雨宿り
エアコン eakon
第1話
「早く来いよ、置いていくぞ」
陸上部のエースが後ろを振り返りながら声をかけてくる。
「少しは手加減を覚えてくれよ」
弱気な俺は声を張り上げ懇願する。
「なんか楽しくなってきたな、とりあえず曲がったとこのコンビニまで行くわ」
俺を置いていきエースは俺を置いてコンビニに避難することに決めたようだ。
目当ては雨宿りついでに雨に打たれた体を温める揚げ物かカップ麺か、まあそんなところだろう。
俺も遅れてコンビニに到着すると一足先に到着していたエースは
「遅かったなぁ、先に食べてるぞ」
と唐揚げらしき何かを口に咥えながら話しかけてくる。この男には友人に対する罪悪感の持ち合わせがないようだ。
「しっかしとんだ通り雨にあったな、でも汗が流されてシャワー代わりにはちょうどいいかもな」
豪快に笑いながら可笑しなことを言うやつだ。この男はいつもそうだ。こんな憂鬱になる雨すら吹き飛ばしてしまいそうな気概を感じさせる。
「俺の分何かある?」
「そこまで気が回らなかったわ、悪い」
先程の出来事のお詫び的な何かに期待したのだがあては外れたようだ。
悪くもないのに謝ってくる。性格が似ても似つかないエースと付き合いが長いのは性格の噛み合い、つまり相性がいいのだろうな思う。
それから俺たちは雨音を携え時間を忘れ日頃の些細な愚痴を言い合い笑い合う。担任のHRは帰りが遅くなるとか、朝礼の校長の話は長いだとかそんなことだ。
「こんなに駄弁るんだったら最初からファミレスとかカラオケにでも行くんだったな」
「高校生が放課後に行きそうなところばかりだな、俺達も高校生だけど」
「だってさドリンクバー飲みたくね? メロンソーダとオレンジジュース混ぜようぜ」
「高校生というより小学生だな」
俺はエースならやりかねないと思い苦笑してしまう。
「雨も小降りになってきたしそろそろ帰るか」
「じゃああそこの信号まで競走な」
「今度は少しハンデくれよ」
パチャンと水溜りを踏み上げ俺達は夕暮れを背に走り出す。
雨宿り エアコン eakon @eakon0302
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