捌 『運命の悪戯』
パトリシアの【
「来客用のコテージです。本日はこちらでお寛ぎください」
最初に連れていかれたテントにいた女のエルフ。彼女はテントで彼らの帰りを待っていた。パトリシアの事も知っていたらしく、突如として消えてしまった女王のランテルを探そうとしたエルフ達を待機するように促した。
そうして混乱もなく、戻ってきた彼らを労う為にコテージに案内されたのだ。
「立派ですね」
「失礼を働いた身な上、姫様をお救い頂きましたので。これはお詫びという形でもあります。長らく来客が無かったので、先程清掃が終わったばかりです。どこか不便がおありの際は遠慮なくお申しつけください」
連れてこられたコテージ。色の明るい
「わーーん」
「わーーふ」
「二人とも、気をつける」
「「はーい」」
階段を転んでしまわないようにフェンリルがあとを追いかける。面倒を見ていると言えば聞こえはいいが、フェンリルは尻尾をぶんぶんと振るっていたので自分も早く中に入りたかったのだろう。
『やはり、犬は犬ですね』
「こんなものがこんな村にもあったんじゃなー」
「ご主人様!行きましょう?」
「あーはいはい」
「?」
懐かしいな、コテージか。最後に来たのはもう何年前だ。
エリンから見た航は優しい目をしていた。反応が少し悪かったのでまた何かあったんではないかと思ったが、その表情を見て少し安心した。
「それでは、私はこれで」
「おう、ありがとさん」
「いえ……」
そう言うと女は一礼をしてから踵を返して戻って行った。
「つかチビ、なんでお前までいんの?」
「だからチビと呼ぶな!パトリシアと呼べと言っているというに」
「あーはいはい、分かった分かったパトちゃん」
「パトちゃん言うな」
「ワガママなやつだなぁ、何が気に入らないんだ。可愛いだろパトちゃん。なぁエリン?」
「あ、あはは……可愛いと、うん、思います!」
「お前達ぃ……まぁ、チビよりは良いか。もうそれでいい」
諦めたような受け入れたような、パトリシアは肩を落としていた。
「そんで?なんでまだいるの?」
「わらわはお前を見定めに来たのじゃ救世主よ。それが終わるまで、わらわはお前に着いていくのじゃ。肩入れする気はないがのぅ。ただ見ているだけじゃ、居らんものと思って良いぞ」
「自分勝手な奴だな」
「……あ、あははは…」
エリンは口に出来ない。自分の主人が最も傍若無人だと。口が裂けても。
「コービットが言っておったぞ?大層器の大きい男だと」
「アイツは毎度持ち上げ過ぎなだけだ」
「ふむ、他人の評価を気にしない。というやつか。その歳でよくもその域と達したものじゃ」
「偉っそうにこのロリ」
「ロリではない、お前の十倍は生きておるというに」
「あーそうだったな。そういう設定だったな。悪い悪い気を使えなくて」
航はパトリシアを軽くあしらってコテージの中へ入った。中はと外見よりも広く感じられ、ひんやりした空気が航達を包んでいる。
『ほう、これは』
あ?何か気になんのか?
ババアが何かを感じ取る。少し喜んでいるような声色だったので航もつい反応してしまった。
『このコテージの中はかなり高濃度の魔力で満ちています。この建物の造りや、使われている木材そのものが魔力を逃がさない適性が高い。もしかしたら、これならば……』
あん?お前何を───
航は嫌な予感がした。このババア、この場で何かをしでかす気ではないかと。そして、その予想は見事に的中していた。
「ンァァ?!!!」
「?! ご主人様?!」
「え、どうしたのよ航!」
突如として航の全身に悪寒が走り、足先から頭まで、何かが抜けて行った感覚がした。航は思わず喘ぎ声のようなものが出てしまった。
「あいつまたやりやがったな!!!出たり入ったりすんのやめろっつったろうがよォ!!!」
直接会うことがあれば絶対シバキ回してやるからなぁあのババア!!!
航が不快感に耐えているうちに、目の前に黒い光の粒が無秩序に現れる。黒いというのにそれは淡い光を放っていた。
「な、なんですか、これ!」
「下がってエリンちゃん!」
「シロとクロも、下がる」
「お前達は忙しないのぅ」
「ぐっ……」
航もその粒は見えていたが思うように力が入らない。立っているのもやっとで、エリンに片腕を支えてもらっていた。
剣を構えたエレノアの前で、その光は少しずつ輝きを増して形を作る。
やがてそれは人の形をなし、黒いフードを被った女に変化した。
「おいマジかよお前……」
「だ、誰なんですか!」
「む、待て。こやつ、まさか……いやだが…そんな筈は……」
女はフードを外し、口を開く。
「おっ、前…うっそ、だろ……」
「航、ようやく、また会えましたね」
その女は皇航の姉、【皇
「ねぇ……さん…? 」
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