【幕間】アリーシャの生い立ち
――ここは南方にある大陸世界樹ユグドラシルの聖地の新緑の地。
この村ではエルフ族とハーフエルフしか在住を許可されない。故に血が薄まった子供や他種族の在住は許されていない。
数千年まではハーフエルフですら居住の許可が出なかった。
ある時に魔物の侵攻があり一族は滅亡の危機を迎えていた。
だがしかし、ハーフエルフの女の子が所属する、世間でいう勇者パーティがたまたま村に居たため滅亡の危機を回避したと記されている。
エルフ族は長寿の種族だ。しかし、当時を知る人はもう生きてはいなかったが伝記と口伝により伝わっている。
【わが一族は勇者とハーフエルフの女性によって救われた】
と。
本来閉鎖的な場所であったが、交流はあった。
純粋なエルフ族は今でも他種族が来ることに嫌悪感を感じているが、時代の流れで取り残されるよりは良いと思っている。
何よりも世界樹ユグドラシルの守り人が居なくなるほうを恐れたのだ。
他種族と子を成し、出生率が上がったことが幸いした。
ただし―――ルールがあり、
【ハーフエルフは、守り人として任務につける勇者か、エルフ族以外の婚姻は許さない】と掟で決まっていた。
なぜなら、増えたとはいえ他種族の交配が進めば、エルフの血筋は途絶えてしまうのだ。
更に言えばハーフエルフはエルフよりも短命だ。しかし、繁殖率はエルフの比ではないぐらい高い。
本来なら他種族との交配は認められないが、掟によりエルフの血筋が途絶えることが無く、エルフの種族を着実に増やしていくことに成功していた。
どちらの血が色濃く出ているかは、成人の儀によって判明する。この儀式によってエルフ族、ハーフエルフ族、他種族と判別されてきた。
ここにある少女が居た。
名前はアリーシャ・エルグランド。ハーフエルフだ。
彼女も先祖に勇者の血をひき、生まれてきた子供だ。
両親は純粋とは言えなかったが、どちらもエルフの血が濃かった。
成人の儀でエルフ族と認められていた。
しかし、アリーシャはハーフエルフとして生まれてきた。先祖の遺伝子が色濃く出た結果だった。
ある時、族長から呼ばれていた。
「お前は先祖の血が色濃く出ている。今後はエルフ族以外の婚姻は認めない」
アリーシャは成人の儀に族長からそう言われていた。
アリーシャはそれはそれは怒りをあらわにした。
その後、数年にわたる何度かの交渉の末、一つ例外が認められたのだ。
それは【中央大陸にいる偉業を成し遂げた勇者との婚姻】だった。
――しかし、何度もお見合いを行ったが、アリーシャが認める人は一人もいなかった。
そして誰にも知られていない秘密があり、先祖のギフトである【魔眼持ち】だった。これにより相手の少し先の未来や、過去にどうゆう生活をしてきたかなど分かってしまうのだ。
――そう、会う人会う人の裏の部分まで見えたアリーシャは落胆した。
このままこの村に居ても望まない婚姻をさせられてしまう危機に苛まれてしまうと思ったため、単身村を飛び出し中央大陸へ渡ったのだ。
アリーシャ自身の身長はそこまで大きいほうではなかったので、村でも小柄の部類に属していた。中央大陸に初めて渡った時は、ここは巨人の街かとも思ったことがあった。ギフトを使いながら、余計ないざこざを事前に予知し、なるべく避けた。
しかし、魔法の適性は他のエルフたちに比べて圧倒的に無かった。もちろんエルフ基準であり、人間族から見れば一端程度はある。
ふと、たまたま見かけた剣術道場に赴き、剣の腕を磨くため入門することに。もちろん剣術道場以外にも他の道場を回ったが、持ち前の魔眼のおかげで師範などの指導者が自分に向いているのかを事前に察知できた。師範がアリーシャにとって良い人だった。むしろ恋に落ちていた。しかし、叶わぬ恋だった。師範には奥さんと子供がいたのだ。魔眼を使用したときには気が付いたが、最初はこの人なら安全かなと思ったのだが、日に日に恋心は募っていく。
ある時師範に打ち明けたのだ。
「師範、あたし、師範に恋をしてしまいました」
アリーシャは涙を浮かべながら師範に言うのだった。
しかし、師範は長い沈黙の後にこういうのだ。
「君はまだ若い。いろんな経験することもあるだろう。だが、悪いが――俺は君に応えることが出来ない。許してくれ」
そう師範に言われたのだ。
「…はい、――分かっていました。でも! 伝えたかったんです!」
魔眼の力は本物だった。師範は誠実な男だったのだ。
――その後、アリーシャは、剣術道場は免許皆伝を貰い、後にするのだった。
そしてアリーシャは思いつく。
(そうだ、冒険者をやりながら探せばいいんだ!)
安直な考えだったが、アリーシャには危機回避能力がある。この行動は特に問題ないと思った。
――――こうして、いくつか冒険者家業を続けるうちにエリナという女性からパーティに誘われるのだった。
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