第5話 チートスキルのない勇者(自称)
今、まさしく目の前で男が3人がかりで女の子を抑え込むというエロ同人展開が
他人のを見せられても興奮しないというか、ドン引きというか、そんな感じ?
だが、そんなことを考えている間にも女の子の服は今にも
ここでカッコよく登場してチートスキルでワンパンでイキりたいのは山々だが、
ゴソゴソとリュックの中身を確認する。
…………頭の中で段取りは決まった。あとは“なるようになれ”だ。
「※※※※※!」←盗賊がなんかゲスいこと言ってる。
「※※※※※!!」女がやめて的なことを言ってる。
盗賊の手が女の服を剥ぎ取ろうとしたその時だった。
「「「ファンファンファンファンファンファンファンファン!!!」」」
突如警報音が大音量で鳴り響いた。音の正体はその辺に投げた、ただの携帯ブザーだ。
だが、突然けたたましい音が大音量で鳴り響き、音の正体も不明な盗賊も女もパニック状態だ。これで一旦注意は引けるだろう。
女に一番にありつこうとしている大男、おそらくこいつがボスだろう。思った通り手下に周囲を確認に行かせたようだ。続きをやってる場合でもない、でも折角の女を逃がしたくはない。となると、だいたい行動は読めてくる。狙い通り3人をバラけさせることに成功した。
俺は大回りをして女と大男がいるところへ走った。槍を担ぎながら走るのは慣れなかったが、今の強化された視力と聴覚なら相手の位置を一方的に知りつつ気付かれずに移動するのは簡単だった。
大きく迂回し、完全に大男の背後に回り込んだ。
状況は……女を逃げないように片手で押さえつけつつ、右手に刃物。パンツは履いていて欲しかった。
ヤル気満々のところで横槍が入ったので大層お怒りだろう。辺りに敵がいないか警戒しているようだ。
見た目は170センチくらいの中年か? そんなに戦い慣れしてるとも思えない
……だが油断は禁物だ。病院があるのかわからない、薬もない今、少し怪我しただけでも致命傷になる。
確実に、一発で。
ジリジリと距離を詰める。距離は10メートルといったところか。
遠くで鳴っていた警報音が止まった。おそらく手下が発見して壊したのだろう。
今だ!
完全にこっちに背を向けたタイミングを見計らい一直線に大男に向かって走った。
さすがに足音に気付いてこっちに振り向く。が、もう遅い。
ゴッ! という鈍い骨の音とともに大男は吹っ飛んだ。助走をつけ
「???!!?!?!」
女は何が起こったのか理解できず唖然としていた。突然、槍を持った見た事ない服を着た男が飛び蹴りして大男を吹っ飛ばしたのだ。
騒いだり暴れられたりするほうが面倒だ。そのままじっとしてろよ。
祈るような視線で現実の理解が追い付いていない女を横目に次の作業に取り掛かる。
あとふたり……!
手下ふたりのうちひとりが警報ブザーを壊したなら、ここからかなり距離が離れたところにいるはずだ。もうひとりのほうを狙う。
ふーっと軽く息を吐き、耳と鼻に全神経を集中させる。
足音は聞こえてこないか? 女を追いかけていたなら汗をかいたはずだ。大男の身なりから風呂にも入ってないだろう、異臭はないか?
わずかな異変も逃さないよう、小さな音を拾いあげるように、僅かな臭いも逃さず吸い込むように……。
「ぐおっ?!」
大男の体臭だ。作戦ミスだ。
「※※※!!」
「いた。なんか言ってる」
ボスの名前でも呼んでいるんだろうか? 豪快に大男を吹っ飛ばしたのだ。かなり大きな音がしたはずだ。おそらく安否を確認しに戻ってきたのだろう。
自分から居場所を教えてくれるとは好都合だ。
こっちに向かって走ってくる足音、大男を吹っ飛ばした方向を目指してるなら、ある程度進行方向は予測できる。木の陰に隠れ、声の発生源を確認する。
「見つけた。」
160センチもなさそうな随分小柄の痩せ型の髭男、大男に全部美味しいところを持っていかれて、まともに栄養摂れてないんじゃないのか?
「※※※! ※※※!!」
手下の髭男が大男を見つけ、慌てて走り寄る。
そこへ突然、進行方向の木の陰から槍が現れ、バットのようにフルスイングされた。髭男自ら走ってきた勢いも相まって眉間にクリーンヒットした髭男は宙に浮き、メキッっという鈍い音を立て、そのまま背中から大きな音を立てて激しく落ちた。
髭男は力を入れ起き上がろうとするも力尽きて気絶した。
あとひとり……!
これで挟み撃ちされる心配はないだろう。まだ警報ブザーを投げたあたりにいるのであれば、場所の見当はつく。
逃がして仲間を呼んで来られたりしたら面倒だ。ここで仕留める。
あまり移動していなければ、まだ近くにいるはず……いた!
もうひとりの手下、スキンヘッドの男を目視で捉えた。キョロキョロと辺りを見回しながら不安そうな顔をしている。
一番小柄で痩せ気味、持っている刃物もフルーツナイフくらい小さく、身なりも一番みすぼらしい。やはり偵察に行かされたとあって一番下っ端、戦闘もあまり得意ではないだろうとみた。
いやいや、油断は禁物。少なくとも刃物は俺よりも扱い慣れているだろう。確実に仕留める距離まで近づく。
スキンヘッドの男は大声を出し仲間を呼んでいるのだろうか。しかし応答がなく、かなり焦っているようだ。
迂回し死角から確実に距離を詰める。木々の死角を利用しながら近づいたその距離約7メートル。だいたいバスケットコートのスリーポイントからゴールまでの距離だ。
さっき適当に拾った小石を全力で投げる。
何度もシュート練習をした距離を見間違うはずもなく、強化された視力も相まって放たれた小石は一直線にスキンヘッドの後頭部に直撃し、鈍い音を響かせながらその場にバタッと倒れた。
「ふうっ!」
軽く息を吐き、ようやく緊張を解いた。まさか死んでないとは思うが、念のためスキンヘッドの呼吸を確認する。
……良かった。気絶しているだけだ。デカいたんこぶは出来たがじきに目覚めるだろう。だが刃物は没収しておいた。
「あとは……あの女か……」
こちらの方が面倒臭そうだ。今から嫌な予感がしていた。
変に関わってしまった以上、放置して消えるというのは人として何と言うか……ひとりでブツブツ言いながら、戻る途中で髭男からも凶器を没収した。
先ほどと打って変わって足取りは重い。言葉の通じない女の相手なんてゲームでもやったことなかった。
都合よく日本語を理解してくれるアイテムや、突然翻訳してくれるスキルが降って湧いてこないかなと期待はしたが……そんなことはなかった。
さっきの大男のところに戻ってきた。まずは凶器の没収。
「お? こいつポケットに何か入れてるな。
ジャラジャラとするものを手に取る。やっぱり見た事ない硬貨だ。
「海外にこんな硬貨あるのか……?」
ここが日本ではないことが確定したが、とりあえずこれも貰っておくことにした。
「これじゃどっちが強盗かわかんねーな」
ふん、と鼻で笑いながら、ある視線に気付く。
女に盗んだところをばっちり見られていた。
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