バイバイだと。どうしてくれるんだ!」そちらでお話合いしてください。

「お前が・・・それでさようならだぞ!どうしてくれる(たくさん)ちらりと女性たちを見る。ほほを染めてうつむく。

ここで男性陣の我慢の限界が来た。「お前、俺たちとの話中に女の子ナンパしてんじゃねぇ!我慢できん、やるぞ。」剣を抜く。

女の子の集団はまさか自分の彼氏が大多数で一人を相手にしようとすることが信じられなかった。

それなりに様になってるが鉄の下位くらいか。他を見ても大した実力者はいない。魔力も微々たるもの。大したことはない。

これは体術の手加減の出番だな。最初の攻撃を相手に譲る。5人ほどが先行しに来たしかし攻撃が「遅い」次のグループもダメ。

周辺が騒がしくなった。厄介ごとはご免。ここは一気に決める。ほんの2秒。20人を超える男たちが地に這うまでの時間。残りがいないのを確認。

誰かが衛兵に通報したようだ。では、この辺で退場しよう。ストリートの女の子に投げキッスを送って、光学迷彩で姿を消す。そしてゆったり現場から去る

この後、数か所の若者が集まる繁華街で同様の事件があり特別警戒態勢が敷かれていたが、元凶は入試のため繁華街どころではなくなっていた。


入試の時が来た。ジークが目指す高等学園は「バチサレム国立バチサレム高等学園」であり、聖王国にある「聖王国国立カルフィネ高等学園」とともに世界最高水準(ぶっちぎり)の2校。ライバル校であり友好校でもある。

入学できるのは「特別クラス」20名「通常クラス」200名の220名しかいない。ちなみに入学倍率は軽く300倍は超える。これは、外国の貴族の息子たちなどが箔を付けたいために入試を受ける。かなりの数が来るが入学者が2桁を超えたことはない。

それだけの人数の試験となると1か所で行うのは厳しいというより無理である。そこで国内各都市で第1次から第4次試験を行い1000人まで絞り込まれ、初めて学園内での試験になる。

最終受験者が決定した日、バチサレム高等学院の職員室ではある受験生ジークの話題が出ていた。「キシリムの受験生、4連続満点です」

「4連続満点は何年ぶりでしょう。確か1200年ほど前ですね」

「そんなになりますか」

「頭脳だけの子じゃなきゃいいのですが」

最後の難関、最終試験ここで筆記試験は難易度が格段に上がり、山を張って上手くいっていたような人間は撃沈する。

そして、体術、魔術の試験がある。試験官はランカーで言えば上位の金に相当する。まず勝てない・・・のが普通


最終試験の日。今日もいつものごとくぽわぽわしている。契約精霊もポヤポヤついてくる。

最終試験の筆記。すごくいやらしい問題があった。知識のあるジークでも一瞬首をひねったものだ。他の受験生は撃沈だろう。

次は体術。得意な戦い方で良いそうだ。最初から手の内を見せる必要はない。無難に直剣を選ぶ。試験官も直剣。同じ直剣何かできないかな?いたずら心に火が付いた。

試験が始まった。2合3合打ち合う。この剣速なら十分だね。試験官を煽るような動きを見せ試験官が大上段で振り下ろす状況を作った。

「やめろ!」「ジャニル!」

など怒声が飛び交うがジャニル試験官はもう止められない。そして、ここでジークが動く。試験官よりも速く

そして試験官の力と合わせて試験官の剣の切っ先からまっすぐ柄の部分まで切り裂いた。試験官の手には元は1本の剣、今は2本に分かれた剣。

会場は静まり返っている。どうしたものかジークは考え

「試験は続行でしょうか?」と聞いた。

「いや、これにて終了」とりあえず体術終了。

「どういうことだジャニル、あれは殺しに行っていただろう」

「挑発をされたんです。」

「挑発?試験でか?」

「軽いものだったんです受験生相手じゃ剣が鈍ってきてますね、と」

「それでなぜああなる。」

「最初は手加減していたんですが、全く当たらないどころか、切結びにもならない。そこで、全力で攻撃したんですが状況が変わらず、その時に絶好のチャンスが来た。そう思って全力の大上段を打ち下ろしました。」

「確認する。お前は全力で戦ったのだな。」

「はい・・・」

「分かった、今日はもう休め」

「はい・・・」

「しかし、ジャニルだぞ、俺とかならまだしも、国軍軍事競技会、体術、片手剣の部で2位だった男だぞ。それが最後の大上段もあれをやるために誘われた」軍関係者は剣を見る。

思い切り実技試験官の注目を浴びたジーク。皆ジャニルがどういう男かは知っている。最強を目指す男だ。こんな場面で全力を出して負けるなどありえないことだ。しかも、剣が折れたなら言い訳もできるが、切り裂かれた?実物を見に行った。ありえなかった。模擬剣同士でこうできるものか。

