書き出しの第1文で圧倒される作品は、読者にこの先を期待させやすい
『鈍色の垂れ込める空がどこまでも広がり、いつ止むともしれない長雨が今日もしとしとと降り続いていた。青くむせ返るような山々も、まだ背の低い稲が並ぶ水田も、苔むした茅葺きの民家も、じっとりと湿った重い空気に包まれ、どこか陰鬱な雰囲気が漂っている。』
今回紹介する作品の書き出しの一文です。
どうでしょうか。これ一目で多くの方が情景をは把握することができると思いますが、それ以上にたった1文に、この作者様の地の文に関する技量が窺えます。
この書き出しを行っている作品は、自主企画「短編だけど渾身の出来のヤツがある。そんな作品を宣伝しませんか?(週刊カクヨム企画)」(https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054915897414)に参加してくださった、梅雨寺昏様の作品です。
タイトル 【鬼と露】
あらすじ
長雨の止まぬ梅雨時の農村に一人の軍人の姿があった。
人を探しているというその軍人の目的とはなにか。
笑顔を絶やさぬ糸目顔の軍人、叢雲少佐の物語。
とある歴史的事件に纏わる戦前の日本を舞台にした短編です。
今回はジャンル、歴史・時代・伝奇からの作品なので、言い回しも、古き良き純文学に寄せていくべきであるからして、このような表現は当然のことだろうと思う人もいるかもしれませんが、私はこの一文を見て感動を覚えました。
情景を想起させる多彩は表現をもちろん素敵だと思いますが、個人的には『しとしと』という擬音語を自然に使っている点が素晴らしいと思います。
小学校、もしくは中学校の国語の時間に擬音語については習ったと思いますし、ここにご覧に来ている方は擬音語とは何か、ということくらいはある程度ご存知のはずだと思います。
しかし皆さんに問いたい。擬音語を実際使ってますか?
私は使っていませんでした。いや、もしかすると使っていた作品もあったかもしれませんが、意識をしないとなかなか使わないですね。
後は、下手に使うと、とても文章が子供っぽく見えてしまい作風に合わないことも多々あります。頭を悩ませる一因です。
しかし、今回のこの書き出しにあるそれは、本当に違和感なく、周りのしっかりした文章の中に入っているのです。すごいですね。
それも相まって、私からみるとこの一文は、作者様の執筆力量が一目でわかり、後の話にも大いに期待が膨らみました。
教訓
「書き出しには渾身の一文を。その作品を書く人がどのような語りで魅せてくれるのかを察する一文は、読者にその後を期待させる」
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