第2話 新しいクラスはいつもドキドキで


 入学式を終えた俺は自分のクラスになる教室へ向かった。廊下を歩いていると前で凛が新しく出来た友達と楽しそうに話している。


 凛だけじゃない。周りを見てみると趣味や入る部活について話してる人が多い。凛とは別のクラスになったので俺は話す人がいなかった。ぼっちというやつだ。


 ヤバイ。このままだとグループが固定されてぼっちになってしまう。漫画でみたモテモテ生活からかけ離れてしまう。


 そう思った俺は近くに居た地味目の人間に話しかけた。陰キャであれば話しかけやすい。



「よう。部活、何部に入るの」


「俺か?俺はサッカー部に入るよ。そっちは?」


 やっちまった。サッカー部は陽キャの巣窟だ。こいつ地味な顔して俺を油断させやがった。

 

「俺はまだ決めてなくて……」


 俺の声が一気に小さくなる。さっきの威勢はどうした俺!


「やべーじゃん。早く決めないと先生に怒られるよ」


「それはヤバイ」


「俺と一緒にサッカー部入れば?サッカー楽しいよ?」


「運動部はちょっとね」


「なんで?」


「運動音痴だから」


 俺は一刻も早く陽キャから離れたくて話を終えようとした。なるべく話を区切りたい。


「そういえば、名前なんていうの?」


「時枝晴彦」


「俺は筒井龍馬。よろしく」


「よろしく」


「なぁクラスに面白いやついるかなー?」


 こいつ、コミュ力最強パターン系男子だ。沈黙が訪れない。


 俺はガックリとした。こういうタイプはしばらく俺のことをほっといてくれえないだろう。


「どうだろう。さっきヤンキーはいたけど」


「まさか。ヤンキーがこの高校に入れるわけないでしょ」


「いや、それ絵は俺も思った」


「おい。何話してんだ?」


「「うわぁ」」


 俺たちは後ろを振り向くとそこには噂のヤンキーがいた。


「本当にヤンキーがいる!」


「なめてんのか。お前」


 怖い。この地味なやつ怖い。ヤンキーに喧嘩売ってるよ。


「ヤンキー君の名前は?」


「なんでオメーに教えなきゃなんねーんだよ」


「いいじゃん。ヤンキー君面白そうだし友達になりたい。俺は筒井龍馬」


 ヤンキーに面白そうって言うのは殺されるんじゃないか。


「須藤海斗」


 答えてくれるんだ。


「お前さっき隣にいたよな。名前なんていうんだよ」


「あっ。時枝晴彦」


「さっきは抜け出そうとか言って悪いな。晴彦はそんなタイプじゃないもんな」


「いや、別に……」


 こっちに振ってくるとは思わなかった。そして意外と優しくて親しみやすい。


 俺は意外とすぐに友達が出来た。陽キャと陰キャとヤンキーという謎メンツだが。







 教室に着くと黒板に自分の席が書いてある。俺の席は一番後ろで、その前に龍馬がいた。


「3人とも席近いじゃん。ラッキー」


「龍馬と隣かよ。晴彦変われよ」


「やだよ。俺も一番後ろがいいし」


 俺の隣はまだ咳についていなかった。出来れば女の子がいい。そして、俺に一目惚れする女の子がベストだ。




「海斗は部活決まってるの?」


 俺たちはHRが始まるまで暇なので喋っていた。


「ボクシング部に入る予定」


「「あー、っぽい」」


 海斗は身長も高く、見た感じ筋肉もありそうだしボクシング部は似合ってる。


「お前らは何部に入るんだよ」


「俺はサッカー部だよ」


「晴彦は?」


「俺はまだ決めてない」


「ふーん」


 ふーんって。全く興味がないじゃん。





「ほらー。席につきなさーい」


 教室に担任が入ってくると周りで喋っていた人たちは続々と席に着いた。そして隣には祈りが通じたのか、ショートカットで少し茶色がかった髪の可愛い女の子が座った。


「よろしくね。お隣さん」


「あっ。よろしく」


 見た目可愛い、声も可愛い。最強じゃないか。


「じゃあ出席とるぞー」


 俺の頭の中はどうやってこの可愛い女の子と仲良くなろうかを考えていた。


 まず、何から話せば興味を持ってくれるだろう。趣味とかか?それじゃあテレビで見た合コンみたくなってしまう。俺はテンパって本屋ネットで予習してきた内容をすっかり忘れていた。




「世良雫」


「はい」


 俺がどうやって話しかけようか迷っていると隣の子が呼ばれた。


 世良雫ちゃんって言うのか。これは覚えておこう。絶対忘れてはいけない名前だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る