第10話 初めてのテスト②

 テスト週間も始まり、周りもいつもより頻繁に先生に質問に行ったり、図書館が勉強する生徒で埋まってしまったりと流石に皆勉強に集中するようになっていた。

 他の部活でも再試験等の話は聞いているのか、勉強がいつも苦手、と公言するような数名のクラスメイトたちはいつもとは本当に様子が変わって教科書を読み込んでいた。


 そして、修哉も苦手な科目の勉強をしておこう、と古典の教科書を見ていた。

 すると、教室の扉が急に開いた。

 先生が来たのか、と思って顔を上げると、ちょうど修哉の目の前に駆と聡が来ていた。


「「勉強教えて下さい!」」


 修哉が口を開くのよりほんの少し早く、2人が同時に声を上げた。

 そう言ったまま頭を下げようとしない二人を見て、修哉は少し呆れていた。


「そう言ってくるの、遅くないか? テスト週間始まって既に数日たってるよな? それどころか、明々後日の月曜からテストなのは知ってるよな?」


 修哉が少し詰問するように言うと、二人は気まずそうな顔をして修哉から目を逸らした。


「……怒らないから、どれだけ勉強してあるか言ってくれ、さすがにそうじゃないと教えるなんて出来っこないから」


「「……全くやっておりません」」


 少し、予想の下を行ったことに対して頭が痛くなった修哉は、こめかみのあたりを指で押さえながら溜息を吐いた。


「お前一体、何をしてたんだよ……?」


 溜息混じりにそう聞くと、


「ゲームして、カラオケ行って、部屋の片づけして……」


「俺も似たような感じ……」


 まさに勉強をしない学生のしそうなことを並べられて、修哉はまた頭を抱えることになった。


「てか、勉強教えるって言ってもお前ら家どこだよ」


 修哉がそう聞くと、二人が答えたのは、修哉の住んでいる校区からかなり離れた校区だった。


「流石に集まって教えるとか、この状況においては時間がもったいないだろ、もう今日ぐらいしか勉強する時間ねえじゃねえか」


「そこは、ほら……修哉の家で泊まりで、とか……?」


「俺はいいけどさ、それでもうちには美華もいるから、そう簡単に男を家に上げるのはあんまりしたくないんだよな……」


 修哉が駆と聡と話していると、駆と聡が修哉の後ろを見て呆然としていた。


「? 二人ともどうしたんだ?」


 そう言って修哉も振り返ると、そこには美華がいた。


「修哉~、家に人呼んでもいい? 勉強会しようってなって、友達二人が家来たいって言ってるんだけど」


「ああ、それはいいけど、ちゃんと父さんと母さんに言っとけよ?」


「それはもちろん! もう伝えて、オッケー貰ってるから!」


「それならもう俺に聞く必要無いじゃん……」


「あの!」


 修哉と美華が話していると、その話を聞いていた駆が話を遮って美華に話しかけてきた。


「それなら俺たちも修哉の家に行ってもいいかな? 俺たちも勉強教えてもらいたいんだけど……ほら! 人数多いほうが楽しいかもしれないし!」


「修哉だけじゃ分かんないところもあるかもだから、美華さんにも教えて欲しいし!」


「ん~、まあ、いいよ。けど、ちゃんと勉強はするんだよ?」


「「はぁ~い!」」


 そう言って嬉しそうに話している駆と聡を見ながら、修哉は美華にこっそりと声をかけた。


「美華、ほんとによかったのか? 大丈夫か?」


「まあ、修哉の友達だし、無理って言うのもね……それに修哉が見ててくれるんでしょ? なら、大丈夫」


「そっか……なら、変なことしないとは思うけど一応見とく、けど、無理するなよ?」


「ありがと! とりあえず、修哉も母さんと父さんに伝えときなよ?」


 美華にそう言われて、修哉も親に連絡を取ることにすると、その様子を見て美華は満足気に自分の教室に戻っていった。

 美華が教室から出て行ってから、修哉は駆と聡の二人に話しかけた。


「教科書とかはあるからとりあえず持ってこなくていいけど、テキスト類は自分で持って来いよ? どうせ課題もやってないんだろうし」


「分かった、じゃあ学校終わったら一回帰って勉強道具取ってくる」


「晩飯まで出してもらうのは悪いし、どっか食べに行こうぜ、勉強教えてもらうんだから、俺らで奢るから」


「分かった、それじゃあ、一旦帰ってから十八時に駅で集合でいいよな?」


 ということで、その後の授業を受けて一度解散したのだった。

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