ここに来るまでの出来事

 ――なぜ無人島に行こうと思ったのか?




 この集まりになったいきさつは、よく知らないが、

 発起人は夢野姫奈ゆめのぴいなという女の子だ。




 俺よりも若干身長が高く、とても明るく友好的なイメージといったところだ。






 姫奈ぴいなは、女子同士でつるむというよりも、男子に混じっていることが多いようだ。



 「くうとくん、楽しみだよね!」


 そう話しかけられたのだが、何が楽しみなのかわからない。

 なので「そうだね」と、だけ言っておく。




 ちなみに服装はちょっと変わっている。


 青色のキャミソールに10センチぐらいの桃色ミニスカートという服装。




 当然上下赤色の下着も見えているのだが、本人曰く水着だから見えても良いらしい。



 「くうと、誘ってよかっただろ?」


 そう言うのは俺を誘った友人の 宮下 皇帝みやしたしいざあ だ。




 用意した雑具のもろもろは皇帝しいざあが用意した物のようだ。




 無人島行くのに、なぜかタキシードっぽい服装をしている。




 家の近所に住んでいるという幼なじみというだけで、特に親しい友人というわけでもないのに、なぜ誘われたのかが分からない。




 どうやって用意したのか知らないが、集合時モーター付きのゴムボートが用意されていた。


 これで無人島へ行くようだ。




 無人島というのも、領土問題でそこそこ話題にあがる島のようで、本来勝手にいけばいろいろ問題があるのだが、当人たちはまったく気にしていないようだ。





 「おっしゃああああああああああああ、未開の島の探索だあああああ!」


 そこのテンションが高いのが、朝倉悠斗あさくらゆうとだ。




 ランニングに短パンという、虫取り少年を連想させるような恰好をしている。




 こんなメンツどうやっても目立つのは必至で、すれ違う人の視線が痛い。






「なぁ、皇帝しいざあ、このメンツ何の集まりだ?」


 思わず聞いてみた。




 「姫奈ぴいなちゃん、可愛いだろ? ――俺たちもやっと仲間になれるんだ!」


 何のことかわからない。




 「確かに可愛いとは思うが、しかし、あの刺激の強い恰好は何だ?」


 それもそうだ。

 俺の住んでる町は港町とはいえ、あの格好はいかがなものだと思う。



 海辺での格好と言えばおかしくはないが、集合前から着ているわけだ。



 「なんだくうと、――知らないのか?」


 皇帝しいざあはそういうが、何のことが分からない。




 話によると、姫奈ぴいなは卒業までにをやり遂げるために


 こうして何かの理由を作って集まってるらしい。




 今回の行き先が無人島というだけで、行き先は実際関係ないらしい。


 その先の目的のほうが重要っぽい。




 「まずは雰囲気が大事だと、焦ったら仕損じるから気をつけろよ」


 皇帝しいざあはそういうと、納得だけしておく。




 俺もそんな年頃だから興味がないわけじゃないが、あまりにも露骨すぎるからどうなんだと思うからである。






 こうして俺を含む4人は、ゴムボートに乗りモーターの電源を入れ、無人島に向けて走り出したのであった。






 その途中、他の男は姫奈ぴいなにひたすら媚を売ってる感じで話しかけている。


 ………全く、節操がないのか! お前らは……………。






 俺はやることがないので、オールを持ってボートの行き先の微調整をしている。

立ち位置的には下働きの船員だな。



 そうこうしてる内に砂浜に乗り上げ、無事に無人島と呼ばれる島に到着したのだ。




 サンサンと照り付ける太陽。



 ――暑い。



 その島は、本気で走れば30分かからずに、一周出来るぐらい程度の広さしかない。




 よく周りを見れば岩肌ばかりが目立つ島のようだが、島の中心に不思議と生い茂ってる森があるのだ。


 蚊とか居そうでやだな。虫よけスプレーは持ってきてないぞ。


 ……………もう帰りたい。


 何が悲しくてこんな暑い日に無人島に来てるんだ。


 皇帝しいざあが持ってきたクーラーボックスを捜索する。


 ……………お、カクテルあんじゃん。――あいつ、なんでこんなもの持ってきた?


  ――ああっもうやけだ、飲んでしまえ!


そう思ったので一気にそれを飲み干す。


 空き缶はゴミ箱にっと。に捨てておいた。



 そうこうしてたら遠くから姫奈ぴいなの呼ぶ声がするので、合流する。




 俺たち生い茂る森の中へ4人は入っていく。


 姫奈ぴいなは、なんかそわそわしながら先頭を歩いている。


 皇帝しいざあは、周りの森に何かを探すように姫奈について行ってる。


 悠斗ゆうとは、やたらハイテンションで全く落ち着きもなく、騒ぎながら時折道から脱線しつつも、なんとかはぐれずについて来ている。


 俺? 一番後ろから3人を観察ですよ。何があっても一目散に逃げれるようにな!




 突然、3人の足が止まった。


前を見ていなかった俺は、一番後ろに居た悠斗の背中にぶつかった。


アブねぇ、ちゃんと前を見ろよ、俺。



 ――目の前に、10歳ぐらいの女の子が仁王立ちで立ちはだかったのだ。

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