第2話 出会い

「おはよう」


「おお、修哉、おはよう」


 入学式の翌日、学校に行くと、博人は既に教室におり、周りのクラスメイトと談笑していた。


「博人、昨日はどうしたんだよ? 美華と話したいんじゃなかったのか?」


 昨日、美華と帰ろうとしていた時に、そそくさと帰ってしまったことが気になっていたので、博人にそのことを聞くと、


「いやあ……修哉の姉ちゃん改めて見ると可愛すぎてさあ、ぶっちゃけ、めちゃくちゃタイプだったから、恥ずかしくなったんだよ」


 顔を少し赤らめながら、そう言った。


「ああ、そういうこと……美華、確かに可愛いからなあ」


「ま、そんなことは置いといて!今日って、新入生テストだけだよな?」


 と、博人が聞いてきたので、今日の予定について思い出しながら、そうだ、と答えた。


「ああ~……初日からテストとか萎えるなあ」


「まあ、気持ちは分かるけどさ……午前で終わるんだし、いいじゃん」


 博人がとても嫌そうな顔をして言うので、苦笑しながらそう答え、しばらく他愛もないことを話していると、教室のドアが開き、担任の山内智樹やまうちともき先生が入ってきた。


「よーし、全員いるかあ? よし、いるな? 全員出席、と……じゃあ、今日のことについて、少し話してから、テストな~」


「っていっても、伝えることなんて特にないので、テストだ! ほら、筆記用具以外、しまえよー」


 そういう担任の言葉に、周りは、もう少し時間を、とか、やりたくない、と叫ぶ声を聞きながら、修哉は準備をして、テストが配られるのを待っていた。


 そして、テスト用紙が配られ、時間になって、先生の始め、の声を聞いて、テストを解き始めた。



「ああ~、疲れた! やっと終わった!」


 テストが終わり、用紙が回収されて、博人がそう叫んだ。

クラスの皆が同じ気持ちなのか、文句を言ってくることも無く、やっと解放された、という気持ちが大きいのか、誰もが明るい顔をして、帰る準備を始めていた。


 すると、山内先生が、


「朝に言い忘れてたけど、今日からそれぞれ部活開始してるから、気になる部活に見学しに行ってもいいぞ、ただ、部活してるやつの邪魔はするなよ?」


 と、言ってきた。すると、博人が、


「ちょ、先生、それを先に言ってくれれば、テスト頑張れたのに!」


 と、言い返していた。


「うるせえ!忘れてたんだから仕方ないだろ!それに藤堂、お前テスト中ほとんど寝てたじゃねえか!」


 先生にそう言われ、クラス皆が、その通りだと頷いたり、笑ったりしていたので、博人も笑われて満足したのか、そのまま座り、修哉に声をかけてきた。


「修哉はもう入る部活決めてる?決まってないなら、一緒に見に行こうぜ。」


 そう言うので、まだ決めていなかった修哉は頷き、二人でどこから見に行くか話しながら教室を出た。


 すると、後ろから、


「あ、博人!」


と、声をかけてくる女子がいた。


「ん?博人の知り合い?」


 そう博人に尋ねると、博人は少し気まずそうに、


「ああ、俺の幼稚園来の幼馴染なんだよ……」と答えた。


「ちょっと、何でそんな嫌そうに言うのよ! あ、博人の幼馴染で、宮内真奈みやうちまなです。よろしくね!」


 と、自己紹介されたので、


「永井修哉です、こちらこそよろしく」


「ん?美華ちゃんと同じ苗字なんだ」


「ああ、たぶんその美華は俺の姉だよ、双子なんだ」


 と話していると、驚いていた。しかし、そこで、博人が、


「おおい、のけ者にしないで、俺も会話に混ぜてくれよ~」


 と言ってきたので、修哉と真奈は笑いながら、


「じゃあ、部活見に行きながらしゃべろうぜ」


「そうね、私もついてっていい?」


「ああ、もちろん、博人もいいよな?」


 と聞くと、


「いいけど……またのけ者にされてる気がする……」


 というので、修哉と真奈はおかしく思えてしまい、笑いながら、下駄箱へと向かって行った。



「さて、どこから見に行くよ?」


「まあ、近いし、サッカー部と野球部からでいいんじゃない?そういえば、二人は中学では何部だったの?」


 修哉がそう聞くと、


「サッカー部」

「テニス部」


 と、二人から返事があった。


「へえ、博人もサッカー部だったんだ」


「てことは、修哉もサッカー部だったのか?」


「そうそう、まあ、ずっと控えだったけど」


と、苦笑しながら話していると、ちょうど、サッカー部の練習しているグラウンドが見えてきたので、少し足を止めてみていると、真奈が、


「二人とも、やっぱりサッカー部なの?」


と聞いてきたので、


「いや、俺はもうサッカーはいいかな、別に運動が好きって訳でもないし」


 と答えると、博人が、


「え? そうなの? 俺は入ろうかと思ったから、一緒に出来ると思ってたのに」


と話してきた。


「いやあ、頑張っても全然上達しないし、なんか、もう満足しちゃったんだよな」


「んー、じゃあ仕方ないかあ」


 そう話して、サッカー部のグラウンドを離れ、いろいろな部活動を見て回っていた。


「あれ、修哉だ」


 ちょうど、校舎から一番遠い、弓道部を見に行こうとしていた時に、友達と一緒にいる美華と遭遇した。


「美華も部活見学?」


「そうそう、愛莉ちゃんが弓道部入りたいからって、弓道部見に行こうかなって」


「へえ、俺らも今から弓道部見に行くんだ、一緒に行こうぜ」


「いいよ、愛莉ちゃんもいい?」


「うん、いいよ。あ、柴咲愛莉しばさきあいりです、よろしくね」


 そう自己紹介され、自己紹介を返していた。


「俺は、永井修哉です。そこの美華は双子の姉なんだ」


「あ、そうなんだ、どうりで仲がいいんだね」


「んー、まあ、仲はいいのかな?」


「お二人さーん」


 と、修哉が愛莉と話していると、美華が声をかけてきた。

なので、そちらを向くと、


「話してるのもいいけど、そろそろ、弓道部見に行かない?」


「あ、そうだな、忘れてた。」


 ということで、五人は弓道場へと向かった。

 弓道場でも、部員たちが仲良さそうに部活をしていた。


「おお、仲良さそうだね、皆でわいわいやってるって感じ」


「そうだね、あんまり厳しそうじゃないし、楽しくやれそうだな」


「修哉にはあってるんじゃない? 競争的なの、好きじゃないでしょ?」


そう美華に言われ、確かにその通りだなと考え、弓道部も候補に入れて、別の部活動も見に行き、その日は解散した。


 

「修哉、部活どこにするか決めた?」


「んー、弓道部かなあ、部活の雰囲気よかったし、弓道ってちょっとかっこよさそうだし」


「そうだね、弓道かっこよさそうだよね~」


「美華は?やっぱ陸上やるの?」


「いや、調理部にした! もう運動はいいや」


「へえ、そうなんだ、美華、料理出来たっけ?」


「出来ない! だから、練習しようと思って!」


「ああ、なるほど、頑張って」


「ありがと! そういえば、修哉、愛莉ちゃんと話弾んでたね。同じ部活だろうし、仲良くなれそうな子いてよかったね」


 そんな話をしながら、帰り道を二人で帰っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る