第7話 ボーリング

「修哉! ボーリング行かねえ!?」


 ある日の部活の時、突然に駆が修哉にそう言ってきた。

 その言葉に応える前に傍にいた聡が、


「お、いいなぁ! どうせなら部活のみんなで行こうぜ! ちょっと女子にも声掛けてくる!」


 と言って、女子が集まってる所へと向かってしまった。

 そんな聡を見ながら修哉は、


「それで、なんでいきなりボーリングなんだ? 行くこと自体は構わない、てか行きたいけど、もうすぐテスト週間だろう?」


「そうなんだけど……むしろ、だからこそ行きてえなって思ってさ」


「まあ、いいけど。いつ行くんだ?」


「明日から連休だし、明日とかどう?」


「俺はそれでいいよ。他のやつの用事次第かな」


「おっけ、向こうにも聞きに行ってみるか」


 修哉と駆はそう話して、他の部活のメンバーに話をしに行った。

 その結果として、一番多く人が来れそうな明日、連休初日の土曜日にボーリングに行くことになった。




 翌日の昼前に修哉が家を出ようとすると、ちょうど美華も部屋から出てきていて、


「あれ、修哉出かけるの?」


「ああ、部活の皆とボーリング行くんだよ、昨日決まったことだったし、そういや伝えてなかったや。母さんにも伝えといてくれない?」


「え! いいなあ、部活の、ってことは愛莉ちゃんもいるんだ、羨ましいなぁ」


「いつの間にかそんなに仲良くなってたんだ? 美華がそんなに気に入るなんて珍しい」


「だって、愛莉ちゃんすごくいい子なんだもん」


「まあ、友達と仲良く出来てるようで良かったよ、今度はずっと仲良く出来るといいな」


「分かってるって、修哉の癖に生意気だなあ……」


「俺の癖にってなんだよ……まあ、もう行くから、母さんに伝えといて、たぶん晩御飯ぐらいには帰ってくると思う」


「はいはい、行ってらっしゃい」


 美華と少し話して、修哉は家を出て自転車に跨り、駅に向かって漕ぎ出した。




 駅に到着して、集合場所の切符売り場の付近に行くと、既に何人か来ていて修哉のことに気付いたようで、聡が声をかけてきた。


「お、修哉! こっちこっち!」


「みんな結構早いな、まだ集合時間より前だろ?」


 そう皆に聞くと、既に来ていた面々は電車で来ていたようで、電車の時刻表的に一本遅らせた電車に乗ると遅れてしまうため、早めについていたらしい。

 そのまま話していると、まだ来ていなかった面々も到着してきて、集合時間には部活のメンバーはほとんど集まっていた。


「今日来ないのって誰だっけ?」


 まだ何人か見えていなかったので、昨日の時点で執り仕切っていた聡に修哉が聞くと、男子は圭が、女子は友里と瑞希みずきが来れないらしく、は既に全員揃っていたので、早速向かうことにした。



 駅から歩くことおよそ15分。

 修哉たちは目的地へと到着していた。


「じゃあ、早速ボーリングしようぜ!」


「いやいや、ちょっと待って。先に飯を食おうぜ、俺皆で食うもんだと思ってなんも食ってきてないんだよ」


「あ、俺も食ってないから飯食いてえ!」


 聡が元気よく行こうとしたが、集合時間が昼の少し前で、そこから歩いてきていたので、実が聡を止めて、先に併設されているフードコートへと言って昼飯にすることにした。



「よし! 次こそボーリングやるぞ!」


 昼ご飯を食べ終えて、少し休憩してから、聡が元気に先に行ってしまったのを見て、修哉たちは苦笑しながらその後についていった。


「それで、どう分かれようか? 12人いるし、3レーンでいいだろ?」


「そうだなあ、女子はちょうど4人だし、女子で1レーンとして、男子は適当に分かれるかぁ」


 そう言って、レーン分けは、

 愛莉、茜、石田由香いしだゆか渥美加奈あつみかなで1レーン、

 修哉、駆、実、川原健かわはらたけるで1レーン、

 聡、晴喜、川野雅史かわのまさし加藤響かとうひびきで1レーンと別れた。

 レーン自体は隣り合っていたので、皆でわいわい楽しみながら遊んでいた。

 1ゲーム終わり、一度飲み物が欲しいということで、各レーンで最下位だった3人が行くことになった。


「じゃあ、修哉、俺はコーラ!」

「俺はメロンソーダでよろしく」

「俺はウーロン茶!」


 修哉は、駆、実、健にそう頼まれて自動販売機に行こうとすると、雅史と愛莉も行こうとしていたので、一緒に歩いて行った。


「修哉、本当に運動出来ないんだな……悪いとは思ったけど、投げ方面白かったぞ……」


 歩いている時に、雅史が震えた声でそう言ってきた。


「うるせえよ……身体動かすのは得意じゃないんだ、筋力はあるんだけど、身体が思い通りに動かないんだよ……」


「まあまあ、そうは言っても、ガーターはあんまりなかったんだから、充分だろ」


「うん、それに勉強出来るのに運動ダメってギャップが可愛いと思うよ?」


 少しむくれた様子で修哉が言うと、雅史も愛莉も一応フォローを入れてくれた。

 肩は震えていて、こちらを向きはしなかったが。


「お前ら……まあ、いいや、さっさと飲み物買って戻ろうぜ」


 そう言ってそれぞれ頼まれた飲み物を買い始めた。

 しかし、修哉と雅史は手が大きく、買ったペットボトルや缶を持つのに苦労しなかったが、愛莉は二人と比べて手が大きくはない、というか小さかったので、持つのに苦労していた。

 修哉はその様子を見て、少し辺りを見渡してあるものを見つけた。

 少し二人から離れてそこにいた従業員の人に許可を取り、戻ってそれを愛莉に渡した。


「そこでプレート借りてきたから、載せて持っていくといいよ。持つの大変でしょ?」


「あ、ありがとう……修哉君、よく気が利くね。持てないこともないかな、ってぐらいだったんだけど」


「まあ、俺もちょっと持ち難かったからね」


「とりあえず、ありがと。正直助かったよ、持つのはなんとかなりそうだったけど、途中で落としそうだったから」


「それならよかった。それじゃあ、戻ろうか……雅史もいつの間にか戻ってるし」


 そうして二人で話しながらレーンに戻り、それから数ゲーム、ボーリングを目いっぱい楽しんだ。



「それじゃあ、今日はありがとな! 楽しかったぜ、またこうして遊びに行こうな!」


 ボーリングを終え、駅に戻ると、もう電車の時間が迫っていたようで、聡がそう言って改札の方へと急いでいった。


「聡は先に帰っちゃったけど、これで解散でいい?」


 そんな聡に苦笑しながら修哉がそう言うと、特に異論もなかったので、その場で解散することになった。

 そのまま帰るものもいれば、女子たちはそのままショッピングに行ったりと動き始めたので、修哉も帰ろうとした時だった。


「修哉、このあとちょっと時間ある? 話したい事あるんだけど……」


 駆が修哉にそう声をかけてきた。

 このまま帰るぐらいしか修哉は予定は無かったので、構わないと返事をし、そのまま話せるところに移動することにした。

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