第47話 秋人奪還計画の策定
「アザミ、監視カメラ映像を消去しろ。ケイトはその仏を冷凍庫の奥に隠せ。早くしろ」
「ふん。殺しちまったら後が面倒なんだよ、新人君」
「すみません。気をつけます」
あの三人組は手際が良かった。ケイトと呼ばれた若い男は遺体を倉庫奥に設置してある冷凍庫に隠し、女性であろうアザミは二つの携帯端末を使って何やら操作を始めた。
「おお! この人たち手際がいいね」
ジュリーさんはしきりに感心していた。
「おや? サーバーから該当映像が消去されました。付近のカメラも停止。本当に手際がいいです。望遠映像に切り替えます」
遠方からの映像を拡大表示に切り替えた。これだと死角が多くなるんだけど仕方がない。
「監視カメラのデータ、消去されたの?」
「大丈夫、コピーしてますから」
「さすがノエルちゃんだね。しかし、この人たち何者なのかな?」
「多分、諜報のプロです。彼らが本命である事に間違いありません。きっと、あの二人組と接触します」
「なるほど。ストライクから支援に来れるのはあと6時間だね。それまで待っててくれたらいいんだけど」
ああ、そうだった。美冬姉さまたちは戦争に巻き込まれたんだ。到着するまで時間がかかるのは仕方がない。そして、6時間後に来れる保証もない。
「普通に考えたら深夜に事を起こすと思うんですけど、さっきやらかしちゃいましたからね。急ぐんじゃないかな」
「そうか。殺人がバレる前に用事を済ませちゃおうって話だね」
「多分そう」
私の返事にジュリーさんも腕組みをして困り顔をしてる。そして私に質問してきた。
「どうするの?」
この人、やっぱり能天気なんだ。臨機応変に対応策を練るとか、苦手分野なんだろうな。ストライク号からの支援が期待できないなら、他の方法を考えなくてはいけない。
「ジュリーさんは監視の継続をお願いします。私はその他の方法を模索します」
「その他の方法って?」
「現地警察と治安維持部隊を動かします」
「できるの?」
「やります。お任せください」
火星の警察組織は主に三系統ある。現地警察、つまり一般の警察なのだが、これはアケローン警察隊となる。アケローン市長直下の組織だ。もう一つは連邦保安警察。これは火星連邦政府の隷下で、都市を
私はどうしてあいつらを嵌め倒すか、その策を練るための情報を検索し始めた。もちろん、アケローン市庁舎のサーバーで。
アケローン治安維持隊の隊長は
アケローン地底湖漁業協同組合理事長、
これだ。
大鷹揚一郎。PRA(環太平洋同盟)機動攻撃軍の司令官から火星連邦軍へと転任した男。今、暗躍しているEEU(拡大ヨーロッパ連合)の勢力とは敵対しているはず。しかし、だからと言って私たちマーズチルドレンと友好関係にあるとは限らない。
だったら〝毒を以て毒を制す〟だ。この大鷹中将へと情報をリークし、あの悪辣な二人組を止めてやる。
私はその策を実施すべく、リークする情報をまとめる作業を始めた。情報を何処まで開示すべきなのか。また、即時行動を起こさせるには、どういったルートで情報を流す事が適切なのか。慎重に考えなくてはいけない。必要最小限の情報を流して、彼らを駒として使う。そして、混乱に乗じて秋人さんを奪還するんだ。
「あっ。ノエルちゃん。あの三人組、例の空き倉庫に向かってる。昼間なのにもう接触するつもりじゃないの?」
ジュリーさんが報告して来た。
早い。
これでは準備が間に合わない。
どうする?
焦燥感が募る。
しかしどうする事もできない。
あの三人は、例の悪辣な二人組と秋人さん達が潜んでいる空き倉庫の中へと入って行った。
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