幼馴染みがモテすぎてやばい

「はあ………」

 我が幼馴染みの文月が、今日何回めかのため息を吐いた。

「……何かあったか?」

「…私が意外と綺麗だということが分かった

 瞬間に手のひら返ししてきて、毎日告白

 の嵐」

「ひぃー大変だな」

意外と反響はでかいらしい。

 それもそうか。いつもは冴えないクラスの女子生徒がめちゃくちゃ可愛いって分かったら萌えるもんな。分かる分かる。

 だが当の本人は、いきなりの周りの変化にびっくりしていつもよりお疲れモードだ。

「まぁ男子の反応も分からなくもない」

「…それは分かるけど、あんなにいきなり変わ

 ったらびっくりするよ」

「色々あるんだな」

「まあね。…って言っても私もつい最近知った

 事なんだけどね」

「今日も告白されたのか?」

「今日は三人。最初に比べると減ったほうだと

 思う」

「良さそうな人はいたか?」

「…本人は全然気づかないね」

「?何か言ったか?」

「何でもない。いなかったし、断るのも大変」

 そう言えば本に、告白するのも勇気がいるが

告白される側も大変だとか何とか書いてたな。

 文月が、『どうにかしてはっきり告白を断る方法はないかな…』とか一人言を言っている。

「あ!良い方法見つけた!」

「お!何だ?手伝える範囲なら手伝うぞ」

「本当?!言質取ったからね!」

「おう!」

 文月の日常の変化にも驚いたが、この後の提案にも驚いた。

…俺の平穏が!




____________________________________________




「じゃあ後でよろしく!」

「…分かったよ」

 俺が何故こんなに気分が下がっているかというと、昨日の文月の提案にのせいである。

 昨日文月が提案した方法は、

『私の彼氏役になって!』

というものだった。

 文月いわく、今はフリー(彼氏がいない)だから告白する人がいるとのこと。

 ならばいっそ彼氏がいることにして彼氏がいるという噂を流せば、告白する人も減るのではないかと考えたらしい。

 だがこの案にはいくつかデメリットがあるらしかった。

 一つ目は俺に彼女がいると流れる以上、好きな人とは付き合えなくなるということ。

 だが俺の好きな人は文月なので何も心配することはなかった。

そして二つ目はさっきも言ったように、平穏な生活がなくなるということだ。

 俺の学生生活を送るまず第一の目標が、平穏だったのでかなり迷ったが、俺の好きな人が困っているとなれば助ける他ない。

 …まぁ、他にも細かい問題はあるが俺にはどうやら関係なかったらしい。

 文月がどうか分からないが、せっかく偽者だとしても彼氏になれたのでこのチャンスを逃さないようにしたい。

 何故チャンスをものにすると言いきらないのかは察してくれ。

 …こっちもヘタレなりに頑張ろうとしているんだ!

 と、とくに考えることもなく時間は過ぎ去りあっという間に放課後になった。

「京くん、行くよ」

文月が小声で話しかけてくる。

「…ああ」

そして、文月に返事をし俺も席を立つことにする。

 どうか敵が増えませんように!と、俺は無意味な願いを考え、今日の役目を果たすことにした。

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