《ゲーム》「ゾンビハンター」
新型コロナの影響でちょっと早い春休みに入った。
特に予定も無いし、バイトをしようにも多くの店が閉店の憂き目に遭っており、コンビニ等も接客素人の学生よりも、ある程度慣れた外国人の方がよほど役に立つらしく採用率が高いらしい。
そんなこんなで俺は最近暇を持て余している状態だ。
読書や映画鑑賞は粗方やりつくしてしまったし、他に趣味といえばTVゲームくらいだが、そちらも最近は刺激を感じられずに疎遠となってしまっていた。
とりあえず頭を使わずにサクッとできるゲームは無いかとゲームソフト棚を漁ってみる。
たまたま手に取ったのは「ゾンビハンター」という3人称視点のアクションシューティングゲームだった。
『ゾンビウイルスによって変異してしまった街で、徘徊するゾンビや物資を取り合う人間同士の戦いの果てに街からの脱出を目指すゲーム』だ。
以前は隠し要素などをコンプリートする程やり込んだゲームなのだが、極めたと感じた瞬間に冷めてしまいそのまま棚の肥やしになっていた。
最後に遊んで結構な時間が経つ。ゲーム中の謎や仕掛けなども良い感じで忘れているので、今なら新鮮な気持ちで遊べるだろう。
俺はゲーム機を起動させゲームのディスクを挿入した。
しばらくぶりの起動、ここでパッチのチェック等が自動的に行われ実行される。なんでもゲームのヴァージョンが変更され更新に少し時間がかかるらしい。
ここで焦っても良いことは何も無い。今のうちにトイレを済ませ、コーヒーを淹れて来たら丁度いいタイミングで更新が終了しゲームが始まった。
スタートしたはいいが何だか雰囲気が随分変わっている。以前は開始直後でも拳銃くらいは持っていたのだが、今は攻撃出来る装備を何も持っていない。アイテム欄にあるのは『不織布マスク』だけだ。
このご時世、ゲームの中でもマスクは必須になったらしい。ゾンビのうろつく街でマスクなど何の役に立つのか? 全くもって馬鹿馬鹿しい。客を舐めているとしか思えない。
そして敵として襲い掛かってくるゾンビも何かおかしい。以前の様に噛み付いたり掴みかかって来なくなり、ただ俺の(キャラ)の周りをふらふらと歩き囲い込もうとする。時々思い出したように「がぁっ!」と威嚇する様な声を俺にぶつけてくる。
なんだこれ? しばらく触ってないうちに妙なゲームになってんなぁ。
ゾンビが襲ってこないなら何が危険なのか、しばらく様子を観察する事にした。ヒマなので。
やがてキャラクターに何らかの変化の起きたアイコンがポップアップする。特に噛まれたりしていないのに何か起きたのだろうか?
ステータス画面を確認するとキャラクターの状態の所に「【感染】
するとキャラクターの体力はみるみる減っていき、10秒程で死んでしまった。
うわー、クソゲー……。
俺はゲーム機のスイッチを切り、マスクを付けて近くのコンビニに雑誌を買いに出たのだった。
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