第22話 駆の告白、結果は…!?

 土日を挟んで月曜日、修哉と駆は早速計画を実行するために一度話そうと昼休みに駆の教室へと来ていた。


「それで、実行は今日でいいんだな? 今日ならちょうど美華も部活あるし、時間も都合がいいと思うぞ」


「早速だな……。でも、あんまりゆっくりしてると決意が揺らぎそうだし、そうしよう。美華さんを呼び出すところまでは頼む」


 そこに、少し遅れて聡も合流して弁当を食べながら話を続けた。


「今日は、皆が駆について行かないように俺が部活の皆を引き留めるわ。その間に頑張れよ」


「聡、ありがとう……。修哉はちょっと俺とついて来てくれ、きっと一人じゃあ美華さんの場所まで行けないだろうから、背中押してくれ」


「おっけ、任せろ。……流石に告白するときは一人で行けよ?」


「おう……」


 昼休みは駆が何かを考え込んでしまったので、修哉と駆が二人で雑談しながら弁当を食べて終わるのだった。



 そして、授業が全て終わり部活の時間になっても駆は考え込んでいて、上の空といった様子で、先輩からも心配されるほどだった。

 流石に部活をしっかりと出来ないほど上の空だと、危険だし他の部員からしても邪魔にしかならないという事で、その日は駆は部活を途中で抜けて、部室で一人、呆けていた。


 部活が終わり、修哉が急いで駆の元へと行くと、修哉が来たことは認識出来たようで制服に着替えた状態で待っていた。

 修哉もすぐに着替えると、荷物を持って駆を外へと連れ出した。

 いつも以上に急いで出ていく二人に、部活の仲間は心配そうにしていたが、聡が話を振って、足止めしてくれていたのでそれに感謝しつつ、挨拶してさっさと美華が待っているだろう教室に急いだ。

 美華は既に部活が終わっているようで、修哉を待つために一人残っているそうで、教室の近くまで来ると修哉は立ち止まり、駆の背中を押した。


「実際、美華がそんな簡単に誰かと付き合うと思ってないし、今回は自分の気持ちを伝えてこれから進展出来たらいいぐらいの気持ちで行ってこい。当たって砕けろ、だ」


「……簡単に言いやがって。それでも緊張するのには変わらないんだよ……」


「そうは言っても、ここまで来てしないのも無しだぞ?」


「分かってる、分かってるけどさぁ……」


 教室の目の前に来てまでうだうだしている駆に、修哉は少しじれったい気分になってきた。

 ここまで来て、まだ行こうとしない駆の背後に回ると、思い切り力を込めて、駆の背中を手を開いて叩いた。


 バチン! といい音がして、痛みにしゃがみそうになった駆を掴んで、修哉は口を開いた。


「ここまで来たらやれることなんてない! さっさと行ってこい!」


 そしてそのまま駆の背中を押すと教室の目の前まで来た。


「じゃ、俺は少し離れてるから、頑張れよ」


 駆にそう告げると、修哉は駆の返答も聞かずに踵を返して教室から離れた。

 ある程度来てから振り返ると、教室の扉の前で深呼吸している駆の姿が目に入った。

 流石に覚悟も決まったのか扉に手をかけると、そのまま扉を開いて教室へと入っていった。

 それを見届けて、修哉は聡に通話を掛けた。

 すると、聡も気になっていたのかすぐに応答してきたので、声が聞こえ始めた。


「聡、今どこ?」


〈今、部室出たとこ。そっちはどう?〉


「駆が教室に入って行ったとこ。そろそろ合流しようぜ」


 修哉が聡にそう言ってそれほど時間が経たないうちに、階段を上ってくる足音が聞こえ始めた。

 そしてすぐに聡の姿が見えた。


「何か動きはあった?」


「いや、何も……って、ちょうど出て来たな」


 聡に声を掛けられて一度教室の方へと顔を向けると、ちょうど教室の扉が開き、駆が出て来たところだった。

 心ここにあらず、といった様子でこちらに歩いてくる駆に、何となく結果は分かったので二人は何か声を掛けるでもなくこちらに来るまで待っていた。


「お疲れ。よく頑張ったな」


「また今度、パーっと遊びに行こうぜ。とりあえず、今日はもう遅いから帰ろう」


「……おう」


 涙は何とか堪えているものの、やはり悔しいところはあるのか肩は震え、修哉たちに返事した声も少し震えていた。

 修哉は、恋愛をした経験など無く、当然告白したことも無いので駆のように悔しがっているのに対してどう接したらいいのか分からなかった。

 と、そこで修哉のスマホが通知を知らせてきて、画面を見てみると、美華から、帰りたいから早く来い、といった内容のメッセージが届いていた。


 駆を置いて美華の方に行くのもどうかと思ったものの、もともと修哉から美華に一緒に帰ろうと言って待っていてもらったことを考え、二人に一言伝えて美華の元へと向かうのだった。




 帰り道、美華と色々話をしながらも修哉は駆のことが気にかかって、あまりしっかりと話を聞けていなかった。

 美華も修哉があまり話を聞いていないという事を分かったのか、途中から不機嫌そうにしていた。

 そして、二人とも静かになってから少し歩き、修哉がようやく口を開いた。


「今日、駆に告白されただろ? なんて言ったんだ?」


「何で知って……。ああ、そう言う事ね」


 修哉が、直前に自分にあった出来事を何故知っているのか、と美華は不思議そうにしたものの、すぐに駆と修哉が同じ部活で仲良くしている、という事を思い出すとおおよそ何があったのかを理解した。


「何も無いって。いつも通り、無理です、ごめんなさいって言っただけよ。私は恋愛とかしたいと思わないもん。今のまま、修哉と友達と一緒に楽しく過ごせればいい、それだけよ」


「……そうか」


 美華の返答を聞いて、修哉は複雑な気持ちだった。

 駆が振られたことももちろん複雑な気持ちではあるのだが、それ以上に美華のことで修哉は複雑な気分だった。


(……まだ、あの時のことを気にしてるのか、俺も美華のこと言えたものじゃないけど……。少しは改善され始めて、安心してたんだけどな……)


 少し昔のことを思いだしながら、修哉の先を歩いて行ってしまった美華を追いかけて修哉も家へと急ぐのだった。

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