《ホラー》新型ウイルスとの付き合い方

 大陸発祥の新型ウイルスが世界中に蔓延してから半年になる。全世界で数え切れない程の多くの人が亡くなっているそうだ。

 特効薬やワクチンは無く、各国は最優先で開発に取り掛かっている。


 この科学万能の時代に、まさか疫病で万単位の人々が命を落とすとは誰が考え得ただろうか?


 もう元の様な気軽に集まって飲み交わしたりする生活には戻れないだろう。

 軽い気持ちで出歩いて、自分がウイルスの餌食になってしまっては元も子もない。


 まぁ我が国は流行当初からの防疫や民間の衛生観念も手伝って、他国ほどの深刻な被害は出ていない。

 我が国民の日頃のモラルの高さに敬服する次第だ。そのおかげで私達もウイルス禍から逃れられている。


「お父さん、私達が行ってお婆ちゃん達は大丈夫なの?」

 助手席に座る娘が心配そうに尋ねる。


「大丈夫さ。それに私達と会えれば婆ちゃんもきっと喜んでくれるさ」

 その言葉に嘘はない。母は孫と… 私の娘と会えるのが何よりも楽しみだと常々語っていたのだから。


 だが私の本音を言わせてもらえば『東京に閉じ込められるのはもうウンザリだ』と言ったところか。


 ウイルスに塗れた都会は地獄だ。小さな子供連れではとても生きていけない。だから田舎に逃げ出す。

 私達が生きる為だ。誰にも文句は言わせない。



 そうだ、あんな『ゾンビウイルス』だらけで、人が生きながら食われていく世界になんて居られるか。


 既に東京だけで500万人が死んだと、いや食われたと見られているらしい…。

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