第3話 巣立ち
この世界に来て30年の月日が流れようとしている。魔力制御、身体的能力の制限、現在の地上の状況。主にこの3つについて学んだ。
座学はともかく、身体と魔力の制御ができるようになったのは20年が過ぎたあたり。それまでは「これくらいに」とやって動いているうちに威力がバラバラになってしまう。そこで出力をコントロールしやすい方法でレベル制を採用した。攻撃力が制御、固定できれば成功。
ここまで20年かけたことに頭を抱えて羞恥に悶えるものが一人。
しかしレベル制の効果は抜群だったが、問題もあった。レベル1で精霊王には少し及ばない程度。史上最強の人間が100万人いても瞬殺できる。
最強種の属性竜をデコピンで倒せるレベルまでが下げる限界。魔力も似たようなもの。
あとは体術で教えてもらう手加減を、魔術にも生かせれば先の展望が開ける。
しかし手加減の習得も5年以上かかった。人の範疇にまで己の力を制御するのにレベル1の下にもう一つレベル制の設定をした。手加減を習得できたおかげである。しかし時間がかかりすぎる。己の才能のなさに嘆くジークであった。
とはいえ人の範疇とはいえ、通常の人の範疇ではない。
世界に100人といないランカーギルド最高峰黒のランカー。この人たちでもかなり強い。人類最強の集団、個々もまた人類最強。しかしジークはこのランクの人間をレベル1のレベル1で楽に100人倒せる。武術のみ、魔術のみなどの縛りが入っても結果は変わらない。
結局下のランク制は250万まで細分化された。とはいえ強大な力。1000万分の1の250万分の1、楽に人類最強。今後はどこまで手加減に磨きをかけるか。下積み時代はそれにかかってる?
30年あっという間に過ぎていった、ジークは感慨深げにそう思っていた。
今日はジークの送別会。ジークは明日この精霊王の領域から旅立つことになる。
「ジーク、本当にバチサレムでいいのか?聖王国なら精霊王のお告げで色々便宜図れるぞ」
「そう聞いたから聖王国をやめたというのもあります。そうすると貴族制以外の国ってバチサレムだけじゃないですか。」
「貴族はだめか?公爵でもなんでも爵位位いくらでもなんとかなるぞ」
「いやぁ、貴族制の国に魅力的な国があれば話も変わりますが、今の貴族制の国はないですね」
変なのに絡まれても200.万分の1、状況によって100分の1までだよ。それ以上は私たちも対応しきれないかもしれないから、いいね」
「あー、最後までこれかぁ・・・」・・・
いよいよジークの旅立ち。完全に堕ちてる(自覚無し)精霊王。そして2000人は下らない堕ちてる中級上級精霊。
彼女たちが見送る中、光の契約精霊ルーチェ・雷の契約精霊フルミニス・風の契約精霊アウステル・水の契約精霊エメローネと共に旅立つ。
アウステルの風の魔術を使いジークを地上に送り届け、他の3人の契約精霊とジークのそばに付き従っていく。
「30年ありがとう。ここには来られないと思うけど会いに来てほしいな。」思い切りのスマイル、感謝に、制御してない魅惑のボイス。
中級と上級の一部が腰砕け。精霊王たち、崩れてないのも部下の前ではという自制心。本当は中身が堕ちているから無意味な抵抗だが。
精霊王たちがジークにご執心なのは皆知っていることである。知らぬは本人ばかりなり。
アウステルが魔術を発動し始めた。これで最後じゃない。ジークは笑顔で手を振り魔術と共に去って行った。
「あっけなかった」「そんなものと言えばそんなものだが」「ジークが来られないならこちらからすればいいのよ」「悪戯はだめよ?」「わかってるわよ}
アウステルが魔術を解いた。着いた場所はバチサレムの北部にあるキシリムという都市。バチサレムでも3番目の規模で人口も450万人を誇る。
この土地の特徴は世界に10か所ある大森林の中でも唯一大森林同士が密着していることであり、2つの大森林は3大難関大森林とされている。
ここにある大森林がもう一つと含め3大難関大森林と呼ばれるのは、まだ未踏破の大森林が残り3つだけになってから8000万年は過ぎている。
その間も自らが英雄になるため、毎日多くの男女が森に挑む。このように、森に挑んだり、依頼の魔物を刈ったり。以来の植物を採取したり
ランクが低いと、安全を考慮して街中の雑用的な依頼しかやらせてもらえない・。
このランクなどを決め、依頼主との調整をして依頼を受ける人間を斡旋する所謂ギルド、ランカーギルドと呼ばれる。
そしてこういう活動をするのがランカー。ランクは・紙・葉・木・石・鉄・銅・銀・金・黒・となる
ランカーギルドと呼ぶのはもう一つのギルド商業ギルドと区別されるためだ。
この世界には約30億人の人間がいる。そのうち5億人弱がランカーギルドに登録している。すかし、ランカーとして生計を立てているのは
そのうちの3億5千万人ほどである。それでも、人口の1割。凄まじい比率。登録最少年齢は120才。定年はない。これは、強さによりキープの持続年齢
が違うからである。それはすなわち寿命の違いでもある。1500才からというのは一般人。なかに、魔力を大量に保持できる人がいる。
一般には魔力量が多いと言われているが、こういう人は3000才、5000才とピーク状態のまま生きる人がいる。これが定年のない理由。
これだけランカー人口が多いということは、各国産業の発展が遅れているのだろう。そう思いながら歩くこと30分ちょい。でかい壁に行き当たる。
壁には通り道があり、入り口で検問が行われていた。途中から街道に出たが、舗装の質はあまりよくないけど、地球のそれとあまり違わないらしい。
ましてや走っているのがまさに地球でも走っている乗用車やトラックも走っている。知識では知っていたけど実際に見ると何か違和感が。
音もさせず走る魔導車というが何十台も追い抜いていき、またその数だけすれ違う。そんな道を歩く少年。地球なら気にするかもしれないがここは異世界。ランカーが狩に出る時は歩きが基本。したがって少年が狩りの帰りとだれも疑わない。ただし正門の担当者以外は。
正門を出る時は国民カード、ランカーはランカーカード、商業ギルドは商業ギルドカードのいずれかを提示し、次のチェック時は必ず出た時のカードを出す
もし別のカードでごまかそうとしても、出る時に通す魔力が優先、他のカードは都市などに入っている状態だから、チェック時に入る魔力を流しても反応しない。他人のカードの場合はカードに魔力を通すことでも反応しない。。色々と機能はあるが預貯金はできない。
国民カードで預貯金した場合、国がが破産すればすべて失う。したがってランカーを除いてほとんどの人が商業ギルドに預貯金をする。
一般的に世界200か国あると言われるこの世界全ての国と条約を結び経済活動をしている商業ギルドを一番信用している。
さて、入り口でジークの出したカードは、バチサレム共和国の国民カード
「ランカーじゃないのか、何しに出ていた。」「狩りで魔術の練習を。もうすぐ受験なので」「おお、そういう季節か、頑張れよ」
「じゃ、カードに魔力を通して」「次は、カードを貸してくれ」機械に吸い込まれ異常なく出てきた。「よし、いいぞ。魔導車に気を付けろ」
「ありがとうございました」ジーク必殺3連コンボもだいぶ性能を落としてるため、おじさんには効かない。しかし若い女性なら間違いなくときめく
で、ジークのカードはどうしたか。ある日の夜中キシリム市役所に3人の上級精霊が忍び込み、ジークの偽の情報を書き込み記録、それをもとに国民カードを作成。キシリムから出たことにして作成完了。という具合で作られた。精霊さん有能。
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