プルトニウム捜索編

第69話 駆逐戦車マルズバーン

 ガタガタと揺れている。そして、シュイーンというタービン音と、キャラキャラと軋む金属音が聞こえる。


 私、どうしたんだっけ。こんなに騒音が酷い乗り物って何? どうしてこんな車両に乗ってるんだ。


 私と紅葉もみじは遺失物捜査チーム赤緑レッドグリーン。これは私たちの名前をもじった「赤いきつねと緑のたぬき」の省略形だ。私たちはプルトニウムを盗んだ怪盗レッドフォックスを追い、工場跡地へと侵入した。そこで出会ったのはレッドフォックスの一員であるコスプレ少女のビアンカと、彼女の部下であるAIが実体化した少年ミニスターだった。そして紅葉もレッドフォックスの一員であり、その正体は火星連邦の首都オリンポス市長のトリニティだった。彼らが収集した情報から、真犯人は半グレ集団のグラディエーターで、裏にいたのはアヤベ副市長である事が判明した。その目的はトリニティをテロリストに仕立てて失脚させる事だった。そしてその後、私はトリニティにプロポーズされた……ような気がする。それで舞い上がって……その後の事は覚えてない。しかし、アレは本当にプロポーズだったのだろうか。冷静に振り返ってみると……怪しい。


 私は目を開いた。


 何とヘルメットを被せられており、顔面のシールドはARディスプレイだった。正面は車外の映像が投影されており、視線を下げると車内の機器が見えた。


みどりちゃん目覚めたね。現在、市外の目的地に急行しています」


 紅葉もみじの声だ。それはそうなんだろうが、この車両は何なんだ?


「ああ、戸惑ってますね。ミニスター。翠ちゃんに説明を」

「了解」


 突然、視界の右側にあの白人の少年が現れて説明を始めた。


「こんにちは、翠さま。こちらの車両はYBSK-02駆逐戦車マルズバーン。火星連邦軍最強の戦闘車両となります。翠さまはこちらの戦車に砲手として搭乗されております」


 私……何で戦車に乗ってんの。砲手って何よ。そんでもって、プルトニウム盗んだ奴らの所に、戦車で殴り込みをかけるの?


 バラ色のブライダルドリームから目覚めた私は、何故か戦場へ向かう新兵の気分になっていた。


 これって超ブルーだよな。多分、全人類共通の感覚だ。

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