第18話 告白計画
しばらく男三人で騒いだ後、ようやく茶化すのに落ち着いた修哉と聡は、駆に話を詳しく話しだすように促した。
「それで、なんとなく誰にするのかは分かっちゃってるけど、如何したいの?」
「お前らが話を混ぜ返したくせに……。とりあえず、たぶん考えている通りに、美華さんに告白しようかな、って思ってさ。それで、二人に相談したいんだけど……」
駆は少し恥ずかしそうに、一度口を止めてから深呼吸をして再び口を開いた。
「どんな風に告白するのがいいかなあ!? どんなシチュエーションで、どんな言葉で告白したらいいと思う!?」
駆が誰に対して好意を抱いているのか知っていた修哉たちには告白する相手に関してはどうでもよかったが、一体何を相談されるのかと考えていたところで、駆が力が入ってしまったのか、かなり大きい声を出してしまった。
修哉と聡は、興奮している駆の頭をはたくと、落ち着かせるために座らせて、周りからいきなりの大きな声で注目を浴びていたので周りに向かって何度も頭を下げることになった。
「……ふぅ、それで? 何だっけ? 告白の言葉だっけか。そう言うのは自分で考えたほうがいいんじゃないの?」
何とか周りの目も気にならなくなってから、聡が少し不機嫌そうにそう吐き捨てた。
まあ、いきなり叫ばれて注目を浴び、その謝罪を今の今までしてきた身としては不機嫌になるのには修哉も同感だったが、もう済んだことと切り替えると、修哉も口を開いた。
「俺も聡と同意見だな。……俺もこれまで告白するようなことなんて無かったから知らないし。それに、どんな状況で、って言っても高校生程度に出来ることなんて高が知れてるだろ? それに、美華のタイプでもないと大して仲良くない相手に告白されたところで成功するわけないじゃん」
「いや、その通りだけど……。でも、このままだと俺は美華さんからしても修哉の友達の一人、だろ? だから、これで少しでも俺の存在を印象付けたいというか」
修哉の言葉を受けて駆が答えたことは、確かにその通りで修哉は閉口するしかなかった。
「それで、おそらくフラれるとは思うんだけど、それでも避けられないようにはして、友達ぐらいにはランクアップしたいと思うんだよ。だから、そのためにどうしたらいいのか一緒に考えてくれ!」
駆にそう頼まれた修哉と聡は、それからしばらく一緒に考え始めた。
とはいえ、そんなことを経験したことも無い修哉と聡はどうしたらいいのか分からずに大した案も出せずに三人で頭を抱えるだけとなってしまった。
「もういいんじゃないか? 結局ストレートに、好きです、付き合ってください! って言って来いよ。部活終わりにでも呼び出してさ」
「まあ、そうするしかないよなあ。そうでもしないと話も出来なさそうだし」
そしてもう考えることも面倒くさくなってきた二人は少し投げやりにそう言った。
駆はまだ何か言いたそうだったが、自分も何も案を出せずにいたので文句も言えずに顎を机に置いてぶすっとしていた。
「まあ、俺が多分美華と一緒に帰るだろうし、その時に美華が待ってるところに駆が行って告白したらいいんじゃないか? とりあえず二人きりにはなれるだろ?」
「……そうだな、そうする……。修哉、聡もありがとな」
「どういたしまして、特に何もしてないけど」
「俺なんか特に何もしてないし出来ないけど、頑張れよ! フラれても俺が一緒にいてやるから!」
「フラれる前提で話すの止めてくれよ……。もしかしたら、なんの間違いかオッケーされるかもしれないだろ……」
自信なさげにそう言う聡に二人は笑いながらその日はそのまま解散したのだった。
「ただいまー」
家に帰り、声を掛けると珍しく両親は出かけているようで、靴が無かった。
美華はいるようだったが、返事は無かったので部屋に居るのかと思いながら自室に戻ると、何故か美華は修哉の部屋で、修哉のベッドで眠っていた。
何で自分の部屋で寝ていないのか、と起こそうかと思ったが、結局起こすことは無かった。
昔から、何かあるとよく修哉の部屋に来ていたことを思いだして、疲れているのかもな、と思って静かに、起こさないようにベッドにもたれかかると本棚から持ってきた本を一冊、読み始めた。
それから、本を半分ぐらい読んだところで、背中に触れる感触に気が付いた。
修哉がそちらに顔を向けると、美華が寝ぼけた表情で修哉の服を掴んでいた。
「おはよ。よく眠れたか?」
「んー? ……んー」
修哉は声を掛けたが、まだ寝ぼけているのかはっきりとした言葉を発さず、修哉の服を掴む力が強くなる美華に、修哉は苦笑した。
普段ならここまで甘えたような状態にならないのにここまでなっているのは、何かあったのだろうと思ったが、無理に聞くことでもないか、と今はただ美華を甘やかすことにして服を掴む美華の手を離させると身体の向きを変えて美華に向き直った。
そして掛布団をしっかり掛けてやると美華の頭を撫でて寝かしつけ始めた。
美華も嫌がることなく、気分よさそうにして、それほど時間も経たないうちにまた美華は寝息を立て始めた。
修哉はそれから十分程度、美華の頭を撫で続け、そして起こさないように静かに部屋から出てリビングへと行くのだった。
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