第16話 焼肉!(焼肉の描写は出ません)

「「ただいま~」」


 テスト最終日はテストが午前中で終わり、午後は授業も無くすぐに解散だったので、修哉と美華が家に帰ってきたのは12時を少し過ぎた頃だった。


「おかえり、お昼ご飯出来てるわよ」


 母がそう声を掛けてきて、修哉も美華も一度部屋に戻り制服を着替えてからリビングへと降りて行った。

 すると、てっきり平日の昼間なのだから母しかいないと思っていたところに、父もいた。


「あれ、父さん今日は仕事は?」


 修哉がそう声を掛けると、


「今日は有給取ったんだよ、そろそろ溜まってきているから使えって上司に言われてたのもあったからな。だから、今日は晩ご飯は焼肉に行くぞ、テストお疲れさまって事でな」


 父の言葉に修哉も美華もテンションが上がり、家族でお昼ご飯を食べてゆっくりしていた。


 お昼ご飯を食べ終わって、少しすると、テストに疲れたのか修哉は眠気に襲われてきた。

 そのまま、少し仮眠をとると言って部屋に戻っていった。


 修哉が部屋に戻ったのを確認して、母が美華に話しかけてきた。


「美華、何かあったの? ここ最近少し何かに悩んでるみたいだけれど」


 その言葉に、美華は一瞬言葉が詰まってしまった。

 しかし、気に病ませたくない、という気持ちが出て、笑顔を取り繕いながら


「そうかな? テスト勉強に疲れてただけじゃないかな?」


 そう答えた。

 その言葉に母も父も少し考えるそぶりをしてから、美華に近付いてきた。


「言いたくないなら、言わなくてもいいわ。でも、私もお父さんも美華の味方よ、だからそんな辛そうな顔をしなくてもいいの。」


 そう言って美華を抱きしめてきた。

 父も、母に抱きしめられている美華の頭を撫でてくれて、美華は少し涙腺が緩んできたのを感じていた。

 すると、先ほどまで頑なな気持ちになっていたことが馬鹿らしく思えてきた。


「美華と修哉は姉と弟だからって、二人は双子なんだし、無理にお姉ちゃんしなくていいんだぞ。父さんたちには、どっちが姉でも兄でもいいんだから。二人とも大事な子供なんだ。たまには子供らしく親に甘えてきていいんだぞ」


 父にもそう言われて、美華はこのまま抱き着いて泣き出したくなってしまった。


 そしてついに美華は最近悩んでいた、もやっとしていた感情を吐露した。


 その話を聞いた母は美華をさらに強く抱きしめてくれた。

 父も母ごと美華を抱きしめてくれて、温かい愛情を感じて美華はついに泣き出してしまった。


 それからしばらくして、美華が落ち着いてから、


「そんなことに悩まなくても、修哉も美華のことを一番大事に思ってるわよ。例え彼女が出来たところで、美華のことを大事に思う気持ちが変わることは無いわよ。美華だって、例えば自分に彼氏が出来ても修哉のことを大事にしなくなるって訳じゃないでしょ?」


「それに、修哉も美華の様子がおかしいのには気付いて心配してたからな」


「え、嘘!?」


 そう話す父の言葉を聞いて、しっかりと修哉には隠せていると思っていた美華は驚いてしまった。

 そんな美華の様子に父は少し苦笑しながら、


「本当だよ、美華も修哉もまだまだ子供だな。ご飯を食べてる最中、ずっと修哉もバレないようにしていたつもりかもしれないけど美華のことを気にしてたし、美華もそのことに気付かずにいたしな。まあ、父さんたちにはどっちもバレバレだったけど」


 美華は、もちろん修哉も気付いてはいなかったが、すっかり両親にはバレていたことに少し恥ずかしく思いながら、しかし悪い気持ちはしなかった。

 修哉にもバレていたことにも恥ずかしいという気持ちはあったが、気にしていてくれている、ということには美華も素直に嬉しくなった。


 それからは、ご飯を食べた後のゆっくりした時間を父母とゆっくり話しながら過ごしていた。

 そして、それから数時間が経って、空も少し赤らんできたぐらいの時間になって、修哉が起き出してきた。


「あ、修哉おはよ、そろそろ出かける準備して! 出かけるよ!」


 起き抜けのところに美華にそう言われて修哉はまた部屋へと戻って準備をしてきた。

 それから、家族で車に乗り込み、焼肉の前に買い物へと出かけた。

 四人はショッピングモールへと行き、母と美華は少し早いが夏服を見に、修哉は父とゲームショップへと来ていた。


「さて、前に約束してたゲームはここにあるのか?」


「んー、売り切れてなければたぶんあるはず……」


 そう言って修哉が探していたのは、流行の時期よりは少し遅れていたが、自分で身体を動かして流れてくるオブジェクトを指定された通りにして進めていくリズムゲームだった。

 ちなみに父も修哉と同じくゲームが好きな人なので、まるで友人のように楽しみながら一緒に目的のゲームを探しながらも色々なゲームを見て楽しんでいた。


「あ、あった!」


 そして、修哉は目的のゲームを見つけて手に取った。

 確かに目的の物だという事を確認してから修哉は父に渡し、買って来てもらっているのを待っている間に、他にも面白そうなゲームがあるのか色々と見て回っていた。

 そうして少し周りを見て父を待っていると、父も会計を終わらせてきたようで修哉の近くへと来ていた。

 修哉もそれに気付き、父から買ってもらったゲームを抱えて店を出た。


「父さんありがと」


 父に感謝の言葉を言うと、父も、


「修哉も、ありがとな、美華のこと気にかけてくれてて」


 その言葉に、修哉は一瞬何のことか分からなかったが、すぐに気づいて、


「ああ、美華がすっきりしてたのは父さんたちに話したからか。それなら良かった」


 そう答えた。

 ほんの少しだけ、自分には話してくれなかったな、と寂しく思いながらも、美華が元気に戻ったことは嬉しかったので、良しと思うことにした。


「それにしても、修哉も美華のこと大好きだな、仲良くしててくれて父さんも嬉しいよ」


「そりゃ、大事な兄弟だし、大好きだよ……美華には恥ずかしいから言わないけど」


 修哉の返答に父は微笑んで、修哉の頭を撫でてきた。


「修哉がそういう子で父さんも嬉しいよ」


「ちょっと、この年で父さんに頭撫でられるの恥ずかしいんだけど!」


「はっはっは、子供は親に好きなようにされる生き物なんだよ。大人しく撫でられてなさい!」


 テンション高めにそう言ってくる父に少し辟易しながらも、修哉はそのまま少しの間撫でられたままでいるのだった。


 それから永井家族は買い物を終えた後そのまま焼肉を食べに行って、満足した状態で家に帰り、それからしばらく眠る準備をして眠りについた。

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