祈りで現す神々と





祈りで現す神。



 人々が信ずる神々を許容せず、

一柱の神を信ずる生物たち。


 人々は信ずる神々を否定し、

その滅亡を願う異教徒を「魔族」と呼び、

それらが信ずる神を邪神と呼ぶ。


 邪悪な神を信ずる信者が属する社会、

邪教は祈り現わした邪神の力を借り、

他の神々を信ずる生物を蹂躙す。


 故に邪教は世界の敵・悪の権化と周知され、

様々な社会から恐れられ、

敵視されている。




 神々を滅ぼさんと目論む邪教に対向する力。

 祈り現す神の姿は一本の剣。


 太古、最も多くの信仰を集めた邪神は、

異教徒の信者を滅ぼさんと現す。

 それを打ち倒した者、

それが持つ剣は、

狙われた神々の信者から、

一心に祈られ現した剣。

 邪神の身体を両断した様は、

伝説として語り継がれる。


 倒すべき敵が居るが故、

その神に価値はある。

 平和を望みながら、神を失わぬ為、

敵を望む実情に矛盾を抱える神主は、一人、苦悩する。




 神機シンキとは〝カミチカラ、現す機巧きこう〟の略称。


 抓み回しきれば、台に置かれた鍋を熱する火が灯る。

 入力が神へ送る言伝と成り、目印の神機に神が力を行使する。


 神機に仕組まれた神ノ印は神と繋がりを持たせる為、縁ある神社、その神主が手製。


 定期的に取り換える神ノ印が神社の収入源。


 神ノ印を求む者、神社へ来たれ。


 数多の集落に存在す、神社の支部、それを纏める総本山。




 太古、人々は火を起こす為、炎ノ神へ祈る神聖な儀式を行う。

 昔、獣を掃い、肉を熱し、闇を照らす火は、神が生む神聖な力。


 近代、人々は身近な火を神格化せず。

 今、人々は火を用いる為、炎ノ神へ祈る職業が存在す。

 調理、鍛冶、気球、炎の役割が増え、その目的に合わせた多様な性質を人々は求む。

 その実現には多くの祈りが必要。

 叶える為、神聖な儀式から仕事へ移り変わる事、必然。

 今も、祈りを神聖な儀式と捉える思想は残り、

祈りの対価に金銭を渡す神社に不信を抱く。

 それでも、文明を豊かに発展させ、

神々の力を全ての民へ浸透する今を、

否定する原理主義者に賛同する者は希少。


 朝昼晩の食事時、調理の重複は炎ノ神に負担を強いる。

 全ての者が火を用いる為、

神社に雇われた祈祷師きとうしたちは、

その時間、熱心に祈り炎ノ神を支える。


 炎ノ神に限らず、数多の神を支える祈祷師は、

飢えに苦しみ、居場所を求める、乞食に職場を与えた。


 人々が祈る訳、

心、富んだ者が貧しき者を救済す、慈悲、

飢えを満たさんと、餌を求む渇望。


 他の為、己が為、何方も神を支える祈りに違わない。

 故、神社は、社会を、神を、害さぬ願いに、祈りに、善悪を定義せず、歓迎す。




 常な需要なき神々に祈祷師は不要、

その時々、祈り恩恵を受ける故、

神社は無く、祠が点在す。




 雑念は祈りを劣化させ、妨げる。

 神の存在を確たる為、

神の姿、その想像を助ける像は、

彼方此方に点在し、

豊かな祈りを支える。





 日頃、神から受ける恩恵を意識し、

神や祈祷師の疲れを労う為、催される祭は、

普段、祈らぬ人々が祈祷師に代行し、祈る日。


 祈祷師に振る舞われる食事は嗜好品。


 社会により異なるが、

その資金は、税や募金で賄われる。


 頻度は三月に一度。


 多くの祈祷師はこの日を待つ望む。


 祈祷師が居る神ごとにある祭、

 三月に一度、程度なら、

毎日が祭に成らぬ。





 人々が繁栄し、祈る母数を増やす為、

人々を支え、文明を豊かにした神々は、

繁栄を望む人々から祈られる。


 相互の利害、その一致が共存を成り立たす。



 文明が発展し、祈らぬ物が増えぬ懸念、

人ノ世から邪神は学び、

文明の進歩を促さず、

信者の増やそうと人に劣る物共を従える。


 上等な神が下等な生物と共に歩む事、

それを邪神は屈辱と捉え、

人々と対等である神々を邪神は見下し、

神々を、堕ちた、愚か、と表す。


 色濃く在る事を望み、

邪神は全ての祈りを一身に受けようと、

他の神々、その信仰を壊さんと目論む。


 畏怖の念を抱き、鎮める祈りは、

服従の意思を示し、邪神の侵略を回避する方法の一つ。


 永遠なき生物は、神を現す為、この世に存在す。

 故、神を現す為、生物は祈らねば成らぬ。

 それを真理と見なし、暴力で祈りを強要す。

 その神は邪神と恐れられる万能ノ神。


 多大な祈りで現した万能ノ神に、

生物は圧倒される。

 生なき神に死は無く、

万能ノ神を引き裂いた剣ノ神も、

 滅するに至らず。

 邪神、封じる為、

人々は教典の抹消を試みる。

 多くの魔族を殺せど、滅亡に到らず、

邪教は幾度も復活す。





 神が為に人はあるか、人の為に神があるか、

その問いに満足できる答えは無く、

宝の無い宝探しに翻弄される。




 人口が増え、祈祷師の数が増え、

人ノ世の神々が強く成れど、

その力を人々の営みに使う神々が、

自由に振るう力は、増えず。


 色濃い存在感に満足し、

野望なき神々を邪神は見下す。


 祈りで得た大半の力を誇示し、

邪神は、他が神々の信徒を襲う。




 巨大樹に御する鷲獅子が縄張りは、

森林を囲む広大な草原。


 永遠とも思える時を飛び続け、

何者も居へ寄せ付けぬ鷲獅子が守る黄金。


 永遠を支える一柱の神。


 その神を現す祈りは、

柔らかな毛に覆われた一頭身の獣たち。


 祈る能しか持ち合わせぬ脆弱な森の民は、

祈り居を守り続ける。




 自覚なく祈り、災いを齎す神を現す事。

それは、人の眠りし時、現す神が有名。


 人が眠る時、無自覚に祈り、

神を現す方策は、眠りの質を下げ、

大きな社会問題を引き起こす。


 原因を特定する為、

被害者が持つ共通の知識から、

神の正体が探られ、

催眠の原因が取り除かれた。


 過去の出来事、

前例は、無自覚な祈りが神を現す、と、証明した。


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