第2話 ステータスってどうやって開くの?
「おい女神! これ大丈夫なんだろうな?! ちゃんと帰れるんだろうな?! おい!!」
と叫び終わった頃には見知らぬところに飛ばされていた。本日二度目である。
白い光を放っていた足元の魔法陣のようなものはすうっと消えてしまった。
「あんのクソ女神! ふざけんなよ! どこかで聞いてるんだろ? おい!」
罵詈雑言を吐いたが
ご丁寧に日本に帰してくれたのだろうか? いや、飛ばされる寸前のあの泣きっ面と悪魔のような笑み、あれはただ嫌がらせをしたいだけのガキの顔だ。素直に帰したとは考えにくかった。
辺りを見回すが、何もないだだっ広い草原が一面に広がっている。少なくとも自宅の近所ではなさそうだ。では外国か? 何にせよ情報が少なすぎる。
……少し考えて、ふと試してみたいことがあった。
「ステータス」
しかし、何も起こらなかった。
「ステータス!!」
大きな声を出しても何も起こらなかった。
「ウインドウ!」
「ウインドウオープン!!」
「プロパティ!!!」
「メニュー画面!!!!」
「マイページ!!!!」
しかし、何も起こらなかった。
俺は猛烈に恥ずかしくなった。誰かに見られていなくて本当に良かったと心から思った。
次に
テンプレのノルマを一通りこなしたところで、おふざけはこれくらいにして一旦整理しよう。
①ここが日本だった場合。特に問題はない。歩いて人を見つければ、何とか家に帰れる。
②ここが外国だった場合。面倒だが歩いて人を探し、日本大使館の場所を聞く。時間と金は掛かるが何とか戻れるだろう。
③ここが女神の言う異世界だった場合。これは最悪だ。現在地、言語、通貨、不明なことが多すぎる。
魔王を倒せとか言っていた……つまり敵がいる。身の危険は? 倒すことが戻る条件なのか? 何を以って世界を救ったと言えるのか?
わからん……。
あのクソ女神、説明がざっくりとし過ぎだろ。と、考えていたらポケットにスマホを入れっぱなしなことに気が付いた。スマホを取り出し起動ボタンを押してみる。
「おっ!」
スマホの電源は入るようだ。一瞬テンションが上がったが、右上の“圏外”の文字にまた落胆の底へ叩き落される。圏外ということは電話やネットが使えないだけでなく、ここが日本じゃない可能性が高くなってきたからだ。
ならGPSはどうだ?
少しの可能性に賭けてみた。読み込みがあった後に現在地が表示される。
「!!」
いけたのか? ……しかし、現在地は表示されるが周りの地形も場所も何も表示されず、ただの空白画面に自分の位置が表示されているだけだった。
これで②の可能性も低くなってしまった。
スマホの時計は14時30分を指している。空を見上げると日は高い。このスマホの時計を基準にできそうだ。気温も日本とさほど変わらないようだ。昼に飛ばされたのはまだ助かった。これが夜や真冬、雨だったなら即詰んでたところだ。
③だった場合、至急必要なのは安全の確保、体温の確保、食料の確保、寝床の確保が必要になるな……ん、待てよ。スマホが一緒に飛ばされということはもしかしたら……
「あった!」
辺りを見回して発見したのは玄関から出る時に持ってきた災害時用の緊急用リュックだ。災害に異世界召喚は恐らく含まれてないと思うが、まさかこんなところで役に立つとは……備えておいて本当に良かった。
「ん?」
あと、ロハンとか言う奴に返しそびれた槍も一緒に落ちていた。せっかくなので貰っておくことにした。
「さてと……これだけか。」
リュックの中身を確認したところ
・水500ミリリットル×2本
・非常食×5個
・携帯ろ過装置
・手回し充電ラジオライト
・ホイッスル
・携帯ブザー
・着火マン
・マスク
・簡易トイレ
・からだ拭きシート
・サバイバルナイフ
・タオル
・絆創膏
・風邪薬
・包帯
・財布(中身3,852円)
短期的な避難を想定していたので、あまりにも心もとない。水と食料は特にヤバい。早くなんとかしなくては……。
辺りを再度ぐるっと見渡す。
右には草原、左には遠くに木々がうっすら見えていた。行くなら森だ。野草や木の実、動物でもいれば、最悪虫でも見つかれば何とか持ちこたえられそうだ。
はあ……。と1つ溜息を吐き、似合わない槍を肩に
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