ナイストゥーミートゥー・トゥ
「……痛っ」
まだガンガンと内側から痛む頭を抑えながら、一葉は目を覚ました。天井にぶら下げられたガラクタの賑やかさで、ここが鵜鯉の家の中だということを理解する。
「お目覚めかい。この街のヒーローさんよ」
頭に乗せられた濡れタオルを交換しているのは、先程悪漢に襲われていたはずの鵜鯉白春その人だった。一葉の頭は状況を噛み砕くのが追いついていなかった。
動揺する彼の様子を見かねて、鵜鯉は言葉を続ける。
「あれは悪い人たちじゃないよ。少なくとも、私にとってはね」
「……ただの客人だったのか。それは、悪いことをしたな」
ただの客人、とは違うかもねえ。鵜鯉はそういうと、独特な引き笑いをした。
「あの人たちもヒーローなのさ。あんたと掲げるものが違うだけでね。――それでヒトヒラさん。あんたがここを尋ねたってことは、あの廃人狩りの噂でも聞きつけたのかい?」
「ああ、話が早いな。できたらそいつの特徴でもなんでも、知ってることがあったら全部教えて欲しいんだけど」
一葉の言葉に、鵜鯉は更に口角を上げる。
「……何かおかしいかい?」
「いやあね。あの人たちとヒトヒラさん、どっちが先に捕まえちゃうのか楽しみで」
一葉は首を傾げる。何故一般人が廃人狩りなんていう物騒な事件に首を突っ込むのか。そして地下街の長、鵜鯉白春にここまで興味を持たせる彼らは、一体何者なのか。
近い将来、両名がまた顔を合わせることになるとは、この時点ではまだ誰も考えてすらいなかった。
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