第5話 駅で買い物(後編)
「どうせなら、美華さんと一緒に行動したかった……」
男女別れて行動し始めてから、駆がそうぼやいた。美華に惚れていて、少しでも仲を深めたいと考えているなら当然だろうが、さすがに、女子ばかりの中に一人で混じる勇気はなかったらしく、男子グループとともに行動している。
「まあ、仕方ないって、あの状態で一緒に行動しようなんて言えないだろ、女子たちは服見に行ってたから、長い買い物に付き合わされるのは勘弁だぜ?」
「まあ、男で遊んでたほうが気が楽だしな」
駆を励まそうと、
三人は、それぞれ家が近く、幼稚園からの幼馴染で、最初に会った時から三人で仲良くしていた。
とりあえず、あまり大勢でひとところに留まるのも周囲の迷惑になると考え、どこに移動するか考え始めた。
「女子たちは買い物行ったけど、俺らどうするよ? 何か買いたいものあるやついる?」
「特にないな……いや、ちょっと待って、今日好きな漫画の発売日だから、書店行きたい」
「お、じゃあ、とりあえず本屋行こうか、その後は、カラオケでも行かねえ?」
と、修哉の希望で、書店に行ってから、カラオケに行くことになった。
書店に着き、目当ての物を探していると、一緒に行動していた
「修哉は何買おうとしてんの?」
「ああ、えっと……お、この漫画だよ」
「え! まじ!? 俺もこの漫画好きなんだよ!」
「え、嘘、これそんなに有名な漫画じゃないし、仲間がいるとは思わなかった、内容もマニアックだし」
「でも、そこがいいんだよなあ」
そう二人で話していて、修哉と圭は、その漫画に限らず、趣味嗜好が似ていることが分かった。
「いやあ、仲間がいて嬉しいや、俺は面白いと思ってるんだけど、いつも美華には私には理解できないって言われてきてたから」
「そうなんだよな、なかなか身近にはいないから、俺も今テンション上がってる、このまま語り合おうぜ」
「お、良いね、じゃあさ、この漫画のさって痛っ!?」
と、二人がそのまま語り合おうとしていると、買う漫画を手に持ちつつ動こうとしない修哉を待ちかねたのか、聡が修哉の後頭部をはたいて催促してきた。
「買うもの決まってるんならさっさと買って来いよ、皆待ってんだぞ」
「あ、ああ、すまん、今すぐ買ってくる」
聡に急かされ、目当ての漫画を買い、皆が待っているところに急いで行った。
「さて、修哉の買い物も終わったし、カラオケ行こうぜ!」
修哉が買い物を終えて合流すると、早速カラオケに行こうと聡が皆に声を掛けて行くことになった。
この駅近くには、カラオケ店が複数店舗並んでいるので、どこに行くか話しながら、1番近くにあった店舗へ行き、早速歌い始めた。
「俺1番もーらい!」
そう言って、聡が歌い始めると、他の皆もそれぞれ好きな曲を入れて準備し始めたり、ドリンクバーで飲み物を取りに行ったりと動き始め、それぞれが楽しんでいた。全員が数曲ずつ歌ったあたりで、時間が来たので、カラオケをやめ、会計を済まして店舗を出た。
そして、店先で駄弁っていると、美華から買い物終わった旨の連絡が来て、時間も遅くなってきているので解散になった。
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その頃、女子グループはと言うと、衣料品店でそれぞれが好きな服を見て、薦めあったり、試着したりと楽しんでいた。
「やっぱ、女の子と服見に行くのはいいね! 修哉連れてっても、いつも大したこと言ってくれないから、あんまり参考にならないんだよね」
普段の買い物では、姉弟なこともあり、一緒に行くことの多い修哉を軽く貶しながら、美華は愛莉と茜と話していた。
「あはは……美華ちゃん、なんでも似合ってるから、褒めるのも難しいんじゃない? ボキャ少ないと、なかなか言葉に出来ないだろうし」
「そんなの関係ないもんね! 美華ちゃんほどの美人に対して、しっかり褒められないなんて、人間失格だね!」
フォローを入れながら話す愛莉に対して、茜は男嫌いを隠そうともせず、扱き下ろしていた。
「ほんとだよね、修哉もあれで私の弟なんだから、顔は悪くないし、基本冷めてるけど、優しいんだから、もっと褒めたりとか出来るようになれば少しはモテるようになるはずなのに」
「ああ、確かに優しいよね。部活でも、重いものとか積極的に運んでるの見るし、さりげなく困ってるとき助けてくれたりするし」
「えっ!? あいつ、あたしの愛莉ちゃんに色目使ってやがるの!? 許せん!」
「いや、だから私は茜ちゃんのじゃないからね? 茜ちゃんも修哉くんも、お友達だよ、茜ちゃんのが大事だけどね」
「ああ、またフラれた……でも、あたしの方が大事って言ってくれたから許しちゃう! 愛莉ちゃん~!」
そう言って、茜が愛莉に抱き着いているのを、美華は微笑まし気に眺めながら、
「修哉の話は置いといて、もっと服見よ? せっかく一緒にショッピング出来るんだし、時間がもったいないよ?」
「あ! そうだね、ほら、茜ちゃん離れて? くっつかれたままだと、服見れないよ」
「はぁい、あ、これとか愛莉ちゃん似合うんじゃない? こっちのパンツと合わせたりとか」
「んー、でも、ちょっとカッコイイ系だから、私より美華ちゃんの方が似合うんじゃない?」
「おお、ほんとだ! 美華ちゃんカッコ可愛い!」
「あはは、嬉しいなあ、あ、それならこれとか茜ちゃんどう?」
三人はそれぞれに合いそうな服を見ながら、キャッキャと話していった。
「あ! そろそろ帰らないとママに怒られる!」
茜がスマホを開いて時間を確認すると、かなりの時間が経っており、焦ったように言った。
「じゃあ、今日は解散かな? ごめんね、部活のみんなで買い物に来てたのに混ざっちゃって」
「大丈夫だって、私らも美華ちゃんと話すの楽しかったし」
身長160センチの美華より10センチほど背の高い、姉御肌の
「うん、楽しかったし問題ないよ、お高く留まってる訳でもなく話しやすかったし」
「またどっか遊びいこうね!」
と話しかけ、美華は相当弓道部に馴染んでいた。
「ありがと! じゃあ、また今度遊び行こうね! またね!」
と言って、女子グループも解散し、各々帰路についた。
皆と別れて、美華は修哉に買い物終わったから帰ると連絡すると、修哉の方も遊び終わったようですぐに返信があり、二人で合流して家へと帰ることにした。
「修哉たちはどこ行ってたの?」
「俺らはカラオケ。美華たちは?」
「私たちは、服見に行ってたよ、修哉と行くより楽しかった」
「そりゃすいませんね……てか、弓道部じゃないのに凄い馴染んでるんだな」
「まあね! 皆いい子で、仲良くなったよ! 今度遊びに行くのが楽しみ!」
そんな風に、二人でそれぞれあったことを話しながら、もう暗くなっている道を歩いて行った。
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