第9話 初めてのテスト①
「集合ー」
連休も終わり、テストを1週間後に控えたある日の部活で、いつも通り練習をしていると終了の時間にはまだ早い時間で部長から集合の声がかかった。
「先生からもう話はされてはと思うけど、明日からテスト週間です。この期間は部活は出来ないので、しっかり勉強してください。また、1年生は知らないと思うけど、うちの弓道部は、赤点が1つでもあると部活に参加させません。テストさえ良ければ、っていって期間中の課題を提出しなかったやつも終わるまで部活に参加させません。今日も部活はこれで終わりにするので、赤点取らないように勉強してください」
それを聞いて、先輩たちはテストの時期が来てしまった、という顔をしていた。
修哉達1年生はまだこの学校のテストを経験していない上に、この高校は市内でも進学校なので、基本的にはそれぞれの中学では上位の成績であったので、そこまで忌避感は無かった。
しかし、先輩たちの過剰な嫌がり方を見ていて少し不安になってきたのか、聡が先輩に話を聞きに行った。
「そんなにテスト嫌がるもんなんですか? テスト週間に勉強すれば点数取れると思うんですけど……」
「ああ、そうか、まだ高校のしっかりしたテスト受けた事ないんだよな……。高校のテストってまず中学の頃と比べて範囲が広いんだよ、科目数も増えてるしな。んで、テストで赤点取ると再試験があるんだけど、その再試験、満点を取るまで延々と続くんだよ……。満点取れないと次のテストの時にまだ再試験やってる、ってやつも出る感じでな、毎年1年生の何人かはそれで地獄を見るんだ。それを覚えてて、しかも俺たち2年生は割とバカが多いから、全員が一度は地獄を見てきてるんだ……。それで、再試験中は部活出来ないから、俺とかは特に、前期に関しては夏休みまで部活出来なかったんだよ……」
先輩の話を聞いて、聡はもう少し優しいものだと思っていたので、背中に嫌な汗をかくのを感じた。
「マジですか……。ところで、赤点って何点ぐらいですか?」
「赤点は、うちの高校は平均点の半分以下だな。たまに平均点がバカ高くなることがあるんだけど、そういう時は40点ぐらいで赤点になることもあるぞ」
「マジですか!? じゃあ、ちゃんと勉強しないとほんとに部活出来ないんですか?」
「マジで部活参加出来ないぞ……。テスト終わってから暫くは先生と部長がチェックしてくるから、隠すことも出来ないしな……」
「だから、部活やりたかったらちゃんと勉強しとけよ?」
聡が先輩と話しているところに急に部長が来てそう伝えた。
「横井、お前はほんとにちゃんとやれよ? これでまた再試に引っかかったら、何度目だ? 流石に先生がキレるぞ? たまにお前の担任に俺が文句言われるんだから、ちゃんとしてくれよ、頼むから」
「なるほど、横井先輩の体験談だった訳ですね、そりゃ詳しいわけだ」
聡が横井先輩をからかうように言うと、横井先輩は聡に何かを言おうとしたようだった。
しかし、結局言葉になることはなく、部長に連れられてまだテストも始まっていないのに説教が始まっていた。
「聡、先輩をからかいに行くなんてすげえやつだな……」
先輩から話を聞いて戻ってきた聡に、修哉がそう言うと、
「そうは言っても、引き際はちゃんと見てるぜ? たぶん、本気で怒られはしないって位のところで逃げてるからな!」
胸を張ってそう言っている聡を見て苦笑しながら、修哉達も片付けに参加して、その日の部活は終わった。
「明日からテスト週間かぁ、修哉もちゃんと今日から勉強するよね?」
その日の帰り道、美華の部活も同じぐらいの時間に終わっていたらしく、一緒に帰ることになり、2人で帰り道を歩いていた。
「まあ、大丈夫だとは思うけど一応、復習はするかな」
修哉は普段から予習復習をしてはいるので、授業の内容は理解しているが、それでも心配な部分、特に文系科目は不安もあるので勉強はするつもりでいた。
ちなみに美華は、基本テスト前に詰め込んでいる。
授業で聞いたことは理解しているので、詰め込むと言っても苦手科目な理科と数学を演習を解いているだけなのだが。
そして、2人はそれぞれの得意科目が、互いの苦手科目なので、これまでは教え合うようにしてテストに臨んできていた。
「高校のテストもこれまで通りでいい?」
美華も中学のテストの頃を思い出していたようで、これまで通りを提案してきた。
修哉も否は無かったので了解をし、これまで通り2人で協力して勉強することになった。
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