第3話 弓道部にて
「いやぁ、まさか修哉がこんなに頭良いとは……」
「いや、まぁ、勉強しか取り柄ないからなぁ。運動はてんでダメだぞ」
入学式から数日がたったある日の昼休み、新入生テストの結果が張り出されているのを見ながら、修哉と博人はそんなことを話していた。
「そんなこと言って、身長あるんだし、なんだかんだスポーツも出来るんだろ?」
「いやいや、中学でサッカー部だったのにずっとベンチだったって言ったろ? ほんとに身長だけなんだって。運動も出来るのは美華の方。」
「ふーん? まあ、いいや。それにしても……美華さん、ほんとに何者? 何この結果……」
そう言いながら、博人が見上げる先には、成績上位者が掲示されている紙の1番上に、永井美華と書いてあるのだ。
「まあ、美華は割となんでも出来るから……まあ、弟として鼻が高いよ」
そんなことを話していると、昼休みもだいぶ過ぎていたのか、予鈴がなり始め、周りも教室へと戻り始めていたので、修哉達も自分の教室へと戻った。
午後の授業も終わり、今日はもう帰ろうかと言う時に、担任の山内先生から、
「そうだ、今日から4月いっぱいは仮入部期間だから、それぞれ部活に参加できるぞ、まあ、仮入部とは言っても、出すものは無いし、行っても行かなくてもいいから、仮入部って言うよりかは部活動体験みたいなもんだけどな」
そう言われ、部活動を楽しみにしていた体育会系のクラスメイト達は喜んでいた。修哉も、あれから何度か弓道部を見に行って、早くやってみたい、と思っていたので、正直なところワクワクしているのだが。
「よし、修哉! 俺サッカー部行ってくるから、また明日な!」
そう言って、喜んでいたクラスメイト筆頭の博人は他のサッカー部らしき友人と教室から出ていった。それを見て、修哉も弓道場へ向かっていこうとした。
すると、ちょうど教室の外を愛莉が通っていたので、一緒に行こうと声を掛けることにした。
「愛莉さん、今から部活行くとこ?」
「あ、修哉くん。そうだよ、弓道部に行くんだ。修哉くんも弓道部だよね?」
「うん、そうだよ。一緒に行かない?」
「うん、いいよ」
「良かったぁ。実は、まだ学校の中覚えきれてないから、1人で行けるかちょっと不安だったんだ」
「ああ、この学校、無駄に広いしね……」
そんな会話をしながら、2人で弓道場へと向かっていると、前方から
「あ! 愛莉ちゃん!」
と叫びながら、こちらに走ってくる女子がいた。
すると、愛莉も
「茜ちゃん!」
と、そちらに向かって走っていき、二人で抱きつきあった。
「ん〜! 今日初愛莉ちゃんだぁ〜」
と、愛莉を抱きしめて幸せそうな顔をしている女子と、愛莉の方へ行き、二人を眺めていると、愛莉が修哉の事を思い出し、女子に紹介した。
「あ! 茜ちゃん! この人も弓道部だって! 名前は永井修哉くん。修哉くん、この子は
「そうなんだ、よろしく、茜さん」
「よろしくね〜……ところで一緒に来てたけど、どういう関係? 恋人じゃないよね?」
と、茜が後半睨みながら聞くと、愛莉が説明した。
「もう、違うよ。美華ちゃんの双子の弟さんだよ、この間話したでしょ? それで、同じ部活で、偶然会ったから一緒に向かってるだけ。それに、私なんかが恋人なんて修哉くんに失礼でしょ!」
「ん〜? ああ、あのすごい美人のおっぱい大きい子!その人の弟?」
「お、おう。まあ、一応」
男にそう聞かれることはあっても、女子にそんな聞き方をされたことは無かったので、少しびっくりしながら答えた。
そして、少し気になったので、茜にその気になったことを聞いてみることにした。
「その、茜さんは、女子が好きなの?」
「もちろん! 女の子は可愛いし柔らかいしいい匂いするし小さいもん、それに対して男は可愛くないしデカいし硬いしゴツいし汗臭いしいやらしい事しか考えてないんだもん、男なんか好きになるわけないじゃん」
「……まあ、確かに。じゃあ、愛莉は茜の恋人なの?」
「え? そう見えちゃう? 実はそのと「違うよ」……愛莉ちゃぁん、そんな食い気味に否定しなくても……」
「だって、私は恋愛対象は男の子だもん」
「愛莉ちゃんにフラれた……これはもう死ぬしかない……」
「私それ、何回聞いたか覚えてないぐらい言われてるんだけど……」
苦笑しながら、愛莉はそう言った。
そんな話をしながら、気付いたら3人の視界に弓道場が入ってきた。
そこには、同じ学年らしき、新入生らしき生徒たちが、緊張と期待が混ざったような顔をしていた。
とりあえず、そこに集まり、皆と同じようにジャージに着替えたところで、道場の中から袴をはいた先輩が出てきて、
「仮入部の1年生だよね?もうだいぶ集まってそうだし、中に入ろうか」
そう言って、歩き出したので、ゾロゾロと着いていき、中に入った。
道場の中では、既に先輩たちが正座して待っており、そこに対面して正座するよう言われた。
そして、全員が正座したのを見届けると、先程の先輩が、
「1年生の皆さん……14人かな? まず、僕はここの部長で、3年の
と言い、そのまま様々なことを話していった。
最後に自己紹介の時間になって、先輩から順に自己紹介され、その後、1年生が順に自己紹介をしていき、全員の自己紹介が終わると、部長が今日はもう終わりの旨を伝え、1年生は解散だ、と言うことで、全員で校門まで帰ることになった。
帰り道で、弓道部で知り合った
「今日から部活すると思ったから着替えたけど無駄になったな〜」
「まあ、初日はこんなもんでしょ、仕方ないって」
「まあ、そうだけどさ〜……あ、永井、永井って俺らの学年にもう一人いるよな。名前で読んだ方がいい?」
「ん〜、どっちでもいいよ、美華と関わりあるなら名前で呼んでくれてもいいし」
「え? ちょっと待って知り合いなん?」
「知り合いっていうか、俺の姉ちゃんだよ、双子のだけど」
と話していると、そこにいた1年全員に、あんな美人な姉ちゃんとか羨ましい、とかどんな人なのか教えろ、とか一斉に話されて、てんやわんやになりながらも、色んな話をして帰っていった。
美華のことがいい話題になったようで、早くにあらかた打ち解けられて、いい雰囲気で、明日からの部活を楽しみに思いながら、皆と別れて自宅への帰路についた。
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