そんな情報が軍関係者の中で流れ、昨年の軍事競技会、戦闘魔術の部第2位の美しい女性に変わった。

「そこまでするか?」

「体術の話は聞いていますから」

「なるほど、それにしてもシャーラか。」

「初弾から全力。そう指示を出しています。」

「おいおい大丈夫か?体術特化かもしれんぞ。」

「まぁ大丈夫でしょう」

ジークはシャーラ試験官を見て、一番強いと判断した。体術の試験官は遊びの感じがあったけど、この人凄いマジだ。だからこそ遊びがいがある。さてどうするかを考えてる間に試験順番が来た・

なんかギャラリーがすごい。なぜでしょうと考えてたら、すると相手から大きな魔力を感じた。これは悪くない。制御が甘いけど。

水と、風の混合魔術だったので初見の魔術だったが、なんとか合わせて対消滅できた。対消滅。魔術師にとって屈辱。

相手の威力が大きい。相手の魔力制御が上手いという事、つまり明らかに格上に対消滅された場合はまだ納得できる。しかし相手は高等学園の受験生。しかも初見の技であるはずの、自分のオリジナル。自分の最強の技。それを完全に返された。

隊長の話を聞いて負ける危険性のある相手である事は多少なりとも覚悟はしていたが、これほど悔しいのは去年以上だ。

全く同じレベルで力を合わせるという事は、自分よりはるかに高い実力を持つことを意味する。

そして相殺された魔術の幻想的な輝きに学園の係りの女の子は目を輝かす。そして女の子はジークのその美形に心を揺さぶられる。

試験は終了と宣告された。当然だろうとジークは思った。あれで止めないならレベルはたかが知れてる。しかし、しっかり終了にした。実力者集団だな。ジークの感想だった。

「全力か?」

「はい、昨年の時よりも良い出来でした。」

「彼は間違いなく軍に入ればNo1です。それは今の時点でです。次元が違います」

「軍の最強の一角にそこまで言わせるか・・・」思案に沈んだ。

試験が終わった。結果を郵送なんてしてくれないから、合格不合格関係なく学園に行く。ジークは実技で遊びすぎたことを心配していた。

加点か、減点か。はてさてそれ次第で合否は微妙になる「遊ぶんじゃなかった」自己責任という言葉、後悔先に立たずという言葉も思い出さなかった。知識にはあるけどどんな時に使えばいいか分からないことも多い。意外と、初歩的なことで。


その合格発表の2日前すべての採点を2度行ったとき、ジークの答案を採点していた教師に視線が集まる。1回目の採点では満点であった。

2回目の採点で満点だと実に1億1500万年ぶりになる。そして教師は告げた「満点です」うぉぉぉ!!職員室に歓声が上がる。歴史的瞬間に立ち会った喜び。

学園に着く。入り口の奥に掲示板がある。掲示板付近で騒ぎになってる。「信じられねぇ」「うあぁすごいなぁ」など感嘆の言葉ばかり。

よく見ると受験番号の下に数字が書いてある。それが得点なのだろう。上位20人は時別クラスだからか発表用紙が大きい。

そしてベスト5はより大きく、そして主席はベスト5の10倍くらい大きく番号が書かれ、満点合格おめでとうと書かれていた。もちろんジークの番号である。

合格者はこちら。と書かれておりそちらのテーブルに向かう。生徒会の役員ぽい可愛い女子生徒が受付していた。

「番号と、名前を教えて」可愛い顔に似合わずぶっきらぼうな言葉遣いだが、200人以上一人で対応するみたいだ。疲れもするだろう。

満点合格で機嫌の良いジークはストッパーが外れている状態で「721番ジークナイト・マジェストです」「先輩お疲れ様です。」

来た!!!ジークの3連コンボ。そばにいた女子生徒もKO。目の前で炸裂された女子生徒は完全に堕ちた。人生で経験するかどうかのまで堕ちた

でも、受付の人が倒れてしまったので困り、近くの上級性に助けを求めた。すると、女性の上級性でテキパキと処理と説明してくれた。

手際の良さに思わず「手際良いですね。どうもありがとうございました」ここでも炸裂!!!ジークの3連コンボ。しかしこの少女は平気なようだ。

この女子生徒が平気だったわけではない。誰もいなければさけんでいた。その証拠に両足のストッキングはビチョビチョだった。

あれが満点の、とあちこちで言われながら学園内を探索して回る、この学園は全寮制、途中学生寮を見る。一般と特別の差に愕然とすることになる。

一般寮は4人部屋の相部屋式の寮、特別クラスは個室で広さは4人部屋の3部屋分リビングとベッドルームも分かれている。トイレもシャワールームも専用

そして何より待遇の違いを感じたのは門限。通常クラスは休みの前の日、休みの日ともに門限19時。特別クラスは休みの前日門限0時休みの日23時。この差は大きい。

その他にもいろいろ違うそうだが、入学までの楽しみにした方がいいよ。「ミスター満点君」この呼ばれ方は気に入らないジークであった。

他にも覗きたいところはたくさんあったが、良い時間になったので学園から出る事にした、ストリートに向かう。今度の場所は初めてである・

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