第8話
修哉と駆は、周りを気にせず話せるところを探し、全国展開しているハンバーガー店へと入った。
ここなら多少騒がしくても、周りの話し声でそこまで気になることにはならないだろうと考えて。
「それで、どうしたんだよ、話って? てか、もしかしてボーリングをわざわざ俺に誘ってきたのも、話がしたかったからだったりする?」
注文を受け取り、空いていた席に座って修哉は早速、駆に話を聞いた。
「その通りだけど、ボーリングは普通に行きたかったから、話無くても誘ってたよ。まあ、あんな大所帯になるとは思ってなかったけどね……」
「まあ、そうだなあ。でも楽しかったし、またこうして遊びたいな」
「そうだね……それで、話があるんだけど。話というか、相談かな」
「俺で相談に乗れるんなら良いけど……」
「大丈夫、むしろ修哉にしか無理だと思う」
「そう言われるのもプレッシャーかかるなあ……」
「まあ、美華さんのことなんだけど……」
そう言って、駆から美華の名前が出てきて、修哉は気づかぬうちに少し身体が強張らせると、駆も気付いたようで、苦笑した。
「ごめん、そんな身構えるようなことじゃないから。」
「それならいいけど、美華がどうしたの?」
「美華さんが、というか……あの、」
駆が迷うように目を泳がせているので、話を待っていると、駆も心を決めたようで、
「美華さんのこと、本当の本気で好きになっちゃったんだけど……美華さんのタイプとかって……分かる?」
「ああ、ついにか……」
「? ついにって、どういうこと?」
「ああ、いや、気にしないでくれ……」
修哉にとって、話の内容はいつかされることだろうとは予想はついていた。
予想通りの内容なせいで、ため息をこぼした。
正直な話、いつかはこんな相談はされるだろうと思っていたが、もう少し時間はかかるだろうと予想していたからだ。
「それで、美華のどこを好きになったの?」
「え、それ言わなきゃだめ……? 好きな人の弟にそれ話すの、かなり恥ずかしいんだけど……」
「もちろん、聞きたい」
「……えっと、可愛いのはもちろんだし、いつも明るくて元気で笑顔が可愛い、何か困ってる人がいるとよく知らない人でも話を聞きにいくとことか、それなのに言うべきことはしっかり言うところとか、部活してる時の楽しそうな顔とか横でずっと見てられる……」
「ちょっと待て、部活違うのに何でそんなこと知ってるの? しかも部活してるとこ割と離れてるよな? もしかしてストーキングしてる?」
駆が話しているのを聞いていて、しっかり美華のことを見てるんだな、と嬉しく感じていた修哉だったが、途中でどうしてもおかしく感じたことがあったので、突っ込んで聞かざるを得なくなって聞いてみると、
「違っ! ストーカーじゃない! 同じ部活に同じクラスの仲いい奴がいるんだよ、それでたまに忘れ物を届けに行ったりしてるんだよ……美華さんに会いたくてわざわざ俺が行ってるのは事実だけど……」
「そうか……」
駆がそう答えたのを聞いて、少し安心しながら修哉は顔を顰めざるを得なかった。
何故というのも、美華の好きな異性のタイプと駆は、正直に言ってあまりにもかけ離れていたからだった。
駆の話を聞いていて、駆が美華のことを容姿だけで見てる人間じゃないことは分かったので、友人としても応援したいところなのだが、美華の異性のタイプは小さくて可愛い守ってあげたくなる男なのだが、駆は背も高く体つきもかなり筋肉がついていて、守られる側というよりも守る側の見た目をしているのだ。
そのことを駆に伝えると、この世の絶望を見た、とでも言うような顔をして頭を抱えてしまった。
「いや、まあ、うん……そんな落ち込むなって、良いことある……さ?」
「他人事だなあ!? 当然なんだけど!」
「ま、まあまあ、タイプは違ってても誠実にアピールしていけば、きっとチャンスはあるさ! たぶん……」
「そんな自信なさそうに言われても……」
二人でそう話していて、時間もそろそろ帰らないと晩御飯が食べられなくなりそうになっていたので、修哉と駆は帰ることにした。
修哉と駆が話をしていたその頃、同じくハンバーガー店で愛莉と茜が話していた。
「愛莉ちゃんと買った服~ふふふ、今度のデートはこれ着てくるからね!」
「もう、茜ちゃんったら……今度は女子だけでどこかお出かけとかもしたいね」
「ええ、二人きりがいいのに……愛莉ちゃんのいけず~」
「そんなことより、今日のボーリング楽しかったね、茜ちゃん凄かったね、男子よりスコア取ってたんじゃない?」
「まあね! あんな貧弱共には負けないよ!」
「ははは……そう言えちゃうぐらいに茜ちゃん無双してたしね。最後の方は男子たちがみんな悔しがってたし」
「そんな褒めないでよ、照れちゃう~」
そう、今日のボーリングで一番成績が良かったのは茜だった。
茜はもともと運動が得意で、しかもボーリングは家族でよく行くので特に得意ともいえるものであった。
「褒めては無いけどね……そう言えば、来週からもうテスト週間だね……勉強しなきゃだよね……」
「うぐっ……勉強はしたくないなあ……愛莉ちゃん教えて下さい……」
「無理だって知ってるでしょ……? 勉強出来ないの知ってるでしょ……」
「うう……部員の中で一番頭いいの誰だっけ?」
「えっと……修哉君が頭いいのは知ってるけど、他は知らないなあ」
「うう……男子に教わるのは……」
「そんなこと言わないの。……って、あれ? あそこにいるの修哉君じゃない? もう一人はえっと……駆君だったかな」
「あ、ほんとだ、二人で何してるんだろ? ……もしかして私たちみたいにあの二人カップルだったりして!?」
「だから、私たちは違うでしょ。でも、そうかもね? あの二人仲良さそうだし……」
修哉と駆が恋愛相談をしているとは知らない愛莉たちは、距離の近そうな修哉たちを見て色々と邪推していた。
もちろんそんな関係ではないのだが……。
その光景を見ていて、愛莉は不思議な気持ちがわいてくるのを感じていた。
「あれ? 愛莉ちゃんどうしたの? 変な顔して」
「えっ? そう? 自分じゃよくわかんないけど……それより、二人だけで話してるなら、話しかけないほうがいいね、もし大丈夫そうなら勉強教えてもらう約束しようかと思ったけど」
「うぐ……勉強……あ! テスト終わったらまたどこか遊びに行こうよ!」
話が逸れたことにどこか愛莉は安堵しながら、テストが終わったらどこに遊びに行くのかを話していった。
「それじゃあ愛莉ちゃん、また連休明けに学校で会おうね!」
「うん、またね~」
修哉たちが帰ってから少しして、愛莉たちも帰ることにして電車に乗り、最寄りの駅で降りてそれぞれの帰路についた。
(そう言えば、あの時感じたのは何だったんだろう……?)
ハンバーガー店で修哉と駆を見て感じたことに不思議に思いながら、愛莉も家に向かって歩いて行った。
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